當舎 緑
當舎 緑(とうしゃ・みどり)
社会保険労務士・行政書士・CFP®。阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。

超高齢化とともに、社会保険料が高くなっていることを実感している人は多いだろう。日本では、社会保険は現役の人が高齢者を支える構造になっているので、高齢者が増えると当然社会保険料も増加する。しかしどんなに保険料が高くても、社会保険に加入しないという選択肢はない。必ず何らかの社会保険に加入して、保険料を払うことになる。

扶養家族など一部例外もあるが、加入している社会保険の種類は違えど、社会保険料を納めることは国民全員の義務なのだ。今回はそんな社会保険料の費用計算方法を見ていこう。

目次

  1. 「社会保険料」とは?
  2. 社会保険の対象者は?加入条件をチェック
    1. 正規労働者(正社員)の加入条件
    2. 非正規労働者(派遣社員やアルバイトなど)の加入条件
  3. 給与計算における社会保険料の計算方法
  4. 標準報酬月額とは?
  5. 健康保険料の計算方法
  6. 介護保険料の計算方法
  7. ほかの社会保険料はどうやって計算する?
    1. 雇用保険料の計算方法
    2. 労災保険料の計算方法
  8. 社会保険料の免除・控除とは?
    1. 健康保険の免除・控除制度
    2. 厚生年金保険の免除・控除制度
    3. 介護保険料の免除・控除制度
    4. 雇用保険の免除・控除制度
    5. 労災保険の免除・控除制度
  9. 社会保険の計算時に注意しておきたい5つのポイント
    1. 保険料の計算方法や料率が変わることも
    2. ベースとなる賃金や報酬を確認しておく
    3. 日割り計算ではなく定額制で徴収される
    4. 新入社員の見積もり給与には手当等も含める
    5. 徴収額を間違えたときは翌月以降に精算する
  10. 社会保険料が決まるタイミングとは?
    1. 従業員の入社時
    2. 定時改定
    3. 随時改定
  11. 社会保険料率の改定、変更は?
  12. 社会保険料はいつどうやって納付する?
    1. 社会保険料の納付時期
    2. 社会保険料の納付方法
    3. 社会保険料を滞納するとどうなる?
  13. 社会保険料の納付猶予とは?
    1. 厚生年金保険料等の猶予制度
    2. 労働保険料等の猶予制度
    3. 厚生年金基金の納付延長や変更
  14. 意外と難しい社会保険料の計算、節約は慎重に
  15. 事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ
社会保険料,計算
(画像=PIXTA)

「社会保険料」とは?

広義の社会保険は、「労災保険」「雇用保険」「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険料」「国民年金保険料」などを含むが、今回は会社員が加入する「健康保険(40歳以上の方の場合には「介護保険」を含む)」と「厚生年金」の保険料を「社会保険料」と呼んで説明する。

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社会保険の対象者は?加入条件をチェック

社会保険の加入条件は、労働者の雇用形態によって異なる。まずは本稿で取り扱う「健康保険」と「厚生年金」について、加入条件を雇用形態別に整理しておこう。

正規労働者(正社員)の加入条件

法人に雇用されている正社員の場合は、年収や年齢などに関わらず健康保険・厚生年金への加入が義務づけられている。雇用者・労働者ともに加入を拒否することはできないため、正社員を雇うことが決まった段階で加入手続きをしなければならない。

非正規労働者(派遣社員やアルバイトなど)の加入条件

派遣社員やアルバイト、パートなどの非正規労働者についても、以下のいずれかの条件を満たす場合は、健康保険・厚生年金への加入が義務づけられる。

社会保険料、どうやって計算する?計算方法や月額変更届についても解説

なお、上記は2022年9月までの加入条件であり、2022年10月と2024年10月からは以下のように変更されることが決まっている。

社会保険料、どうやって計算する?計算方法や月額変更届についても解説

つまり、社会保険の加入範囲は今後拡大されるので、事業者は改正に合わせて手続きを行わなくてはならない。特に事業者規模の変更は、対象となる法人が増えることを意味するため、中小企業はしっかりと状況を確認しておくことが重要だ。

また、費用負担が増えることを想定して、早めに資金繰りやキャッシュフローを調整しておくことも必要になる。

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給与計算における社会保険料の計算方法

社会保険料は、社会保険料額表(東京都の図参照)から自分の標準報酬月額を割り出し、それにそれぞれの保険料率を乗じて計算する。

自分の給料を、ただその表に当てはめればいいというわけではない。給料をもとに「報酬月額」を計算して届出をする必要がある。

これから入社する新入社員であれば、基本給に通勤手当を含めた給料の総額を報酬月額として、「資格取得届」を提出する。継続して勤務する労働者については、毎年4~6月の給料の平均額を記入して、日本年金機構や健康保険組合などに「算定基礎届」を提出する。これが「報酬月額」であり、これによって決まった標準報酬月額の等級が、その年の9月から1年間固定される。

途中で「基本給が上がった」「交通費が変更になった」「手当が加算された」などの理由で固定的賃金が変動した場合は、4ヵ月目に「月額変更届」を提出することで等級が変わることがある。ただし給料の変動があっても、等級表で2等級以上の変動とならない場合や、残業などの突発的な手当による変動の場合は、報酬月額は変更されない。

また、産前産後休業や育児休業中、介護休業中、病気休業中などの理由で給料が支払われなかった場合は月額変更届の提出は不要で、等級は変わらない。

標準報酬月額とは?

標準報酬月額」を計算するために、4~6月に支払われた給料の総額を3で割って、「報酬月額」を算出してみよう。その3ヵ月間で支払われたすべての手当を含めるのがポイントだ。税金上交通費は非課税なので誤解している人が多いが、3ヵ月分や6ヵ月分の定期代が支給されている場合は、月数で割ったものを加算する。

会社の業績が好調で、年4回以上の賞与が支給された場合や、4月に昇給したものの後で支払われた場合などは、それも含めなければならない。そのようにして計算した「報酬月額」を社会保険料額表にあてはめて、はじめて自分の標準報酬月額がわかるのだ。たとえば基本給が30万円、1ヵ月の定期代が1万1,000円であれば、総額は31万1,000円。標準報酬月額は、32万円の23等級(年金の等級は20等級)となる。

健康保険と厚生年金では、等級の下限・上限と幅が異なる。健康保険は1等級の5万8,000円から50等級の139万円までだが、厚生年金では1等級の8万8,000円から31等級の62万円までだ。

厚生年金は全国どこでも同額だが、健康保険は都道府県で保険料率が異なる。保険者が「協会けんぽ」なのか「健康保険組合」なのかによっても保険料率は変わる。

ただし等級自体はどこでも同じなので、自分の報酬月額がどの「標準報酬月額」になるかを知るためだけなら、どの社会保険料額表を見ても問題ない。参考までに全国健康保険協会が出している「令和2年度保険料額表(令和2年4月分から)」の東京版を掲載しておこう。

社会保険料_計算
(画像=全国健康保険協会)
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健康保険料の計算方法

また、結婚した時や子どもが生まれた時などに、「健康保険料が上がりますよね?いくらになりますか?」と聞かれることがある。

健康保険料は、扶養家族の数によって変わることはない。年金保険料を納付しなくてもよいのは、第3号被保険者として認定された配偶者のみだ。20歳以上の子どもなどは対象外となる。

子ども20歳以上でも学生の場合には、親が年金保険料を納付することも可能だが「学生納付特例」を使えば保険料の納付が猶予される。

介護保険料の計算方法

介護保険は、40歳以上の人が医療保険とセットで加入する保険だ。65歳以上の第1号被保険者と、40歳以上65歳未満の第2号被保険者に分けられ、それぞれの計算方法や納付方法、給付される条件が異なる。

第2号被保険者である40歳以上65歳未満の会社員の場合、全国一律の介護保険料率を標準報酬月額に乗じて介護保険料が計算される。東京都の保険料額表を見ると、介護保険料に加入している人の保険料率は11.63%、加入していない人の保険料率は9.90%なので、差分の1.73%を会社と労働者で折半することになる。

40歳以上65歳未満の会社員の介護保険料は、医療保険とセットになっている。健康保険料は扶養家族が何人でも変わらないが、介護保険料も同じだ。健康保険と異なるのは、介護保険が徴収される時期である。

たとえば本人が38歳で、母親(63歳)、妻(40歳)、子供(10歳)が扶養家族の場合、介護保険が適用されるのは40歳以上である母親と妻だが、本人が40歳になっていないので本人から徴収される介護保険料は発生しない。介護保険料は、被保険者の誕生日の前日の属する月から徴収される。

では65歳以上の会社員の場合はどうだろうか。65歳になると老齢基礎年金を受給できるので、給料から健康保険料が控除されていても介護保険料は徴収されず、原則として老齢の年金から徴収される。給与計算の際は、65歳の誕生日の前日が属する月から介護保険料を徴収する必要がなくなるので注意してほしい。

ほかの社会保険料はどうやって計算する?

従業員を雇っている事業者は、上記以外の社会保険料も計算して徴収しなければならない。ここからは予備知識として、健康保険や介護保険以外の社会保険料についても計算方法を解説する。

雇用保険料の計算方法

雇用保険料は、「賃金総額×料率」の式によって計算できる。料率は事業の種類によって異なるが、厚生労働省が公表している料率表から簡単に把握することが可能だ。

○令和3年度の雇用保険料率

ここまでの内容を踏まえて、以下では雇用保険を計算する流れをまとめていこう。

社会保険料、どうやって計算する?計算方法や月額変更届についても解説

なお、計算結果に1円未満の端数が生じた場合は、50銭以下は切り捨て、50銭超は切り上げて処理を行う。

労災保険料の計算方法

労災保険料も計算式は同じであり、「賃金総額×料率」によって月々の保険料が決められている。ただし、雇用保険よりも料率の区分が細かいため、その点に注意しながら調べることが必要だ。

○労災保険率表(一部)

労災の発生リスクは事業によって異なるため、労災保険の料率も事業による差が大きい。例えば、鉱業や建設業の料率は全体的に高いが、リスクが低いサービス業や通信業などは低めに設定されている。

では、ここまでの内容を踏まえて、労災保険料についても計算の流れをまとめておこう。

社会保険料、どうやって計算する?計算方法や月額変更届についても解説

なお、労災保険料は事業者が負担するものなので、雇用保険のように折半する金額を求める必要はない。上記の例で言えば、26,400円の労災保険料をすべて事業者が支払うことになる。

ちなみに雇用保険や労災保険の料率表は、厚生労働省が定期的に見直している。つまり、時期によって料率が異なるケースもあるので、社会保険料を計算する際には最新のものをチェックしておこう。

社会保険料の免除・控除とは?

社会保険料には免除・控除の仕組みがあり、これらの制度を活用すると支払いの負担を抑えられる。基本的には被保険者を対象としたものだが、事業主が知識をつけておけば従業員をサポートできるかもしれない。

それぞれの社会保険でどのような制度が用意されているのか、ここからは特に押さえておきたい免除・控除制度を紹介しよう。

健康保険の免除・控除制度

正社員が負担する健康保険料は、社会保険料控除の対象に含まれている。社会保険料控除とは、1年間に支払った保険料を所得から差し引くことで税負担を抑えられる制度だ。

個人事業主の国民健康保険料も対象だが、いずれも税務申告をしなければ適用されない。申告書類に専用欄が設けられているため、年末調整・確定申告の際には忘れないように記載しておこう。

また、居住地の自治体によっては、以下のように独自の免除・控除制度を実施しているケースもある。

社会保険料、どうやって計算する?計算方法や月額変更届についても解説

自治体の制度は地域によって異なるため、事業所近辺の情報をチェックしておこう。

厚生年金保険の免除・控除制度

厚生年金保険料も、社会保険料控除の対象である。個人事業主の国民年金保険料も同様であるため、年末調整・確定申告では忘れないように申請を行っておきたい。

また、日本年金機構は被保険者に対して、以下の免除制度を実施している。

社会保険料、どうやって計算する?計算方法や月額変更届についても解説

いずれもメリットの大きい制度だが、適用を受けるには事業主の手続きが必要になる。産休や育休を取得する従業員がいる場合は、状況を確認した上で申請を行っておきたい。

介護保険料の免除・控除制度

介護保険料も、社会保険料控除の対象に含まれている。申告の流れも健康保険などと同様だが、介護保険料は40歳から支払いが始まるため、年末調整などで書き忘れるリスクが高い。万が一年末調整で書き忘れた場合は、翌年2~3月の確定申告でしっかりと記載しておこう。

また、介護保険料の減免については、各自治体が以下のような形で実施している。

社会保険料、どうやって計算する?計算方法や月額変更届についても解説

なお、いずれの制度も所定の手続きが必要であり、本人確認書類や収入申告書などの提出も求められる。また、それぞれ要件が細かく定められているので、適用を目指す人は制度概要をしっかりと確認しておこう。

雇用保険の免除・控除制度

雇用保険の免除・控除制度としては、社会保険料控除や産休・育休中の減免措置などが挙げられる。雇用保険は労働環境を守るための制度なので、産前産後休業期間など労務に従事していない時期には支払いが免除される。

また、以前は高年齢労働者(65歳以上)の支払いが免除されていたが、この制度は2019年3月に撤廃されている。2022年3月現在では、年齢に関わらず雇用保険を負担する必要があるので、シニア人材を多く雇っている事業主は注意しておこう。

労災保険の免除・控除制度

労災保険は事業主が単独で支払うものであるため、社会保険料控除のような制度は存在していない。また、事業主を対象にした減免制度等も実施されていないため、毎月決まった額をきちんと支払う必要がある。

ただし、厚生労働省は一時的に支払いが困難な事業主に対して、以下のような猶予制度を実施している。

社会保険料、どうやって計算する?計算方法や月額変更届についても解説

上記はあくまで猶予を受けるための制度であり、労災保険料の支払い額が軽減されるものではない。また、猶予を受けられる期間も決められているので、仮に適用を受けたとしてもすぐに納付のスケジュールを立てる必要がある。

社会保険の計算時に注意しておきたい5つのポイント

社会保険料の計算方法は、従業員の年齢や時期によって変わることがある。金額を間違えると二度手間になるため、計算ミスにつながる要因は先に対処しておくことが重要だ。

ここからは社会保険料の計算において、特に注意したい4つのポイントを解説する。

保険料の計算方法や料率が変わることも

社会保険料の計算方法や料率は、毎年固定のものではない。例えば、2021年には介護保険の料率が全国的に引き上げられ、事業主・従業員のいずれの負担金額も増加した。

特に注意しておきたいのは、社会保険料の計算において古いソフトやシステムを使っているケースだ。自動更新が備わっていない製品を使っていると、従来の料率のまま計算が行われるため、社会保険料の過不足が生じてしまう。

また、表計算ソフトを使用している場合も、自身の手で変更を加えない限りは最新の料率が反映されない。計算方法・料率の見直しは不定期に実施されるため、社会保険料の計算方法は毎年チェックすることが重要だ。

ベースとなる賃金や報酬を確認しておく

社会保険料のベースとなる賃金・報酬には、通勤手当などの各種手当も含まれる。一方で、出張費や病気見舞金のように対象外となる収入もあるが、実際にはどのように線引きされているのだろうか。

標準報酬月額の対象となる賃金・報酬は、以下のように定められている。

社会保険料、どうやって計算する?計算方法や月額変更届についても解説

対象となる賃金・報酬は細かく定められているが、出張手当のように扱いに悩まされやすいものも多い。対象範囲を見誤ると、適正な金額を徴収できない恐れがあるので、判断に迷ったら専門家や窓口に相談することも検討しよう。

日割り計算ではなく定額制で徴収される

社会保険料は定額制であり、日割りによって金額が計算されることはない。つまり、同じ月であればどのタイミングで加入しても、負担する金額は同じとなる。

また、月の途中で退職・転職をした従業員の扱いも、合わせて覚えておきたいポイントだ。このケースでは、退職した月の末日時点で加入していた保険が支払いの対象となる。

入社時と退社時は扱いを間違えやすいので、上記の点はしっかりと理解しておこう。

新入社員の見積もり給与には手当等も含める

新入社員の社会保険料は、固定給などをベースにした「見積もり給与」を用いて計算する。この見積もり給与には通常の給与のほか、残業代などの手当等も含めなくてはならない。

ちなみに、4月に入社した新入社員の場合は、見積もり給与による計算が8月まで続く。同年4月~7月には実際の給与を受け取るものの、その金額が社会保険料のベースになることはない。

徴収額を間違えたときは翌月以降に精算する

社会保険料の計算・徴収を間違えた場合は、翌月以降に精算をする必要がある。無理に当月分で調整しようとすると、従業員本人と金銭のやり取りが発生してしまうためだ。余計なトラブルを増やさないように、基本的には翌月以降の給与を調整したり、事業者から現金を渡したりする方法が望ましい。

なお、計算・徴収を間違えた事実は、しっかりと従業員に伝えることが必要になる。金銭のトラブルは信用問題につながりかねないので、仮に少額であっても真摯に謝罪することを心がけよう。

従業員との清算が終わったら、あとは「預かり金」または「法定福利費」として会計処理を行えば対応は完了となる。

社会保険料が決まるタイミングとは?

従業員を抱える事業主は、社会保険料が決まるタイミングも理解しておく必要がある。社会保険料は独断での変更が認められておらず、金額決定のタイミングは以下の3つに分けられている。

従業員の入社時

基本的に社会保険は、加入資格を取得した月の翌月から天引きを行う。ただし、雇用保険については最初の給料から天引きする形となるので、新入社員の給与が決まる前までに保険料を計算しておく必要がある。

より理解しやすくするために、以下では正社員の入社日を4月1日として例を挙げてみよう。

社会保険料、どうやって計算する?計算方法や月額変更届についても解説

事業主が特に意識しておきたいポイントは、「最初の給料」と「加入資格取得」の2つのタイミングだ。この2点をきちんと理解しておけば、いつまでに計算が必要になるのか予定を立てやすくなる。

定時改定

定時改定とは、毎年4~6月の給与をもとに標準報酬月額を見直すことである。定時改定のタイミングは自由だが、毎年7月10日までに算定基礎届を提出しなくてはならない。

なお、4~6月が繁忙期の企業は、社会保険が高くなりやすい傾向がある。深夜手当や休日手当などが発生する影響で、標準報酬月額のベースとなる4~6月の賃金が増加するためだ。

一方で、4~6月の手当等を削った場合は、従業員・事業者のいずれも社会保険料の負担が軽くなる。ただし、無理に賃金を削ると新たな弊害が生じることもあるので、保険料の節約だけに集中しないよう気をつけたい。

随時改定

随時改定とは、短期間で賃金に大きな変動があった場合に、定時改定を待たずして社会保険料を変更することである。詳しくは後述するが、昇降給や産休・育休にともなう賃金の変動などによって一定の要件を満たした場合は、随時改定を行った後に届出をしなくてはならない。

ちなみに、随時改定が遅れても特に罰則が科されることはないが、不足した社会保険料は過去2年に遡って請求できる。ケース次第では2年分をまとめて請求されるリスクがあるため、資金繰りの圧迫を防ぐ意味合いでも、随時改定は必ず行っておくことが重要だ。

社会保険料率の改定、変更は?

繰り返しになるが、標準報酬月額は4~6月に支払われた給料の平均額で決まる。この平均額を標準報酬月額表にあてはめて標準報酬月額の等級が決定され、それに保険料率を乗じて計算する。標準報酬月額の等級が決定された9月からの1年間は、それぞれの社会保険料率をかけた社会保険料が給料から天引きされる。

厚生年金保険料率は平成29年9月に固定されているが、健康保険料率と介護保険料率は毎年3月に変更される。健康保険料率は都道府県ごと、もしくは健康保険組合など医療保険の保険者ごとに異なるが、介護保険料率は全国一律で変更される。

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「月額変更届」以外の等級の変更についても触れておこう。60歳の定年で一旦退職させるが、すぐに再雇用する会社は多い。給料の総額が元の等級から2等級以上変動した場合、その4ヵ月目に月額変更届を提出することになる(※随時改定)。社会保険料も、4ヵ月後に新しい標準報酬月額に保険料率を乗じた額となる。

ただし、就業規則などに定年退職後の再雇用や継続雇用の規定が記載されていれば、「資格喪失届」と「資格取得届」を同時に提出することで、すぐに社会保険料を変更することができる。

定年後の再雇用では給料が減額されるケースが多いため、3ヵ月間とはいえ元の高い社会保険料を支払わずに済むことは、本人にとっても会社にとってもメリットがある。

このように、社会保険料は給料の額や保険料率の見直しによっても変動する。では、病気やけがで長期休養をしている場合などは、どうなるのだろうか。

その場合、標準報酬月額は0円にはならず「従前の標準報酬月額とする」ことになっている。今は、産前産後休業中と育児休業中は社会保険料が免除されるが、介護休業や病気休業中の場合は元の標準報酬月額の等級に決定される「保険者算定」という制度が適用される。給料が支払われなくても、社会保険料の本人負担分と会社負担分を納めなければならないのだ。

社会保険料は、意外と誤解が多い。標準報酬月額を決定するための給料には、「年4回以上の賞与」も含まれる。4月に給料が昇給しても元の金額のまま支払われたり、交通費を加算し忘れたりと、会社の届出自体が間違っていることもある。

そのため、近年は年金事務所の調査などが厳しくなってきており、未適用の会社にも加入を促進する動きも加速しているようだ。すでに加入している会社は、まずは正しい「資格取得届」や「算定基礎届」を提出するところから始めてほしい。

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社会保険料はいつどうやって納付する?

従業員から徴収した社会保険料は、事業主が責任をもって納付しなければならない。納付の際にトラブルが発生することもあるので、社会保険料の納付時期や納付方法についても正しい知識をつけておこう。

社会保険料の納付時期

社会保険の納付期限は、翌月の末日に固定されている。ただし、末日が土日祝日にあたる場合は、金融機関の翌営業日まで延長される。

実際にはどのような納付スケジュールになりやすいのか、以下で一例を紹介しておこう。

社会保険料、どうやって計算する?計算方法や月額変更届についても解説

保険料納入告知書は日本年金機構から送付される書類であり、処理の都合で枚つづりになっている。切り離さずに納付をする必要があるため、会社に届いたら安全な場所に保管しておこう。

社会保険料の納付方法

社会保険料の納付方法は、以下の3つに大きく分けられる。

社会保険料、どうやって計算する?計算方法や月額変更届についても解説

上記のうち電子納付には、「ネットバンキング」「モバイルバンキング」「テレフォンバンキング」「コンビニなどのATM」の4種類がある。中でもネットバンキングやモバイルバンキングは利便性が高く、ネット環境さえあればいつでも納付することが可能だ。

どの方法を選んでも納付金額に違いはないため、都合に合った方法を事前に選んでおこう。

社会保険料を滞納するとどうなる?

社会保険料を滞納すると、納付期限の約1ヶ月後に督促状が届く。この段階ではまだペナルティは発生しないため、督促状が届いたらすぐに納付することが重要だ。

それでも滞納を続けると、電話や訪問による催促を経て、最終的には財産を差し押さえられる恐れがある。また、年金事務所による財産調査が実施される例もあるため、滞納は確実に防がなければならない。

ちなみに、督促状に記載された納付期限を過ぎると、以下の式で計算される「延滞金」が発生する。

社会保険料、どうやって計算する?計算方法や月額変更届についても解説

延滞金は発生日数が長いほど増えるため、滞納に気づいたタイミングでしっかりと対応するようにしよう。

社会保険料の納付猶予とは?

社会保険料の納付が難しい場合は、「猶予制度」の利用を検討したい。2022年3月現在では、新型コロナウイルスの影響で2つの猶予制度が実施されている。

それぞれ要件や延長期間が異なるため、ここからは各制度に分けて概要を解説していこう。

厚生年金保険料等の猶予制度

厚生年金保険料等の猶予制度では、次の2つの猶予が用意されている。

社会保険料、どうやって計算する?計算方法や月額変更届についても解説

換価・納付の猶予が認められると、猶予期間中に発生する延滞金の一部も免除される。また、納付期限から6ヶ月を過ぎても相談に乗ってもらえる可能性があるため、納付に悩んだら早めに問い合わせることを検討したい。

労働保険料等の猶予制度

新型コロナウイルスの影響で労働保険料等の支払いが困難になった場合は、この制度によって換価・納付の猶予を受けられる可能性がある。猶予期間は最長1年であり、期間中に発生した延滞金はすべてが免除される。

ただし、換価・納付の猶予を受けるには、以下の要件を満たすことが必要だ。

社会保険料、どうやって計算する?計算方法や月額変更届についても解説

いずれの制度も担保は不要なので、換価できる資産を持っていなかったとしても、まずは都道府県労働局に相談をすることから考えよう。

厚生年金基金の納付延長や変更

通常、厚生年金基金の設立事業所は納付計画に基づいて納付を行っている。しかし、近年のコロナ禍の影響により、一時的に納付が難しくなった事業所も存在するだろう。

この制度はそういった事業所の救済を目的としており、救済措置として以下の3つが用意されている。

社会保険料、どうやって計算する?計算方法や月額変更届についても解説

本制度の利用にあたっては、納付書の発行元である年金事務所への相談が必要だ。管轄の年金事務所については、日本年金機構の公式サイトから検索できる。

意外と難しい社会保険料の計算、節約は慎重に

ネットでは「社会保険料を削減する」ための裏技が多く公開されているようだが、会社の社会保険の削減のために、すぐに飛びつくのはやめた方がいいだろう。

たとえ、「合法的」、「年金事務所で認められた」などと書いてあったとしても、必ず年金事務所に確認するべきだ。社会保険の手続きを間違った場合の責任は、会社が取ることになる。

時効は2年であり、万一、2年分遡って社会保険料を訂正し追加で納めなければならなくなると、会社としてかなりの大金を準備しなければならない。慎重に対応したいものだ。

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文・當舎緑(社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー)

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