(本記事は、矢田 祐二氏の著書『年商10億円ビジネスを実現する、最速成長サイクルのつくり方』セルバ出版の中から一部を抜粋・編集しています)
大きい会社はよい会社。世の中の大手志向は満更間違いではない
素晴らしいサービスが広がり、その会社が大きくなっていくことは、社会にとっても、社員にとっても、非常に喜ばしいことです。そこから得た利益を宣伝広告や設備や人材の獲得に投資します。
更に、その「運動」は広がり、「共同体」は強靭になっていきます。
社員は自分が所属する会社に、信頼と安心を持てます。また、自分の会社がさらに大きくなっていくのは、喜びであり、幸せなことと言えます。
会社にとって「規模が大きくなっている」とは、よいサービスを提供していること、そして、それを実行するだけの能力があることの証明となります。
求職者や学生の大手志向を批判する人がいますが、それは満更間違ってはいません。これまでの立派な貢献と能力があったからこその規模と言えます。その会社の年商や社員数という規模は、十分な目安にはなります。
我々の会社も、そのようになっていく必要があります。世の中をよりよくするサービスを生み出し、もっと拡げていきます。そして、しっかり稼いで、その分をさらに投資します。より多くの優秀な社員を雇います。
サービスがよくなければ、世の中から必要とされることはありません。その状態は、世の中にとっても、社員にとっても、全く面白くない状態です。儲からないために、大きな投資もできません。絶えず自社より、大きな会社に狙われることになります。その状態に、社員は自分の生活や将来に不安を持つようになります。
我々は、すごいと言われるサービスを展開する必要があります。また、それをより大きく展開することのできる会社になる必要があります。我々が目指すのは、すごくて、大きい会社となります。
今の自社には、まだそれはないかもしれません。しかし、それを実現する過程に社員を参加させることはできます。
我々は、そのための構想を社員と共有をしていきます。そして、1つひとつその実現のための行動をしていきます。そこにこそ社員の安心もやる気も生まれます。
彼らも、それを求めています。彼らも、この壮大な運動に貢献したいと思っています。また、自分の生活をよりよくしたいとも思っています。家族に少しは贅沢をさせてやりたいとも願っています。
彼らを、パートナーとして認めることが必要です。すごい事業、大きい会社の実現のためにその力を借りるのです。
儲かる事業の構造は、必ず4階層
事業の構造は、事業定義―戦略―方針―仕組みの4階層になります。
「どのような顧客に対し、自社の特色あるサービスを提供し、何を実現してさしあげるか」という事業定義が最初にあります。この事業定義のことを、事業モデルや市場という言葉でも表現できます。
そして、その事業をどう展開するのかという戦略があります。「どのような分野からシェアを獲りにいくのか」、「どのようなターゲット層から拡げるのか」など、大局的かつ長期的に優先順位を明確にします。
その戦略の下には、多くの方針が存在することになります。取扱商品に関する方針、値付けに関する方針、在庫に関する方針、人的資源調達の方針など、すべての事柄について方針があります。
そして、その方針を実現するために仕組みが存在します。その仕組みに則って、多くの人や外注業者や設備が、生産活動に従事することになります。
事業は、この4階層によって構成されます。この事業構造をつくり運用することで、狙った顧客に設計どおりのサービスを提供することができます。
この事業構造の実現を担うものが、組織になります。組織は、1つの事業を営むために、分業を機能させることになります。「事業定義と戦略と方針づくり」こそが、縦の分業の中の経営層の主な役目となります。
そして、「各方針を仕組化すること」と「その仕組みを管理運営し、実際に成果を出すこと」が各部門の役目となります。その中心となるのが、部長や課長という管理者層です。実際にその仕組みを動かし、現場を切り盛りするのが、判断層と作業層になります。
この全体の構造ができているからこそ、よいサービスが量産できます。そして、組織が適正に機能しているからこそ、その仕組みを進化させ続けることができるのです。この事業をよくし続けることこそが、組織の役目となります。
組織が、適性に機能するためにはこの4階層が存在し、繋がっている必要があります。「どのような事業を行うのか明確である」。そして、「その展開のための戦略があること」。そして、「各施策の方針が示されること」。そのうえで、「その実現のための仕組みが機能すること」。どれかが欠けても、事業を展開することはできません。
組織が、適性に機能するためには、特に事業定義から方針までが重要になります。この事業定義、戦略、方針という『考え方』の実現のために組織は存在します。これらの『考え方』が示されることで、組織の機能が発揮されるのです。各部門や担当者はその実現のために考え行動することができます。また、連携をすることもできます。
組織を動かすために最も重要なものとは
組織を組織として機能させるためには、会社としての『考え方』をしっかり共有する必要があります。それにより、各部門は、活動の方向性を得ることができ、自分たちの役割を正しく理解することができます。また、根本となる共通の『考え方』があるからこそ、役割が異なる各部門が、一致団結することができます。
『考え方』を共有するためには、努力が必要になります。『考え方』というだけあって、それは目では見ることはできません。そのままでは、他の人と共有することはできないのです。
『考え方』ゆえに、文字で表現することになります。文字にすることで、初めて『考え方』すなわち『意思』を正しく伝えることができます。そして、それを大人数と共有することができます。
文字という形で見せたうえで、対面で説明をします。文字だけでは、そこに込める意図や強弱までは伝えられません。双方向のコミュニケーションにより、認識合わせをします。文字と対面により、初めて『考え方』の共有に至るのです。
考え方とは、過去の経験から積みあがった信念であり、価値観と言えます。また、未来に向けた方向性であり、狙いであると言えます。その過去と未来が交錯した瞬間が『今』となります。
『考え方』こそが、会社なのです。目に見えないところに、会社の実態は存在しています。社屋、設備、机、そこで動く社員、それらの目で見える部分は、会社の極一部でしかありません。
社屋や設備や机などすべては、何かしらの意味がありそこに存在しています。そこで動く社員たちは何かしらの方向性を持って動いています。
会社概要や登記簿をみれば、資本金や役員名、沿革などを知ることはできます。しかし、その情報からは、創業時の苦労や社屋建設に至る決断など、当時の事情を読み解くことはできません。そこには、多くの人の生きた軌跡や想いがあります。そして、この瞬間も『考え方』に従い、1年後、3年後に向けてすべてをつくり変えていっているのです。
会社の事業定義や戦略や方針の変更に伴い、仕組みが変わり、サービスが変わっていきます。その変化のために組織があります。その実現のために社員に協力を依頼しているのです。社員は、その会社の『考え方』に納得し、共感しているからこそ力を発揮してくれます。
登記上は会社でも、会社じゃない会社が多すぎる!
会社の『考え方』のできが悪いときには、やはり好ましくない状況になります。事業定義が見当違いであれば、売上は減ることになります。戦略で遅れれば、他社に先を越されることになります。方針を間違えたときには「売れば売るほど損をする」や「在庫が山積もり」という状況になります。
また、方針を共有できていないときに、多くの問題を抱えることになります。部門間の連携が上手くいきません。管理者が間違った判断で指示を出しています。社員は、創造性を働かせたり、自主性を発揮したりすることができません。また、その業務を何のためにやっているかがわからないために、やる気も起きません。
会社とは、『考え方』でできています。「自社はどのような特色あるサービスを提供していくのか」、「どのようにシェアをとっていくのか」、「何を重点商品とするのか」、「在庫は、何を、どれぐらい持つのか」。ここにこそ会社はあり、ここにこそ会社のノウハウや特色があるのです。この実現のための会社なのです。
しかし、残念ながら、世の中の多くの会社は、登記上は会社でも、実際には会社ではありません。『考え方』の共有ができていないために、会社でもなければ、組織としての機能を発揮することもできていないのです。ただ、その場その時を共有しているだけになっています。
いままで社長が考えたことが、現実化した結果が『今』の状態といえます。いま存在する事業も、それを支える仕組みも、職場の約束事も、いままでの社長の考え方が具現化したものです。または、流れに任せた結果なのです。そして、この先の『未来』の事業も仕組みも、社長の考え方が現実化することになります。
この先の、自社の事業定義―戦略―方針を考え、決定することが社長の役目になります。「新たな事業の特色をどこに築いていくのか」、「人口が減少する商圏の中で、誰を重点顧客とするのか」、「材料の高騰に対し価格政策はどうあるべきか」、「老朽化する設備の入替えはいつ頃するのか」。すべてを社長が、決めなければなりません。
管理者や社員に意見を求めることはできます。しかし、最終的には、1人によって意思決定がされます。『考え方』ゆえに、その人の生きざまや信念、価値観が強く反映します。大きな会社も小さな会社も、それは変わりません。ただ1人の『考え方』が、会社の『考え方』になります。
そして、その『考え方』を組織全体に行き渡らせます。管理者や社員に、その実現の協力を依頼します。採用の際にも、『考え方』を説明し、賛同する人だけに来てもらいます。銀行に対してもその『考え方』を担保に、借入を起こします。
よい未来を実現するために、全員が同じ『考え方』を持って、行動することになります。資源の限られた小さい会社だからこそ、一致団結する必要があります。熟考し選ばれた的に向かい、同じ価値観を判断軸にして、スピードを持って動くのです。
しかし、残念ながら、多くの社長は、自分の『考え方』を示していません。また、上手に伝えられていません。そのため、組織を動かすどころか、つくることでさえもできていません。社員はその能力を十分に発揮できずにいます。その結果、事業の成長も展開も遅くなっています。
考え方を明確にすることは、恐いことでもあります。社長が出した『考え方』で、すべてが決まってきます。事業が儲かるのか、会社が繁栄するのかが決まります。
そして、社員の生活のレベルも決まります。その責任の大きさに臆して、何も示さなければ、やはり平凡な会社で終わることになります。「運動体」としても、「共同体」としても、弱く、そして、小さい存在のままとなります。
社長は、事業を構成する事業定義―戦略―方針を決定し、文字にする役目があります。そして、それを使って彼らにその実現の協力を依頼するのです。それにより組織をつくることができます。社員のやる気と行動を生むことになります。この先の事業も会社も、素晴らしいものに変えることができます。
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