社会保険料,計算
(画像=PIXTA)
當舎 緑
當舎 緑(とうしゃ・みどり)
社会保険労務士・行政書士・CFP®。阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。

超高齢化とともに、社会保険料が高くなっていることを実感している人は多いだろう。日本では、社会保険は現役の人が高齢者を支える構造になっているので、高齢者が増えると当然社会保険料も増加する。しかしどんなに保険料が高くても、社会保険に加入しないという選択肢はない。必ず何らかの社会保険に加入して、保険料を払うことになる。

扶養家族など一部例外もあるが、加入している社会保険の種類は違えど、社会保険料を納めることは国民全員の義務なのだ。今回はそんな社会保険料の費用計算方法を見ていこう。

目次

  1. 「社会保険料」とは?
  2. 給与計算における社会保険料の計算方法
  3. 標準報酬月額とは?
  4. 健康保険料の計算方法
  5. 介護保険料の計算方法
  6. 社会保険料率の改定、変更は?
  7. 意外と難しい社会保険料の計算、節約は慎重に

「社会保険料」とは?

広義の社会保険は、「労災保険」「雇用保険」「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険料」「国民年金保険料」などを含むが、今回は会社員が加入する「健康保険(40歳以上の方の場合には「介護保険」を含む)」と「厚生年金」の保険料を「社会保険料」と呼んで説明する。

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給与計算における社会保険料の計算方法

社会保険料は、社会保険料額表(東京都の図参照)から自分の標準報酬月額を割り出し、それにそれぞれの保険料率を乗じて計算する。

自分の給料を、ただその表に当てはめればいいというわけではない。給料をもとに「報酬月額」を計算して届出をする必要がある。

これから入社する新入社員であれば、基本給に通勤手当を含めた給料の総額を報酬月額として、「資格取得届」を提出する。継続して勤務する労働者については、毎年4~6月の給料の平均額を記入して、日本年金機構や健康保険組合などに「算定基礎届」を提出する。これが「報酬月額」であり、これによって決まった標準報酬月額の等級が、その年の9月から1年間固定される。

途中で「基本給が上がった」「交通費が変更になった」「手当が加算された」などの理由で固定的賃金が変動した場合は、4ヵ月目に「月額変更届」を提出することで等級が変わることがある。ただし給料の変動があっても、等級表で2等級以上の変動とならない場合や、残業などの突発的な手当による変動の場合は、報酬月額は変更されない。

また、産前産後休業や育児休業中、介護休業中、病気休業中などの理由で給料が支払われなかった場合は月額変更届の提出は不要で、等級は変わらない。

標準報酬月額とは?

標準報酬月額」を計算するために、4~6月に支払われた給料の総額を3で割って、「報酬月額」を算出してみよう。その3ヵ月間で支払われたすべての手当を含めるのがポイントだ。税金上交通費は非課税なので誤解している人が多いが、3ヵ月分や6ヵ月分の定期代が支給されている場合は、月数で割ったものを加算する。

会社の業績が好調で、年4回以上の賞与が支給された場合や、4月に昇給したものの後で支払われた場合などは、それも含めなければならない。そのようにして計算した「報酬月額」を社会保険料額表にあてはめて、はじめて自分の標準報酬月額がわかるのだ。たとえば基本給が30万円、1ヵ月の定期代が1万1,000円であれば、総額は31万1,000円。標準報酬月額は、32万円の23等級(年金の等級は20等級)となる。

健康保険と厚生年金では、等級の下限・上限と幅が異なる。健康保険は1等級の5万8,000円から50等級の139万円までだが、厚生年金では1等級の8万8,000円から31等級の62万円までだ。

厚生年金は全国どこでも同額だが、健康保険は都道府県で保険料率が異なる。保険者が「協会けんぽ」なのか「健康保険組合」なのかによっても保険料率は変わる。

ただし等級自体はどこでも同じなので、自分の報酬月額がどの「標準報酬月額」になるかを知るためだけなら、どの社会保険料額表を見ても問題ない。参考までに全国健康保険協会が出している「令和2年度保険料額表(令和2年4月分から)」の東京版を掲載しておこう。

社会保険料_計算
(画像=全国健康保険協会)
標準報酬月額
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健康保険料の計算方法

また、結婚した時や子どもが生まれた時などに、「健康保険料が上がりますよね?いくらになりますか?」と聞かれることがある。

健康保険料は、扶養家族の数によって変わることはない。年金保険料を納付しなくてもいのは、第3号被保険者として認定された配偶者のみだ。20歳以上の子どもなどは対象外となる。

子ども20歳以上でも学生の場合には、親が年金保険料を納付することも可能だが「学生納付特例」を使えば保険料の納付が猶予される。

介護保険料の計算方法

介護保険は、40歳以上の人が医療保険とセットで加入する保険だ。65歳以上の第1号被保険者と、40歳以上65歳未満の第2号被保険者に分けられ、それぞれの計算方法や納付方法、給付される条件が異なる。

第2号被保険者である40歳以上65歳未満の会社員の場合、全国一律の介護保険料率を標準報酬月額に乗じて介護保険料が計算される。東京都の保険料額表を見ると、介護保険料に加入している人の保険料率は11.63%、加入していない人の保険料率は9.90%なので、差分の1.73%を会社と労働者で折半することになる。

40歳以上65歳未満の会社員の介護保険料は、医療保険とセットになっている。健康保険料は扶養家族が何人でも変わらないが、介護保険料も同じだ。健康保険と異なるのは、介護保険が徴収される時期である。

たとえば本人が38歳で、母親(63歳)、妻(40歳)、子供(10歳)が扶養家族の場合、介護保険が適用されるのは40歳以上である母親と妻だが、本人が40歳になっていないので本人から徴収される介護保険料は発生しない。介護保険料は、被保険者の誕生日の前日の属する月から徴収される。

では65歳以上の会社員の場合はどうだろうか。65歳になると老齢基礎年金を受給できるので、給料から健康保険料が控除されていても介護保険料は徴収されず、原則として老齢の年金から徴収される。給与計算の際は、65歳の誕生日の前日が属する月から介護保険料を徴収する必要がなくなるので注意してほしい。

社会保険料率の改定、変更は?

繰り返しになるが、標準報酬月額は4~6月に支払われた給料の平均額で決まる。この平均額を標準報酬月額表にあてはめて標準報酬月額の等級が決定され、それに保険料率を乗じて計算する。標準報酬月額の等級が決定された9月からの1年間は、それぞれの社会保険料率をかけた社会保険料が給料から天引きされる。

厚生年金保険料率は平成29年9月に固定されているが、健康保険料率と介護保険料率は毎年3月に変更される。健康保険料率は都道府県ごと、もしくは健康保険組合など医療保険の保険者ごとに異なるが、介護保険料率は全国一律で変更される。

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「月額変更届」以外の等級の変更についても触れておこう。60歳の定年で一旦退職させるが、すぐに再雇用する会社は多い。給料の総額が元の等級から2等級以上変動した場合、その4ヵ月目に月額変更届を提出することになる。社会保険料も、4ヵ月後に新しい標準報酬月額に保険料率を乗じた額となる。

ただし、就業規則などに定年退職後の再雇用や継続雇用の規定が記載されていれば、「資格喪失届」と「資格取得届」を同時に提出することで、すぐに社会保険料を変更することができる。

定年後の再雇用では給料が減額されるケースが多いため、3ヵ月間とはいえ元の高い社会保険料を支払わずに済むことは、本人にとっても会社にとってもメリットがある。

このように、社会保険料は給料の額や保険料率の見直しによっても変動する。では、病気やけがで長期休養をしている場合などは、どうなるのだろうか。

その場合、標準報酬月額は0円にはならず「従前の標準報酬月額とする」ことになっている。今は、産前産後休業中と育児休業中は社会保険料が免除されるが、介護休業や病気休業中の場合は元の標準報酬月額の等級に決定される「保険者算定」という制度が適用される。給料が支払われなくても、社会保険料の本人負担分と会社負担分を納めなければならないのだ。

社会保険料は、意外と誤解が多い。標準報酬月額を決定するための給料には、「年4回以上の賞与」も含まれる。4月に給料が昇給しても元の金額のまま支払われたり、交通費を加算し忘れたりと、会社の届出自体が間違っていることもある。

そのため、近年は年金事務所の調査などが厳しくなってきており、未適用の会社にも加入を促進する動きも加速しているようだ。すでに加入している会社は、まずは正しい「資格取得届」や「算定基礎届」を提出するところから始めてほしい。

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意外と難しい社会保険料の計算、節約は慎重に

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たとえ、「合法的」、「年金事務所で認められた」などと書いてあったとしても、必ず「会社が」「管轄の」年金事務所に確認するべきだ。社会保険の手続きを間違った場合の責任は、会社が取ることになる。

時効は2年であり、万一、2年分遡って社会保険料を訂正し追加で納めなければならなくなると、会社としてかなりの大金を準備しなければならない。慎重に対応したいものだ。

文・當舎緑(社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー)

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