会社売却における退職金に関する注意点
最後に、会社売却における退職金の留意点についてご紹介します。
損金算入条件を確認する
多くの企業では、役員に支払う退職金の支給額を「役員退職慰労金規程」で定めています。会社が退職した役員に対して退職慰労金を支給するためには、株主総会の決議が必要です。しかし、役員退職慰労金規程に関しては、会社に設けられていなくても役員に退職金を支給することはできます。
しかし、それでも多くの会社がこの規程を設けている理由は、退職金額が恣意的に決められ、支給後の会社経営に悪影響を及ぼすことを防ぐとともに、役員退職慰労金を税務上妥当な範囲内に収めるためです。
会社が役員退職金をどれくらい支払うのかは、会社で自由に定められます。しかし、税務上妥当な金額を超えた部分は税務調査で否認されるため、損金算入はできません。そのため、どれくらいが税務上妥当と言える金額になるのかは、一般的に「功績倍率方式」によって判断されています。
役員の退職時の報酬月額をベースに、役員の法人の業務に従事した期間や役員の職責に応じた倍率を乗じて、以下の計算式で退職金の支給額を算定する方法。
役員退職金支給額=退職時の報酬月額×役員勤続年数×功績倍率
功績倍率は会社で任意に設定できますが、税務上妥当であるかどうかの判断は、その法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の状況などにより、総合的に判断されるため、専門家に相談しながら決めた方が良いでしょう。
資金繰りに影響が出ないように注意する
一般的にどの企業でも、役員退職金は高額となることが多いものです。そのため、退職までの期間に退職金積立などを十分に行わない状態で退職金を支払うと、会社のキャッシュフローが悪化してしまうことがあります。
こうした事態を避けるためには、役員退職金の原資をどうやって調達するのかを事前に検討し、あらかじめ積立などをしておくように心がけましょう。
終わりに
会社を売却する場合、これまで積み立ててきた分の退職金は買い手側に引き継がれるため、従業員や役員には規程通りの退職金が支給されます。また役員に関しては、会社売却の対価の一部を役員退職金として受け取ると、売り手も買い手も節税メリットが受けられるため、こうした点も考慮したうえで退職金額を決定することが大切となります。
退職金額の設定、節税効果などのシミュレーションには高度な専門知識が必要となるため、事前に専門会社の協力を得ておくことをお勧めします。
会社売却には、財務、労務、法務など専門的な判断が必要な場面が多々発生します。 会社売却に関する質問、不明点について、M&A・事業承継に精通した当社コンサルタントまでお問合せください。ご相談は無料、秘密厳守で対応いたします。