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群馬県の前橋駅から前橋市役所の方へ向かう五間道路を車で走っていると、ゾウの看板が現れる。サウンドパレット株式会社が展開する「アヅマ補聴器センター」のマスコットキャラクター「みみ花ちゃん」だ。「道路を使う人の印象に残っているらしく、補聴器が必要になった方が、ゾウの看板のお店があったと思い出して来店していただけます」と、代表取締役の池上孔規氏は看板の効果を説明する。(TOP写真:道沿いの店舗に掲げられた「みみ花ちゃん」の看板が印象を残すアヅマ補聴器センター)
認定補聴器専門店として群馬県下で4店舗を展開し、群馬県全域をカバー
同社は1956年から、群馬県で補聴器を専門に取り扱う店舗を運営してきた。「戦争から戻ってきた祖父が、1954年に家電の販売を始めたのが成り立ちです。市町村の役所関係から仕事をいただくことが比較的多く、その中で補聴器を取り扱ってもらえないかといった声がかかったそうです」(池上社長)。
要請に応えて補聴器や関連機器の取り扱いを始めるようになり、1960年には補装具交付業務について群馬県と委託契約を締結。1965年にアヅマ電機へと改組してから1984年に高崎支店、1992年に太田支店を開設して販路を広げ、2004年には今のサウンドパレットという社名へと変更した。2016年には伊勢崎支店もオープン。現在は前橋本店を含む4店舗体制で群馬県全域をカバーしている。全国で977店(2023年5月発表)しかない認定補聴器専門店となっており、医療機関とも提携して、補聴器が必要な人に医師と相談しながら補聴器を提供している。
視力を矯正する眼鏡を扱う眼鏡店とは違って、「アヅマ補聴器センター」のように補聴器を専門に扱う店はどこにでもあるというわけではない。それは、補聴器が管理医療機器として貸与・販売に届出が必要で、専門的な知識・経験が求められるからだ。「耳が聴こえづらいと言っても、その原因にはさまざまなものがあります」(池上社長)。中耳炎などの病気が原因なら治療が求められますが、加齢性難聴など治療が困難なケースも存在します。聴こえづらくなったからといって、根本的な原因を把握しないまま補聴器を販売しても、その後に症状が悪化してしまっては意味がない。
ホームページには、補聴器ライフへの不安を取り除く情報を掲載
だから同社では、「飛び込みのお客様には、まず医師の診断を受けてもらってから補聴器を選んでもらうようにしています」。(池上社長)。そして当社でも必要に応じて聴力を測定し、カウンセリングをしながら最適な器種を一緒に探し、装着の練習をしてもらった上でベストな補聴器を引き渡すことを徹底している。アフターフォローも含めると、2~3回は来店することが望ましい。だから、「お客様には当店のことを深く知って信頼していただく必要があるのです」(池上社長)と積極的な情報発信の必要性を訴える。
「みみ花ちゃん」の看板は、そうした補聴器ライフへの入り口を、親しみやすいキャラクターによって示し、敷居を低くする役割も果たしている。ネット時代に多くの人が真っ先に検索するホームページも、わかりやすさと親しみやすさを前面に打ち出した内容にして、補聴器を必要としている人たちが安心して店舗へと足を運べるようにしている。
「耳が聴こえづらいからといって、すぐに補聴器を装着しようという雰囲気に、日本はまだなっていません。日本補聴器工業会の調べでは、難聴の方が補聴器を使っている割合は欧米では30%~50%程度となっていますが、日本では約15%に留まっています」(池上社長)。加齢性難聴は自覚しにくいことや、補聴器のネガティブなイメージから装用するのをためらっているのだという。
聴こえづらくなる理由や利用できる補助金制度などもホームページで紹介
そうした人が、補聴器は必要なものなのだと思えるような情報を提供したり、どうすれば良い補聴器に巡り会えるのかを知ってもらったりするために、ホームページからの情報発信が重要だと考えた。「以前から情報発信はしていましたが、リニューアルするにあたって、補聴器が”聴こえる喜び”をもたらしてくれるものだということを説明しました。そして、補聴器が手元に届くまでの流れや、利用できる補助金制度があることを紹介して、関心を持ってもらえるようにしました」(池上社長)
キャンペーン情報など伝えたい情報を随時簡単に掲載できるようにもした(素人でも簡単に作成更新が出来るホームページ作成ソフトを採用)。また、個別の情報も充実させた。例えば、「聴こえのしくみ」のページでは、自分の聴力がどのような状況にあるかがわかる情報を発信。「購入前に」のページでは、初回の来店時のお願いや、購入までのステップを紹介して、これから補聴器を購入する人の不安を軽減させた。「こちらが伝えたいことではなく、お客様が知りたいことを発信するように整理したと言えます」(池上社長)。補助制度などは、決して安くはない補聴器を購入しようとする人にとって非常に重要な情報だ。
親しみを持ってもらうためにスタッフを似顔絵で掲載
個々の店舗で来店客を担当する従業員についても、写真ではなく似顔絵を添えてプロフィールを紹介し、親しみを持ってもらえるようにした。「このような人がいるんだといった関心を、お客様に持っていだければ嬉しいといった気持ちから作りました」(池上社長)。作成にはフリーの似顔絵作成ソフトを使い、パーツが足りない時はソフトの操作が得意な社員が作って調整している。池上社長や池上香英子会長の似顔絵も掲載していて、全社をあげてイメージの向上に努めている。
こうしたホームページの整備と充実がもたらした効果については、「ネットを検索していろいろと出てきたサイトの中で、他社と比較してしっかりしている感じがあったため来店につながったケースもありました。」見るからに旧態依然としたホームページでは、最先端の技術に追いついていないのではないのかと思われてしまいます」(池上社長)。ハイタッチなホームページにしたことで、耳の穴の形をレーザーによってスキャンするオトスキャンのシステムを導入するなど、最先端の機器を活用している「アヅマ補聴器センター」への信頼性も、より強いものとなる。
最先端機器を取り入れスタッフの技能向上にも日々取り組む
もちろん、実際にこうした機器を取り扱ったり、顧客の相談に答えたりする担当者の資質自体も、高いものにしておく必要がある。似顔絵で掲載されたスタッフのほとんどが、補聴器のフィッティングに関して4〜5年の実務経験と講習の受講が必要な「認定補聴器技能者」の資格を持っている。池上社長自身も認定補聴器技能者のほかに、言語聴覚士という国家資格も取得。これは「ことば」や「聴こえ」や「飲み込み」についての困難を抱えている人に、検査やリハビリ、アドバイスを行う専門的な知識を持っている人に与えられる資格で、顧客へのより良いサービスの提供につながっている。
コロナ前からWeb会議を実施、月1回ペースで補聴器関連の勉強会を行う
知識や技能に関する研鑽(けんさん)では、Web会議の仕組みを使っている。月1回のペースで、補聴器に関する最新の技術や情報を学んでもらう勉強会を開いている。「支店の場合、本店の前橋市まで来てもらうとなるとそれだけで移動時間がかかってしまいます」(池上社長)。Web会議ならそれぞれの拠点で受講できる。コロナ以前から導入を進めていたが、コロナで人の往来が制限される中で、どこにいても情報を伝えることができた。
従来からVPN(仮想専用線)を導入して拠点間で情報を共有できるようにしており、効率的な情報やりとりの実現に効果を見せた。「今回の更新では、ビジネスフォンを使って、どの店舗からも電話機を指定して内線電話をかけられるようにしたため、取次の手間が省けて効率化につながりました。」(池上社長)。日進月歩で技術革新が進む時代。最先端の情報を誰もが見られるようにしておく必要があった。
情報の共有化でどこの店舗でもサービスを受けられる体制を作る
こうした情報の共有化は、顧客情報を一元的に管理する体制作りも可能にした。以前は、紙に記載してもらった顧客情報をファイルとして保管していた。しかし、2008年ごろに、この紙の顧客情報をスキャンして電子化したことで、どの店舗からでもその顧客が過去にどのようなサービスを受けたかを確認して、最適なサービスを提供できる。
補聴器は一度装着すると定期的にメンテナンスが必要で、音の調整や修理、買い替えなど長いお付き合いになる。だからこそ、顧客が安心して利用し続けられるような体制や雰囲気を保ち続ける必要がある。ホームページに掲載する情報の充実も、どこの店舗でも同じようなサービスを受けられるようにする体制作りも、一生を預けることになるかもしれない店への安心感を持ってもらうために、大いに役立ちそうだ。
高齢化社会で補聴器を求める人の数は今後増えると見られている。スマートフォンの普及に伴いイヤフォンやヘッドフォンを装着する人が増えたことで、難聴者の増加を心配する向きもある。そうなる前の予防が大切なことは言うまでもないが、実際に聴こえにくくなってしまった時、誰もがためらわずに補聴器を使って、聴こえる幸せを末永く享受できるようにするために、これからも積極的な情報発信を行い顧客に寄り添ったサービスを提供していく。
企業概要
会社名 | サウンドパレット株式会社 |
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所在地 | 群馬県前橋市紅雲町2丁目3-7 |
HP | https://azuma-hac.com/ |
電話 | 027-221-3033 |
創業 | 1954年 |
従業員数 | 28人 |
事業内容 | 補聴器および聴能関連機器の販売 |