独立して18年。おもてなし精神とICTによる社員の働き方改革で順調に不動産事業を拡大 ハートフルホーム(群馬県)

目次

  1. スピードと丁寧な営業活動で顧客を獲得。アパート管理に強み
  2. 音声ガイド付き電話導入で、社員のストレス解消と業務効率が1.2倍に向上
  3. 「帯」替えシステムで社員のストレスも解消
  4. アパート管理2,000世帯が目標。後継者育成にも着手
  5. 対面での商談がほとんど。ICTを積極的に活用
中小企業応援サイト 編集部
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「心いっぱいのおもてなしをモットーに、ここまで経営も順調にきている」。こう話すのは、前橋市で不動産業を営む有限会社ハートフルホームの清水伸樹代表取締役だ。独立して1人で始めた事業だが、アパート管理を中心に、土地・建物の賃貸・売買・仲介などを総合的に扱う。不動産業ならではの電話による多数の問い合わせ対応も、音声ガイダンス付きビジネスフォンの導入などで業務効率化を図った。清水氏は「5年後にはアパート管理世帯数を倍増させたい」と意欲的だ。(TOP写真:「経営は順調にきている」と話す清水社長)

スピードと丁寧な営業活動で顧客を獲得。アパート管理に強み

別の不動産会社に勤務していた清水氏は、もともと独立志向を持っていたこともあり、2005年独立を決意。以前から手掛けており、当時は競合相手も少なかったアパートの建築企画を中心として、1人で事業を始めた。しかし、すぐに結果が出たわけではなかった。不動産業界では勤めていた会社の顧客を引き連れて独立する場合もあるというが、清水氏はこれを潔しとせず、ゼロから始めて1件1件訪問する営業方法だった。ホームページも早い時期に制作し、チラシ配布なども積極的に展開したが、それでも独立から半年ぐらいは契約が実らず、「会社の金庫に5万円しか入っていなかった時もあった」という。

しかし、「約3年間は休まずに働いた」という効果もあって、口コミで不動産関連の相談に乗る機会が増え、1件の売却案件を契約したことで、口コミで評判が広がり、軌道に乗ったという。その要因は、例えば他社なら不動産登記などの調査に1週間かけていたものを「時間のやりくりをつけて」2日間で済ませるスピードの速さに加え、ローラー作戦のような営業により知り合いが増え、自社に対する安心感を獲得できたことだという。一方で、不動産売買契約などで必要な場合には、「顧客に2時間ぐらいかけて丁寧に説明を尽くす」という他社にないサービスも提供した。

その結果、後発で参入したにもかかわらず、現在はアパート管理世帯数が約1,000件となり、前橋市で順調に管理数を伸ばしている。管理案件をここまでに増やすことができたのは、空室がある既築のアパート管理の案件があった場合、オーナーには「3ヶ月で必ず満室にする」と断言したからだ。もちろん、立地や家賃水準などを事前に調査したからこそだが、当時としては珍しかった温水洗浄便座を各室に設置するなどのアイデアもあって、成約を増やしていった。その実績ぶりから、アパート建設に融資している銀行からの紹介や口コミで評判となったことも大きかった。

独立して18年。おもてなし精神とICTによる社員の働き方改革で順調に不動産事業を拡大 ハートフルホーム(群馬県)
店頭での顧客への物件説明は丁寧さを心掛けている

音声ガイド付き電話導入で、社員のストレス解消と業務効率が1.2倍に向上

現在では社員が13人まで増えたものの、管理世帯数や不動産売買の増加などにより、相談や問い合わせだけでなく、各種商品やサービスの売り込みなど、会社にかかってくる電話件数が多く、社員の時間がとられることが悩みだった。中には「話し相手が欲しかったのか、社員が1時間程度も拘束されることもあった」という。これに対応し、2022年9月には音声ガイダンス機能付きのビジネスフォンに切り替えた。電話がかかると、「用件ごとの番号を押してください」「品質向上のため録音しています」などの自動音声による案内が流れる仕組み。

これにより、社員につながる電話の件数は10分の1に減り、「業務効率は1.2倍に向上した」。売買や賃貸などの機会を逸している可能性もあるが、それを補って余りある効果があるという。何らかのトラブルを抱えている顧客は、ガイダンスに従って社員につながり通話しているほか、不動産オーナーなどからの業務上重要な電話は、「自分の携帯電話にかかってくるから問題ない」という。

独立して18年。おもてなし精神とICTによる社員の働き方改革で順調に不動産事業を拡大 ハートフルホーム(群馬県)
「賃貸住宅の紹介には女性が向いている」と、女性社員が多いオフィス

「帯」替えシステムで社員のストレスも解消

ビジネスフォン導入に先立ち、不動産業界ならではの非効率さも解消した。中でも売買物件では複数の会社間でFAXでやり取りすることが多く、チラシなどには扱い業者の社名、住所、電話番号などを印した「帯」と呼ばれる部分がある。他社のチラシを自社用にするには、この帯を変更する必要がある。

従来は帯の部分を自社用に切り替えるため、両面テープを使って自社用の帯を切り貼りするなど煩雑な作業をしており、「社員のストレスにもなっていた」。そこで、複合機に簡単切り替えソフトウェアを導入。自社の帯を登録すれば、タッチパネルの操作で簡単に切り替えられ、貼り付け位置も自由に変更できるようになり、効率化に役立った。

アパート管理2,000世帯が目標。後継者育成にも着手

独立して18年。おもてなし精神とICTによる社員の働き方改革で順調に不動産事業を拡大 ハートフルホーム(群馬県)
2022年9月に購入した自社オフィスの外観

順調に業容を拡大してきた同社は、2022年9月には現在の社屋を購入して移転し、新たなスタートを切った。清水氏の新たな目標は、「5年後にはアパート管理世帯を2倍の2,000世帯に増やすこと」という。新型コロナウイルスの影響で不動産の売買は停滞傾向となったが、アパート管理は管理料が安定収入になるため、管理案件の増加に注力する。会社移転に伴い、立地条件も良くなり、飛び込みの顧客が増えるなど知名度も上がってきたことなどが新たな目標設定の背景にある。

もう一つの課題は、「後継者を育てること」という。清水氏自身はまだ52歳と若いが、不動産売買に比べ手間がかかるアパート管理を強化するため斡旋(あっせん)力の強い企業にするためにも、若い力が必要と感じている。後継者候補としてすでに目星を付けている社員もいるほか、外部からスカウトする可能性も視野に入れている。

営業面での課題は、「最近は、営業の電話に出ない顧客が増えている」ことだ。すでにLINEを使って個々の顧客とやり取りをしているものの、LINEで一斉送信できるようなシステムはコスト面に難があるという。清水氏は常に、ICT技術を使って課題を解決できないかと考えている。

対面での商談がほとんど。ICTを積極的に活用

2022年5月には、宅地建物取引法が改正され、不動産資料、契約書、重要事項説明書などの書類に押印の省略が不要となり、部屋探しから契約までがオンライン化が可能となった。これについては「リモート商談でも対応できる」と顧客に説明しているが、当面は「対面で商談して契約する人がほとんど。実際に会って商談することで信用度も測れる」としている。

実は、清水氏は新しもの好きという。賃貸物件などを360°カメラで撮影してオンライン内見や広告として利用するサービスを導入したほか、商談用のタブレット端末、さらに顧客用のパソコン端末を配置するなど、ICT機器はいち早く導入してきた。今後も有用なシステムなどがあれば、積極的に採用して業務拡大と効率化を図っていく方針だ。

独立して18年。おもてなし精神とICTによる社員の働き方改革で順調に不動産事業を拡大 ハートフルホーム(群馬県)
社屋の前で話す清水代表取締役

企業概要

会社名有限会社ハートフルホーム
本社前橋市国領町2-23-4
HPhttp://heartfullhome.jp
電話027-212-8911
創業2005年
従業員数13人
事業内容 土地・建物の賃貸・売買・仲介、土地・アパート・建物の管理、リフォーム企画