目次
- 4トンの平ボディトラックに特化した運送会社
- 外部から就任した新社長は44歳の働き盛り
- 新たな企業理念は「all for a smile〜すべては笑顔のために」
- 労働時間の規制強化は企業が進化するための追い風。創意工夫することで道を切り拓いていきたい
- 点呼業務でIT点呼システムの活用をスタート
- 従来の対面点呼と併用しながらシステム運用のノウハウを蓄積
- システムの活用で運行管理業務の負担を軽減。スマートフォンを通じてドライバーの顔を見ながら点呼を行うことで健康状態も確認
- ホームページとインスタグラムでありのままの姿を発信
- 2022年10月にSDGs宣言。安心:安全の取組み、環境配慮への取組み、働きやすい職場環境の整備。女性従業員の採用に力
- 運送業界が進化していく上で、ICTやデジタル機器は欠かせないツール。すべての運送業者が積極的に活用して欲しい
中型トラックによる輸送に特化し、30年近い歴史を積み重ねながらも経営者が高齢で後継者難に悩んでいた香川県さぬき市の運送会社、有限会社コムスが、第三者承継で就任した働き盛りの新社長の下、順調に業績を拡大している。運送業界の労働規制強化に臆することなく、小規模企業ならではの機動力を生かしてICTやデジタル機器を導入して活路を切り拓いている。(TOP写真:駐車場に勢ぞろいするコムスの中型トラック)
4トンの平ボディトラックに特化した運送会社
1996年設立の有限会社コムスは、4トンの平ボディトラックによる運送に特化した運送会社だ。9台の車両を所有し、取引先から預かった建材、資材、機械類を地元の四国や関西圏、首都圏など全国に運んでいる。業務領域を絞って経営資源を集中する戦略で取引先を着実に広げ、30年近い歴史を積み重ねてきた。
外部から就任した新社長は44歳の働き盛り
高齢のため引退の意向を示した前社長の後を受け、2022年6月に就任した小西亮太代表取締役は現在、44歳の働き盛り。小西社長の就任後、右肩上がりで業績を拡大しているコムスは、後継者難の企業が、意欲を持つ社外人材に経営権を委ねる第三者承継の成功事例としても注目を集めている。
就任以前、小西社長は別の企業の役員を務めていたが、古くからの知り合いだったコムスの前社長から事業譲渡を打診された。以前から独立への思いが強かったこともあり、コムスの事業引き継ぎを決断したという。「以前の仕事を通じて物流の仕事とコムスのビジネスモデルに大きなポテンシャルを感じていたんです。まさに絶妙のタイミングでお声がけをいただき、感謝しています」。さぬき市内のコムス本社で取材に応じた小西社長は柔和な表情でそう振り返った。
新たな企業理念は「all for a smile〜すべては笑顔のために」
小西社長が打ち出したコムスの企業理念は「all for a smile〜すべては笑顔のために」。就任にあたり小西社長は、「笑顔のプロ集団」としての会社の運営方針や待遇について、従業員全員と徹底的に腹を割って話し合った。その結果、すべての従業員が残留を決断してくれたという。新規採用にも積極的で従業員数は着実に増え、現在、20代から50代の8人のドライバーを含む11人が働いている。
「従業員あっての会社を念頭に、のびのびとライフスタイルに合わせた働き方をしてもらえるように心がけています。疲れやストレスをためないように何でも話せて相談しやすい環境を作ることを大事にしています」と小西社長。従業員への感謝の気持ちを心で思うだけでなく、口に出して伝えるようにしているという。
労働時間の規制強化は企業が進化するための追い風。創意工夫することで道を切り拓いていきたい
複合機、NAS(ネットワーク接続型ストレージ)などの設備は社長就任時に新たに導入した。機種は、使いやすさ、性能、アフターサービスを重視して決定したという。制服も機能性とデザインにこだわったものに一新した。
小西社長は、2024年問題といわれる運送業界における労働時間の規制強化を「企業が進化するための追い風」と考えるようにしている。「労働時間への強い規制は従業員の立場から見ればありがたい話です。後ろ向きに考えるのではなく、創意工夫することで道を切り拓いていきたい。従業員の負担を減らす上で、ICTやデジタル機器は大きな役割を果たしてくれるように思います」と小西社長は話す。
点呼業務でIT点呼システムの活用をスタート
現在、事故を防ぎ、ドライバーとのコミュニケーションを確保する上で重要な点呼業務でICT、デジタル機器の活用を始めている。
点呼は、運行管理責任者がドライバーを対象に乗務前と乗務後、車両点検の実施状況、酒気帯びの有無、病気・疲労などの有無について報告を求め確認する業務だ。二泊三日以上の長距離輸送の場合は、途中で一回以上、電話などで中間点呼を行わなければならない。コムスは原則、乗務前と乗務後に対面で点呼を行い、記録は紙の書類で残している。
車両ごとに搬送距離に応じて出発時間や到着時間は異なる。運行管理責任者は、各ドライバーの点呼を個別に行わなければならないため、勤務時間が不規則になりがちだ。早朝、深夜に対応しなければならない時もある。
従来の対面点呼と併用しながらシステム運用のノウハウを蓄積
運行管理責任者の負担を軽減し、点呼業務を効率化するために2023年4月に導入したのがIT点呼システムだ。現在、システムは今後の本格活用に向けてノウハウを蓄積する試用の段階で、従来の対面点呼と併用している。
IT点呼システムを使えば、物理的に運行管理責任者とドライバーが対面しなくてもWeb会議のように画面を通じて点呼を行うことができる。導入したシステムは、対面点呼、電話点呼、スマートフォンを使った遠隔地からのIT点呼など様々な点呼に対応できる機能を持つ。アルコール検知器と連動することで検知したデータをそのままクラウドストレージに取り込むことも可能だ。点呼した時間と場所などが自動的に記録されるので紙の書類への手書きと比べて管理の利便性と信頼度も高まる。
システムの活用で運行管理業務の負担を軽減。スマートフォンを通じてドライバーの顔を見ながら点呼を行うことで健康状態も確認
ドライバーはスマートフォンにアプリをインストールすることでシステムを活用することができる。「操作が非常に簡単なので年配のドライバーでもすぐに使い方を覚えることができました。質を確保した上で効率的に点呼を実施できる手応えを感じています」と森本紘輔専務取締役は話す。
「スマートフォンを通じてドライバーの顔を見ながら点呼を行うことができる機能は、電話点呼と比べ、より細かくドライバーの健康状況などを確認することができるので非常に役立ちます。記録も自動的に保存できるので手間がかからないのがありがたいですね。今後、点呼をシステムに一本化できれば、運行管理の業務時間を4分の1程度削減できそうです」と森本専務はシステム活用の効果について話した。
それだけではない。今後、新型コロナウイルスのような感染症が蔓延(まんえん)した場合、従業員同士の接触を回避することができる。クラウドでデータを保存できるので、点呼簿を物理的に保管する必要もなくなり、オフィスのスペース有効活用にもつながる。
ホームページとインスタグラムでありのままの姿を発信
コムスは2023年1月にホームページを立ち上げた。インスタグラムでの情報発信にも力を入れている。「情報を積極的に発信して事業内容や理念を多くの人に知っていただきたいと思い、ホームページを立ち上げました。仕事を探している人への情報も提供しています」と小西社長。ホームページを見て求人に応募してくる人も多いという。SNSには和気あいあいとした忘年会、慰労会、バーベキューパーティーなどの様子を写真付きで掲載している。「変に飾らず、ありのままの会社の姿を発信するようにしています」と森本専務。
2022年10月にSDGs宣言。安心:安全の取組み、環境配慮への取組み、働きやすい職場環境の整備。女性従業員の採用に力
コムスは国連が提唱する持続可能な開発目標、SDGsに賛同し、2022年10月にSDGs宣言を行った。安心・安全の運送、環境配慮、働きやすい職場環境の整備、地域貢献の面でSDGsの行動目標達成に向けた取り組みを進めている。 「SDGsの行動目標は、会社の理念に深くつながっていると実感しています。整備の充実を通じて、車両の寿命を伸ばし、環境保全に貢献することもできますし、運送会社だからこそできる様々な取り組みに挑戦していきたい。ICTやデジタル機器を活用することもSDGsの目標達成の大きなポイントになると思っています」と小西社長は話す。今後、女性従業員の採用にも力を入れていきたいという。
運送業界が進化していく上で、ICTやデジタル機器は欠かせないツール。すべての運送業者が積極的に活用して欲しい
「運送業界が進化していく上で、ICTやデジタル機器は欠かせないツールになっていくと感じています。すべての運送業者が積極的に活用すれば、大きなプラス効果を社会に与えることができるはずです」と小西社長は話す。新たな展開として運送業だけでなく、製造業への進出など事業の多角化も視野に入れている。ICTやデジタル機器がその挑戦を後押しすることは言うまでもない。
企業概要
会社名 | 有限会社コムス |
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本社 | 香川県さぬき市長尾西904番地1 |
HP | https://coms-transport.com |
電話 | 0879-26-9667 |
設立 | 1996年8月 |
従業員数 | 11人 |
事業内容 | 中型トラックでの短・中・長距離輸送 |