(本記事は、矢田 祐二氏の著書『年商10億円ビジネスを実現する、最速成長サイクルのつくり方』セルバ出版の中から一部を抜粋・編集しています)

年商10億,実現,条件
(画像=PIXTA)

年商10億円に向けて、絶対に揃えておくべき2つの条件

社員のやりがいと会社の未来が犠牲になっている現状

分業を機能させるためには、そのための準備が必要になります。何も整備せずに分業を進めれば、たちまち混乱になることは目に見えています。

専門性が高いのは、相変わらず社長と一部の優秀な社員だけです。社長が一番沢山売ってきます、社長が一番アイデアを出します、そして、社長が一番のエンジニアです。スピードは早くなるどころか、かえって遅くなっています。1つひとつに目が届かず、しっかり考えることもできていません。期初に考えた施策も、全く手が付けられていません。

昔からの顧客を社員に引き継げず、社長がまだ抱えていることもあります。それでも、頑張って案件を取りに行けば、社長の日々は、案件対応とトラブル処理に追い回されることになります。

生産性は低いままです。社員が増えても、生産性が増えていないという「異常」事態になります。社員数名でやっていた頃のほうが儲かっていたぐらいです。

そして、そのときに大変な状況にあるのは、社長や一部の優秀な社員だけではありません。それと同時に、多くの犠牲も生まれています。それは、『社員のやりがい』と『会社の未来』です。

社員は、「もっとお客様の役に立ち、お客様に喜んでいただきたい」と思っています。また、「自分の能力を高めたい」、「職場の一員として必要とされていることを実感したい」、「チームとして団結して大きなことを成し遂げたい」とも願っています。優秀な人ほどこの欲求を強く持ちます。

しかし、現状は、お客様の役に立てているという実感は得られていません。お客様からお叱りを受けることも少なくありません。自分の能力を十分に活かせてもいなければ、専門性を高めるだけの機会も見つけられずにいます。職場にも貢献できていないと感じます。部門間の関係もチームというよりは事務的な関係であり、会社への帰属意識は実はありません。

その結果、若く優秀な社員が会社を去っていきます。家庭や住宅ローンを抱える社員は、そのまま留まることを選択します。淡々と作業をこなす日々を送っていると、考えるという能力を弱めていくことになります。

スピードの遅い会社は、絶対に儲からない

そして、『会社の未来』も犠牲になっています。そのサービスは、もっと多くの人に喜んで使ってもらえるだけのポテンシャルを持っています。さらに修正を加えれば、爆発的に広がる可能性があります。

しかし、それができない状態になっています。その事業の可能性を計るためのホームページの完成が遅れています。そのため、広告を打てずにいます。その広告を見て購入を検討するはずの見込客にアプローチができていません。いつ売り出せるかわからないために、サービス本体の改良にも熱が入りません。

実行が遅いために、結果がいつまでも確認できない状況になります。その結果が得られない状況に一番困るのは社長です。結果がよくも悪くもわかれば、何かしらの次の指示を出すことができます。修正の依頼をすることで、次に進むことができます。反応が悪ければ、撤退の判断をして、次の施策に向かうことができます。「実行されないために結果が確認できない」という一番困る状況になっています。

事業とはスピードの勝負とも言えます。早い会社では、1つのホームページの作成を2か月で終えます。加えて、広告を打ってその反応を見て、修正を終えるまでに2か月間です。それに対し遅い会社では、ホームページの作成に6か月を要します。そして、広告の手配にも修正にも、時間がかかります。また6か月がかかります。

同じことをやるのに、早い会社は4か月、遅い会社では12か月という差があります。早くできた分だけ事業の展開が早くなります。見込み客にいち早くアプローチできます。そして、早く改良のサイクルを回すことで、改良の回数を増やすことができます。1年間で3回、5年間で15回改良ができます。その回数の分だけ、質を高めることができるのです。

また、サービスの量産の仕組みも見直しされ、効率も高くなります。より安く、楽に、正確になっていきます。

それに対し、遅い会社は、スピードで他社に負けることになります。市場に投入した時点で、ライバルがそこにいます。すでに他社のサービスを使用している人たちが、何割かは存在します。修正も年1回と少なくなり、販促物の精度も生産体制の改善も進みません。

そして、仕組みの見直しの回数が少ない分、コストは下がらず、作業性も正確さも高まらないままになります。

早く取り組むほど、1つの改善から大きく受益することができます。取り組むのが遅くなるほど、その益も少なくなります。見直しをしない間は、損金を垂れ流しているとも言えます。

早い会社も遅い会社も、その期間には、同じ固定費がかかっています。どちらの会社も人件費や設備費などの経費は出ていきます。

年商10億,実現,条件
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ビジネスにおける2種類の勝ち方 

早い会社は、市場に対し、次から次へと手を打ってきます。シェアの向上とともに、価格の支配権を取っていきます。一方で効率化を進め、経費を下げていきます。量の分だけ、その効果は大きくなります。その結果、大きく儲かることになります。

そこで得た利益を、更に投資していきます。広告費を倍増しシェアを拡大します。サービスの改良や新メニューの開発を行います。システムを導入し、もっと効率化と省人化を進めます。1人当たりの生産性も高いので給与水準も高く設定できます。その結果、優秀な人も集まってきます。よい循環を更によくしていきます。

遅い会社は、市場に打つ手が他社より遅くなります。当然、シェアも高まりません、それどころか奪われていきます。それをひっくり返すために、安易に安売りに走ります。効率化の進みも遅く、経費が「余計に」かかっています。その結果、儲けも少なくなります。利益が少ないので、次のサービス開発やシステムへの投資は控えざるを得ません。給与を上げることができないために、社員の採用では、質でも量でも困ることになります。

その会社のスピードこそが、強さのバロメーターとなります。ひと月でやれることの多さが、会社の未来を決めているのです。早さを得ることで、強いビジネスが展開でき、大きく儲けられる可能性は、各段に高められます。スピードの早い会社は、好循環にのり、未来をどんどんつくり変えていきます。

スピードの遅い会社は、絶対に市場で勝つことはできません。そして、絶対に儲からないのです。そして、スピードの遅さが、サービスや業務のすべての質を下げていきます。質を高めるための優秀な人も採用できません。完全に悪循環です。いまのスピードの遅さが会社を弱くしています。それは、将来に向けての負の遺産ともいえるものになります。

市場では、2つの勝ち方があります。1つは、『事業モデルによる勝ち方』です。事業の領域を絞り、そこに自社の特色あるサービスを構築します。それにより、他社との差別化を測ります。

もう1つは、『スピードによる勝ち方』です。同じレベルのサービスでも、いち早く商品化し、拡げることで差をつけることができます。そのようなサービスをまだ使っていない人に、一番にアプローチします。そして、顧客の囲い込みを行います。後発の企業が、それをひっくり返すのは容易ではありません。

1つ目の事業モデルを考えることこそが、社長の役目となります。勝てる事業モデルの発見には、それだけ時間がかかることになります。経営者のセンスや嗅覚が大きく影響してきます。

2つ目のスピードについては、科学性があります。必要な要素は明確であり、正しいものを導入し、正しく運用すれば、そのとおりに機能してくれるというものです。

ここまでご説明したとおり、スピードについては、あって困ることはありません。逆に、なくて困ることは多大にあります。何としてもスピードは、獲得したいところです。

世の中には、事業の特色や戦略ではなく、スピードで勝ち残っている会社は非常に多くあります。逆に、事業にすごい特色や戦略があっても、スピードがないために、消えていく会社もあります。

そして、素晴らしい事業モデルをつくり展開を始めたものの、スピードのある会社に真似をされて負けたという実際の事例も少なくありません。

仕組みにより、スピードは確実に獲得できる

早い会社はすべてが早く、遅い会社はすべてが遅い、という傾向があります。

早い会社は、どこの部門も、どの担当も、共通してスピードがあります。会社で決めたルールなどが、すぐに定着します。書類提出の期日の設定も、数日中と短いことが通常です。そして、その期日には全部門から提出がされます。会議も時間通りに始まり、時間通りに終わります。改善したことは、すぐに展開され、効果を発揮します。会社の至る所で「早い」のです。

それに対し、遅い会社では、決めたことがなかなか定着しません。ある部門は守っているが、ある部門は守っていないという状況です。書類作成を依頼すると、「2週間後」や「来月までに」と期日を長く設定した返事がきます。そして、その日になっても忘れ去られていることが少なくありません。会議は遅れて始まり、緊張感がなくだらだら長いのです。会社のすべてのところで「遅い」のです。

この早い、遅いというスピードは、会社の仕組みのできによって決定づけされます。早いとは、会社の仕組みがそのようにできているからであり、そこには再現性があります。

その仕組みにより、早い成長のサイクルを回しています。管理者や社員が入れ替わっても、その早さは残ります。その会社に入ると、並みの社員は、その仕組みに引っ張られ、「早く」に染まっていきます。優秀な社員は、より力を発揮することになります。

逆に、遅い会社には、その仕組みが存在しません。仕組みがないから、遅いままと言えます。そのような会社は、早いか遅いかの差を、人の能力ややる気の問題だと考えます。能力の高い人がいる部門だけが早く、その人がいなくなると元の遅い状態に戻ります。

原因は、管理者や社員にあると考えているため、人格教育やマネジメント研修などの取り組みを増やします。または、叱咤激励して動かそうとしています。当然、その効果はなく、いままで通り社長や一部の優秀な社員が、「個人」の力で引っ張ることになります。いちいち「あれどうなっている」と訊かないと進まない状態が続きます。

1つの部門の管理者が優秀で早かったとしても、会社全体のスピードが早くなることはありません。分業しているために、一番遅い部門に全体の歩みを合わせることになります。各部門に書類の提出を依頼しても、必ず提出期限を守らない部門があります。期限を守っている部門が馬鹿を見ることになります。

会社の早い遅いというスピードは、仕組みの問題なのです。再現性のあるスピードこそ、会社の一番の資産になります。絶対に人に向かってはいけません。属人的なスピードはいらないのです。

会社を成長させるため、事業で勝つためには、各部門が成長のサイクルを回す仕組みが必要になります。それもスピードあるサイクルを回すための仕組みです。それがあるからこそ、すごいスピードで増える顧客数、案件数、スタッフ数という量に合わせ、仕組みをつくり直し続けることができるのです。その後も成長を続けることができるのです。

『組織の成長サイクルの仕組み』ができたときに、本当の意味で、「社長は現場を離れる」ことができます。そして、スピードを得られたときに、大きく「儲ける」ことができるのです。

社長は、本来の仕事に、より多くの時間を費やせるようになります。市場の変化、新しいサービスの開発、新しい方針の獲得ために、外に出ることができます。その瞬間も、会社は成長を続けています。

年商10億円ビジネスを実現する、最速成長サイクルのつくり方
矢田 祐二
株式会社ワイズサービス・コンサルティング代表取締役。年商10億円事業構築コンサルタント。儲かる10億円ビジネス構築のノウハウを提供する、経営実務コンサルタント。大学卒業後、大手ゼネコンで施工管理に従事。組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。停滞する企業と飛躍する企業の差を解明することで、明確で再現性のある理論体系を獲得する。

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