会社売却を事業譲渡で行った場合の退職金
続けて、会社売却を事業譲渡で行った場合の退職金、退職慰労金について見ていきます。
従業員退職金
事業譲渡によって会社売却が行われた場合、譲渡された事業部門で働いていた従業員は買収先へ転籍することになります。そのため、売り手側の会社をいったん辞め、その後買収先の会社と雇用契約を結び直さなければなりません。
したがって、転籍する従業員に関しては、売り手側の会社を辞めた段階で会社から退職金が支給されます。ただし、買い手側への転籍でなく売り手側の会社に残ることを希望する従業員や、事業譲渡された部門以外で働いている従業員については退職しないため、退職金が支給されることは基本的にありません。
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役員退職慰労金
役員は、一般的に事業譲渡にともない買い手側に移動することがないため、退職せず引き続き売り手側で業務に従事することになります。
そのため、ほとんどの場合役員退職金が支払われることはありません。ただし、事業譲渡にともない退職する役員がいる場合は、売り手の株主総会の決議を経たうえで役員退職金が支払われることになります。
退職金への課税
会社から支給される退職金にかかる税金についてご紹介します。役員報酬や給料、賞与などと同じように、退職金にも以下の3種類の税金が課税されます。
- 所得税
- 復興特別所得税(2037年まで)
- 住民税
ただし、役員報酬や給料などと大きく違うのは、分離課税として他の所得とは別個に税額を算出する点です。
役員報酬や給料などの給与所得は総合課税の対象となるため、他の所得と合算したうえで累進税率によって税額が算出されます。しかし、退職金は分離課税の対象となるため、他の所得とは合算を行いません。
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税率・税額の計算方法
退職所得にかかる所得税の税率は、課税所得に応じて以下のように定められています。
課税退職所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から194万9,000円まで | 5% | 0円 |
195万円から329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
330万円から694万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
695万円から899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
900万円から1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円から3,999万9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
※国税庁ホームページ「退職金と税/令和5年分所得税の税額表」をもとに作成 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/02_3.htm
また、復興特別所得税は退職所得税額の2.1%、住民税は退職所得に対して一律10%と定められています。