短焦点プロジェクターやパソコンを活用し、学童から社会人まで幅広く教育 丸の内ビジネス専門学校(長野県)

目次

  1. 長野県で初めて留学生を受け入れた国際色豊かな専門学校
  2. コロナ禍で減った留学生を学童コースの新設でカバー
  3. 学童の登下校をチェックし保護者に連絡するシステムを導入。教育付き学童コース「スーパーキッズ マルノウチ」の充実を図る
  4. 校舎が3号館まであり、連絡したい時にどこにいるかわからない状況。教員との連絡強化にスケジュール管理ソフトの導入を検討
  5. 狭い教室に合わせて単焦点プロジェクターを設置
  6. 女性リーダー育成プログラムをスタート
中小企業応援サイト 編集部
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国宝の松本城を窓から望める松本市内の中心部に、学校法人秋桜会丸の内ビジネス専門学校の校舎が建っている。国宝が見える学校は日本広しといえどもなかなかなく、「海外から勉強に来ている学生たちに好評です」と、学校法人秋桜会の理事長で、丸の内ビジネス専門学校の校長も務める内川小百合氏も嬉しそうに話す。こうしたロケーションの良さと、海外からの留学生を早くから受け入れてきた開放的なスタンスに引かれて、タイやネパール、スリランカ、モンゴルといった様々な国から、留学生が信州松本の地へとやって来ている。(学校法人秋桜会丸の内ビジネス専門学校の前に立つ内川小百合理事長/校長)

長野県で初めて留学生を受け入れた国際色豊かな専門学校

短焦点プロジェクターやパソコンを活用し、学童から社会人まで幅広く教育 丸の内ビジネス専門学校(長野県)
留学生が出身国から持ち込んだ小物など

学校法人秋桜会丸の内ビジネス専門学校は「多い時で33ヶ国から生徒を迎え入れていました」(内川小百合校長)というから、ちょっとした国際会議並みだ。校舎内を歩くと、海外からの留学生がおみやげとして持ち込んだ現地の小物が飾られていて、国際色を醸し出している。留学生の受け入れ先となっているのは主に国際関係学科日本語コースで正しい日本語の習得に努め、卒業後に同科の日本語教師養成コースやビジネス科へと進んで日本での就職を目指す生徒もいるという。

もっとも、この3年間は新型コロナウイルス感染症の流行で国際交流が途絶え、生徒を迎え入れることができなかった。「20人が入る寮も借り上げで用意しましたが、誰も入居しなくなったため返してしまいました」(内川校長)。生徒がいないからといって教員を減らすことは雇用の問題もあって難しい。コロナが収まって留学生が増えた時に、教員が足りなくなることも避けたい。

コロナ禍で減った留学生を学童コースの新設でカバー

短焦点プロジェクターやパソコンを活用し、学童から社会人まで幅広く教育 丸の内ビジネス専門学校(長野県)
天板を閉めるとパソコンを収納できる教室の机

そうした状況で、事業を継続させるために始めたのが学童コースだ。主に小学生を対象に放課後の児童を受け入れ、英会話やプログラミング、ダンスといった様々なことを学んでもらえるようにした。「資格やスキルを持った教員が大勢いたことも、コースの新設に役立ちました」(内川校長)。コロナ禍での雇用対策と新規事業への進出が、うまくかみ合ったケースと言えそうだ。

共働きの家庭も多いからか、「お母様方に『学童コースの設置はとても助かる』と言ってもらえています」(内川校長)。当初はコロナで小学校が休校となったため無料で預かっていたが、教える内容をしっかりとしたものにして有料化し、すべて英語で教えるインターナショナルコースも創設した。小学校の授業に英会話やプログラミングが入ってきているが、大勢の児童に合わせた画一的な授業内容になりがちだ。同校なら自分のペースで学ぶことができ、小学5年生で英検3級が取得できるくらいになるそうだ。プログラミングも小学4年生くらいでこなせるようになるというから、預ける保護者も安心だろう。

学童の登下校をチェックし保護者に連絡するシステムを導入。教育付き学童コース「スーパーキッズ マルノウチ」の充実を図る

学童コースの利用者が増えてきたことで、同校では児童が登下校する際にカードでチェックを行う仕組みを取り入れた。子供が確実に学童に行っているか、いつ帰るのかを保護者がわかるようにするためだ。留学生の回復を急いではいるが、まだまだコロナの影響が残る状況で先が見通せない中、学童コースの充実が経営面でも重要となっている。「今は40人くらいの児童がいますが、100人くらいまでは増やしたいと考えています」(内川校長)。ICTによって安心感を持って通わせられる学童コースの充実を考えている。ちなみに現在の教育付き学童コース「スーパーキッズ マルノウチ」http://www.marubi-kids.jp/ は利用者に非常に好評のようだ。

専門学校の方では、こうしたカードでチェックする形の出欠管理を行う考えはないという。理由は、「生徒の間のコミュニケーションを深めてもらいたいと考えているからです」(内川校長)。同校では、日直当番の学生が、名簿に従って名前を呼んで出欠を確認する方法をとり続けている。ニックネームで呼び合うことが多い海外の留学生が、本当はどのような名前なのかを名簿で確認し、顔と名前を一致させる。相手のことをより深く知ることが、一層のコミュニケーション促進につながると期待する。便利なICTといえども、目的を考えて使い分ける判断が大切だ。

校舎が3号館まであり、連絡したい時にどこにいるかわからない状況。教員との連絡強化にスケジュール管理ソフトの導入を検討

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利用者(受講生・職員)に合わせたICT導入を進める内川校長

現在、必要としているのが教員間のコミュニケーション促進、情報管理のためのセキュリティ強化、そして教育に役立つツールの導入だ。「3号館まである広い校舎のあちこちに教員が散らばってしまうため、誰かに連絡をとりたい場合、どこにいるのかわからないことが増えてきました」(内川校長)。現在は誰もがアクセスできるExcelのワークシートに連絡事項を書き込んでもらう形をとっているが、一人ひとりのスケジュールを把握することが難しいという。

内川校長は、専門学校の経営を見つつ、キッセイ薬品工業や長野銀行といった外部の企業で社外取締役を務め、企業経営に関する講演などに招かれることも多い。Excelのワークシートでは半日開かないだけで、どこに誰の情報があるかわからなくなってしまうという。「スケジュール管理ソフトのようなものを導入して、誰がどこにいるかを一瞬でわかるようにできれば、連絡もスムーズに行えるのではないかと考えています」(内川校長)。効率的に連絡を取り合える状況を作ることで、人員の配置も行いやすくなり、課題もすぐに吸い上げて解決できるようになる。目下の課題として早急に取り組んでいく考えだ。

狭い教室に合わせて単焦点プロジェクターを設置

短焦点プロジェクターやパソコンを活用し、学童から社会人まで幅広く教育 丸の内ビジネス専門学校(長野県)
教室で使用している単焦点プロジェクター

セキュリティについては、教員が使うネットワークと、学生がアクセスできるネットワークを別にしつつ、教員のネットワークには部外者からのアクセスを排除するセキュリティ機能を整えた。生徒や児童の個人情報を大量に扱う学校という施設に不可欠のシステムとして導入した。教育に役立つツールとしては、「決して広い教室ばかりではありませんから、生徒に被らないよう真下から投映できる短焦点プロジェクターを導入して、授業に使っています」(内川校長)。

天板の下にパソコンがすっぽりと収まる机を教室に導入して、社会人コースのパソコン講座や児童向けのプログラミング授業に使えるようにするなど、パソコン教育への活用にも積極的に取り組んでいる。「今気になっているのはAI(人工知能)の活用ですね。定型の文章を作成したり、外国語を翻訳したりといった作業にAIが利用されようになることは確実ですから」(内川校長)。そうした時代に向けてAIを使いこなせる人材の育成なり、事業へのAIの活用なりを考えていこうとしている。

女性リーダー育成プログラムをスタート

教育事業では、社会人を対象にした教育プログラムの拡充に努めている。その一つが「女性リーダー育成プログラム」だ。各企業から次代を担う女性のリーダー候補を募り、リーダーに必要な経営者目線での考え方を磨いたり、所属企業がそれぞれに抱えている課題について、解決方法を皆で考えたりして個々の"経営力"を高めて行く。

「期間は半年間で、月に2回ある登校日では、それまでの期間に考えたことを発表してもらい、皆で視野と視座を広げます。最初は『自分がリーダーなんて』と思っている人でも、3ヶ月くらい経つと目の色が変わって、自分の会社で改革したいことあるなら、こうすれば良いのではといった姿勢が生まれてきます」(内川校長)。ドイツの総合化学企業BASF元副社長の瀬畑一茂氏が経営メンターとしてアドバイスや助言を行い、内川校長自身もエグゼクティブコーチとして参加者を導く。

6ヶ月後には、自ら積極的に取り組んでいくという経営者に欠かせない考え方を持つようになって企業に戻る。いずれは、さらに次代の女性リーダー育成にも取り組むようにもなるだろう。「そうした女性リーダーのネットワークを作りたいと考えています」(内川校長)。

短焦点プロジェクターやパソコンを活用し、学童から社会人まで幅広く教育 丸の内ビジネス専門学校(長野県)
丸の内ビジネス専門学校のシンボルとも言える英文タイプライター

同校自体がもともとは、戦後間もない1948年にタイピストの養成学校として発足し、官公庁や民間企業に人材を送り出して女性の社会進出を後押ししてきた。そうした創業の精神を受け継ぎつつ、今の時代に必要とされている女性リーダーの輩出に取り組む。こうした信州での取り組みがやがて全国に広がれば、女性リーダーが少ないと国際的に言われている日本も大きく変わっていきそうだ。

短焦点プロジェクターやパソコンを活用し、学童から社会人まで幅広く教育 丸の内ビジネス専門学校(長野県)
丸の内ビジネス専門学校

企業概要

法人名学校法人秋桜会丸の内ビジネス専門学校
所在地長野県松本市城西1-3-30
HPhttps://www.marubi.ac.jp/ (※ビジネス専門学校のHPです)
電話0263-32-5589
設立1948年
従業員数31名
事業内容専門学校運営/企業向け研修事業/学童コース運営等