社会保険料
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澤田 朗
澤田 朗(さわだ・あきら)
日本相続士協会理事・相続士・AFP。1971年生まれ、東京都出身。日本相続士協会理事・相続士・AFP。相続対策のための生命保険コンサルティングや相続財産としての土地評価のための現況調査・測量等を通じて、クライアントの遺産分割対策・税対策等のアドバイスを専門家とチームを組んで行う。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。

健康保険・厚生年金保険などの社会保険に加入している事業主は、社会保険料を取り決めるために、毎年「算定基礎届」の提出が必要となる。ここでは、「算定基礎届」の基礎や申請書類の紹介はもちろん、標準報酬月額の決定に関連する定時決定や随時改定などについても説明する。

目次

  1. 社会保険の算定基礎届とは
  2. 社会保険料の「標準報酬月額」における「報酬」とは?
  3. 標準報酬月額の決定方法(定時決定)
    1. 定時決定の対象外となる人
    2. 短時間就労者の定時決定
  4. 標準報酬月額の決定方法(随時改定)
  5. 社会保険料の算定基礎届の提出方法や必要書類

社会保険の算定基礎届とは

社会保険料は被保険者(従業員等)の報酬額を基に決定され、労使折半にて納付することになる。ただし、毎月の報酬額が決まる毎に社会保険料を計算していては、事務作業に負担がかかる。こういった負担を減らす意味でも、社会保険料は年の一定月の報酬額を基に計算された「標準報酬月額」によって決定されている。

従業員の報酬額は、昇給や手当の増減などで変わる可能性があるため、基準となる「標準報酬月額」も年に1回見直しが行われることになる。

社会保険料の算出に使用される標準報酬月額を見直し、1年間の社会保険料を決定するための手続きに使用するのが「算定基礎届」である。

社会保険料の「標準報酬月額」における「報酬」とは?

1年間の社会保険料計算の基準として使用する標準報酬月額だが、含められる額の中には「報酬」となるものとならないものがある。ここでは、報酬の種類や報酬とならないものについて説明する。

「報酬」は労働者(被保険者)が、労働の対価として事業主から受け取る全てのものである。

「報酬」は、必ずしも金銭だけではなく、現物支給も含まれている。ただし、年3 回以下の賞与といった「臨時に受け取るもの」は報酬には含まれない。報酬となるものとならないものについては、以下のように定められている。

1.報酬となるもの
A:金銭(通貨)で支給されるもの
基本給(月給・週給・日給等)・能率給・奨励給・役付手当・職階手当、特別勤務手当・勤務地手当・物価手当・日直手当・宿直手当・家族手当・扶養手当・休職手当・通勤手当・住宅手当・別居手当・早出残業手当・継続支給する見舞金・年4 回以上の賞与 等

B:現物で支給されるもの
通勤定期券・回数券・食事・食券・社宅・寮・被服(勤務服でないもの)・自社製品 等

2.報酬とならないもの
A:金銭(通貨)で支給されるもの
大入袋・見舞金・解雇予告手当・退職手当・出張旅費・交際費・慶弔費・傷病手当金・労災保険の休業補償給付・年3 回以下の賞与(「標準賞与額」の対象となる) 等

B:現物で支給されるもの
制服・作業着(業務に要するもの)・見舞品・食事(本人の負担額が、厚生労働大臣が定める価額により算定した額の2/3 以上の場合) 等

現物で支給される報酬(現物給与)については、その種類によって下記の通り報酬額に算入する額が決められている。

・通勤定期券等
通勤手当を定期券や回数券で現物支給している場合には、全額が報酬に該当する。複数月分をまとめて支給する通勤定期券などの場合は、1ヵ月分で算出する。

・食事で支払われる報酬等
食事支給の場合の算入額は、事業所が所在している都道府県の厚生労働大臣が取り決めている価額に換算する。従業員が食事代金の一部を負担している場合は、負担分を差し引いた額が報酬額となるが、負担金額が3分の2以上の場合は報酬に含めない。

・住宅で支払われる報酬等
社宅や寮などの住居を与えている場合は、事業所所属地域の厚生労働大臣が取り決めた価額に換算する。寮費や社宅費の中で従業員の負担がある場合は、その分を差し引いた価額が報酬額となる。

報酬額の算出にあたっては、居間・茶の間・寝室・客間等・居住用の室のみとし、玄関・台所・トイレ・浴室・営業用の室(店、事務室等)等は含めない。

・食事及び住宅以外の報酬等
上記以外で、労働協約に定めがあるその他の原物給与は、「時価」によって報酬額を決定する。ただし、労働協約で取り決められていない場合は、実際の費用を「時価」とする。

なお、「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」に関しては、「日本年金機構のページ」にて、最新の価額が随時公開されている。

標準報酬月額の決定方法(定時決定)

標準報酬月額は1年間の報酬額を基に決められるのではない。毎年、4月から6月の3ヵ月分の報酬額を「算定基礎届」で提出した後に再決定される。これを「定時決定」と呼び、定められた標準報酬月額は、基本的には1年間(その年の9月から翌年の8月まで)適用され、被保険者ごとの社会保険料の計算や受給金額の計算に用いられる。

定時決定の対象者は、毎年7月1日時点の全被保険者であり、4月・5月・6月それぞれで支払基礎日数(給料計算の対象となる日数)が17日以上ある場合に、その期間の報酬の総額を3で割った額が報酬月額として標準報酬月額が決定される。

・標準報酬月額:4月・5月・6月の報酬の総額/3

支払基礎日数が17日未満の月がある場合は、報酬額が通常月と乖離することになるため、算定の対象外とされている。例えば6月だけが支払い基礎日数の基準に満たなければ、4月・5月の2ヵ月の平均となる。

また、全ての月の支払基礎日数が17日未満の場合など、特殊なケースにおける標準報酬月額の決定方法は下記の通りである。

A:基準月の3ヵ月すべての支払基礎日数が17日未満ならば、これまで適用していた標準報酬月額をそのまま適用。

B:通常の定時決定の計算では実態とかけ離れてしまう場合は、修正計算する。報酬月数を修正するならば、以下のように対応する。

a:基準月の3ヵ月の間に3月分以前の給料の遅配分受給や、遡って昇給したことで差額を一括受給していれば、遅配分や昇給差額分を減算して報酬月額を計算。

b:基準となる3ヵ月の中で、2ヵ月以下の月で低額の休職給を受けていれば、該当月分を減算して計算。

c:当年の基準となる3ヵ月の報酬から計算した標準報酬月額が、前の年の7月から当年の6月までの報酬から計算した標準報酬月額と比較して2等級以上の差があり、今後も同じ状況になりそうな場合は、後者(前年7月から当年6月)の標準報酬月額で計算する。

d:途中入社により、基準となる3ヵ月の中で1ヵ月分の報酬が無い月がある場合は、その月分の報酬を除いて計算。

e:基準となる3ヵ月とも報酬の支払いが無かったり、低額の休職給であれば、これまでの標準報酬月額にて定時決定。

C:4月や5月に雇用された従業員で、報酬の受け取りが5月・6月の2ヵ月のみならば、その総額で標準報酬月額が決定される。

定時決定の対象外となる人

定時決定では、下記のような条件を満たす人は対象外となる。

A:6月1日から7月1日の間で被保険者資格を取得した人(厚生労働大臣の取り決めにより、翌年8月までの標準報酬月額が決まるため)

B:7月から9月の間のいずれかの月から標準報酬月額が改定されたり、改定される条件を満たす被保険者

短時間就労者の定時決定

短時間就労者は定時決定に際して、下記のような取り決めがある。

ここでいう短時間就労者とは、正規雇用労働者よりも短い時間で勤務する労働者のことであり、具体的には、パートタイマー・アルバイト・契約社員・準社員・嘱託社員などが該当する。

A:基準月の3ヵ月間のうち、支払基礎日数が17日以上の月が1ヵ月以上あるならば、その月の報酬総額を基準として標準報酬月額を決定

B:基準月の3ヵ月間のうち、支払基礎日数が3ヵ月間すべて17日未満ならば、15日以上17日未満の月の報酬総額を基準として標準報酬月額を決定

C:基準月の3ヵ月間のうち、支払基礎日数が3ヵ月すべて15日未満ならば、これまで適用していた標準報酬月額で定時決定

・特定適用事業所に勤務する短時間労働者の定時決定

短時間労働者の定時決定は一般と異なり、基準月となる3ヵ月間の支払基礎日数は「11日以上(通常18日)」で算定する。短時間労働者は、正規雇用社員の所定労働時間・日数が4分の3未満に加え、下記条件を満たした労働者が該当する。

1.週の所定労働時間が20時間以上
2.雇用期間が1年以上見込まれる
3.賃金の月額が8.8万円以上
4.学生でない
5.厚生年金保険の被保険者数が常時501人以上の法人・個人の適用事業所に勤めている。

標準報酬月額の決定方法(随時改定)

被保険者の報酬が年間を通してほぼ一定であれば、標準報酬月額を基準として計算した社会保険料等は妥当な金額となるが、年の途中の昇給などで被保険者の報酬が大幅に変動した場合には、標準報酬月額の改定が必要となる。これを「随時改定」と呼び、下記の3つの条件をすべて満たした際に行う。

1.昇給などによって今まで設定していた固定的賃金が変わったとき
2.報酬が変動した月から3ヵ月の間に支給された平均報酬月額を基準とした標準報酬月額と、これまでの標準報酬月額との差が2等級以上あるとき
3.基準月の3ヵ月の支払基礎日数がいずれも17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上のとき

標準報酬月額は、1等級(8万8千円)から31等級(62万円)まで設定されており、等級によって社会保険料が決定される。2等級以上の差が生じた場合には、社会保険料の額にも影響があるため、随時改定によって標準報酬月額を再設定しなければならない。

随時改定の条件にある「固定的賃金に変動」の「固定的賃金」とは、支給する額や割合が決まっている賃金を指すが、主に下記のケースで変動が考えられるため、事前に随時改定に該当する変動となるかどうか確認する必要がある。

・昇給、降給
・給与体系の変更(日給から月給への変更等)
・日給や時間給の単価の変更
・請負給、歩合給等の単価、歩合率の変更
・住宅手当、役付手当等の固定的な手当の追加、支給額の変更

随時改定によって決定した標準報酬月額の適用期間は、随時改訂を行った時期によって以下のように定められている。

6月以前の改定:当年の8月(期間中に随時改定を再度行わない場合に限る)
7月以降の改定:翌年の8月

社会保険料の算定基礎届の提出方法や必要書類

社会保険料を決定するためには、定時決定や随時改定による計算方法によって算出した標準報酬月額等を記載した算定基礎届を提出することになるが、提出期限や方法についても定められている。ここでは、算定基礎届の提出方法や必要書類等について説明する。

1.提出期間と提出先
算定基礎届の提出期間は、毎年7月1 日から7月10日までとなっており、各県の日本年金機構事務センターへ郵送するか、事業所所在地を管轄する年金事務所の窓口へ持参して提出する。

2.提出物と提出方法
提出方法は紙媒体(届出用紙)・電子媒体(CD・DVD)・電子申請の3種類があり、それぞれ提出物が異なる。

A:紙媒体(届出用紙)で提出する場合
・被保険者報酬月額算定基礎届(70 歳以上被用者算定基礎届)
・被保険者報酬月額算定基礎届 総括表
・(7月改定の月額変更届を提出する被保険者がいる場合)被保険者報酬月額変更届

B:電子媒体(CD・DVD)で提出する場合
・CD またはDVD
・電子媒体届書総括票
・被保険者報酬月額算定基礎届 総括表
・(7月改定の月額変更届を提出する被保険者がいる場合)被保険者報酬月額変更届

提出する算定基礎届の電子媒体を作成するためには、日本年金機構ホームページより「届書作成プログラム」をダウンロードする必要がある。また、「電子媒体届書総括票」「被保険者報酬月額算定基礎届 総括表」は届出用紙を用いて提出しなければならない。

C:電子申請で提出する場合
・被保険者報酬月額算定基礎届(CSV ファイルを添付)
・被保険者報酬月額算定基礎届 総括表
・(7月改定の月額変更届を提出する被保険者がいる場合)被保険者報酬月額変更届

「被保険者報酬月額算定基礎届 総括表」は、算定基礎届の添付書類(JPEG又はPDF 形式)としての提出も可能である。また、電子申請の方法等の詳細は、日本年金機構・電子政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)のホームページで確認することができる。

3.算定基礎届の記載内容
算定基礎届は被保険者ごとに記載・提出する必要がある。算定基礎届の記入内容は下記の通りである。

・被保険者整理番号、被保険者氏名、生年月日
・従前の標準報酬月額、従前改定月
・昇(降)給:4月から6月までに昇給・降給があった月を記入
・遡及支払額:4月から6月までに遡及分の支払額があった月と支払われた遡及差額分を記入
・給与支給月、給与計算の基礎日数
・報酬月額:月ごとの「通貨によるものの額」「現物によるものの額」「合計」をそれぞれ記入
・総計:報酬月額を合計した金額を記入
・平均額:総計を月数で割った金額で、この額が「報酬月額」となり「標準報酬月額」が決定される。

例えば平均額(報酬月額)が37万8,500円だった場合の標準報酬月額は38万円となり、健康保険料・厚生年金保険料は下表の通りとなる。等級が2等級以上変わると標準報酬月額・保険料額にも影響が出るため、前述した随時改定が必要となる。

標準報酬報酬月額
(円以上
円未満)
全国健康保険協会管掌健康保険料厚生年金保険料
(厚生年金基金加入員を除く)
介護保険第2号被保険者に該当しない場合介護保険第2号被保険者に該当する場合一般、坑内員・船員
等級月額9.90%11.63%18.300%
全 額折半額全 額折半額全 額折半額
24
(21)
340,000330,000 ~ 350,00033,660.016,830.039,542.019,771.062,220.0031,110.00
25
(22)
360,000350,000 ~ 370,00035,640.017,820.041,868.020,934.065,880.0032,940.00
26
(23)
380,000370,000 ~ 395,00037,620.018,810.044,194.022,097.069,540.0034,770.00
27
(24)
410,000395,000 ~ 425,00040,590.020,295.047,683.023,841.575,030.0037,515.00
28
(25)
440,000425,000 ~ 455,00043,560.021,780.051,172.025,586.080,520.0040,260.00

※全国健康保険協会(協会けんぽ):東京都2019年度保険料額表(2019年4月分から)より抜粋。
※等級欄の( )内の数字は厚生年金保険の標準報酬月額等級。

4.被保険者報酬月額算定基礎届 総括表
被保険者報酬月額算定基礎届と合わせて、総括表の提出も必要となる。こちらは算定基礎届を提出する被保険者がいない場合も提出しなければならない。7月1日現在の被保険者総数やその内訳・算定基礎届の対象者数等の被保険者の状況や、勤務状況・報酬の支払状況を記載して報告する書類のことである。

5.賞与支払届・賞与支払届総括表
賞与・期末手当・決算手当などといった「賞与」のうち、年3回以下支払うものについても、毎月の社会保険料と同じ料率の保険料を労使折半で納めなければならない。また、賞与の支給日から5日以内に、賞与支払届・賞与支払届総括表の提出が必要となる。年4回以上支払う賞与は「標準報酬月額」の対象となり、保険料を納めなければならない。

健康保険料・厚生年金保険料などの社会保険料を納める際は、保険料の計算はもちろん、さまざまな書類の提出や手続きが必要である。社会保険料の「算定基礎届」の提出は、被保険者の健康保険料・厚生年金保険料を決定するだけでなく、保険給付・年金給付にも関わるため、重要な届出となる。

文・澤田朗(フィナンシャルプランナー・相続士)