ECサイトを運営するにあたって広く活用されているのがWEB広告です。
WEB広告によってアクセス数がアップすると、より売上を伸ばせるチャンスがあります。では、WEB広告はどのように活用すればいいのでしょうか。
この記事では、ECサイトに活用すべき6つのWEB広告について、概要、特徴、運用方法を解説します。
目次
日本におけるWEB広告の概要・変遷
はじめにWEB広告の概要と変遷について紹介します。WEB広告とはWEBを活用した広告のことです。かつて、インターネットが普及する前はテレビ・新聞・雑誌などをはじめとしたオフライン広告しかありませんでした。
インターネットが徐々に普及し始めた1996年ごろにバナー広告が誕生しました。当時のバナー広告とは、ボタン形式の枠に「純広告」の形態のみでした。
また、メール広告についてもこの時期にできました。その後、1999年ごろからスタートしたのが成果報酬型のアフィリエイト広告です。
アフィリエイト広告では、Webサイトを通して対象ページにランディングすると、成果として報酬が支払われる仕組みを採用しています。これは今でも変わりありません。2002年ごろには、検索エンジンに出稿するリスティング広告が誕生して、インターネット広告が多様化していきます。
その後、2008年ごろからリターゲティング広告が採用され始めました。この時期には、複数のWebサイトを媒体として集めて広告の配信を可能にするアドネットワークの仕組みも誕生しており、大きな転換期を迎えたといえます。
現在ではリスティング広告のほか、画像・動画といったディスプレイ広告なども主流となっています。検索エンジンの自動学習によって、効率よく広告を出せる仕組みも広がっています。またSNSの発達によってSNS広告が誕生しました。
以上のように、マーケティング手法とテクノロジーの進歩に伴い、さまざまなインターネット広告が生み出されました。従来のテレビや新聞などのメディアによるマス広告では不可能であった、細やかなターゲティングが可能な広告手法として進化し続けて、現在に至ります。
マス広告とWEB広告の違い
WEB広告と似たものとして、マス広告があります。マス広告とWEB広告の違いとしては、以下のような点が挙げられます。
項目 | マス広告 | WEB広告 |
特徴 | ●テレビやラジオ、新聞、雑誌などを用いて、広範囲なターゲットにメッセージを伝える広告手法 ●一度に多くの方にメッセージを伝えられるのがメリット ●明確なターゲティングができないのがデメリット ●ブランド力の向上が見込める反面、製作コストは高くなりがち |
●インターネット上のWEBサイトやSNS、動画プラットフォームなどで表示される広告 ●ターゲットを絞って広告を出稿できる ●データを取得・分析しやすい ●予算に応じて表示回数などをコントロールしやすい点が魅力的 |
それぞれにメリットとデメリットがあり、最適な方法を取り入れる必要があります。
マス広告との組み合わせ方
マス広告とWEB広告には、それぞれに強みがあります。具体的には、マス広告の場合は知名度を向上させるのが得意で、WEB広告の場合は購買を促すために活用されます。
この両者の強みを活かして、うまく組み合わせることで効果を最大化させることが可能です。たとえば、テレビCMで紹介した商品について、WEBサイトでより詳細を紹介する方法があります。また、新聞・チラシ広告にQRコードを掲載して、キャンペーンサイトに流入してもらう方法もよく見られます。
ただし現実問題として中小のECサイトがマス広告を展開するのは予算上難しいものです。基本的にはWEB広告を用いて認知拡大・購買促進を目指して集客するとよいといえます。
ECサイトがWEB広告を活用する5つのメリット
ECサイトがWEB広告を活用することで、主に以下5つのメリットがあります。
●マス広告に比べてコストパフォーマンスが高い
●コンテンツマーケティングに比べてスピード感が早い
●採算が合わなければいつでもやめられる
●データ分析がやりやすい
●商品に直結する(動線がひきやすい)
各メリットについて、詳しく解説します。
1.マス広告に比べてコストパフォーマンスが高い
WEB広告の場合、マス広告と比較して圧倒的にコストパフォーマンスが高くなります。
自社の予算に応じて表示回数などをコントロールしやすいのが特徴です。また、かけたコストを容易に分析可能で、また設定によってはコンバージョンに応じて費用を支払えるので、費用対効果を読みやすいのも魅力です。
2.コンテンツマーケティングに比べてスピード感が早い
ECサイトにおいては、まずはサイトに訪問していただかなければ売り上げにつながりません。そこで、集客が必須となります。
広告以外の主な集客方法として「コンテンツマーケティング」があります。この手法はすぐには結果が出ません。まずはメディアの視聴数を伸ばして知名度を高める必要があります。
その点、WEB広告を導入すれば、知名度がなくてもユーザーを集められるので、運用を開始してすぐに結果が出やすいのが魅力です。
3.採算が合わなければいつでもやめられる
WEB広告の場合、各プラットフォームごとに管理画面があり「費用」「コンバージョン」を確認できます。データをもとに、広告の配信結果を監視することで「撤退ライン」を設定しやすいのはメリットです。もし採算が合わない場合は、すぐに止められます。
4.データ分析がやりやすい
先述した通り、WEB広告を管理するシステムでは、各WEB広告ごとに管理画面があるのが一般的です。管理画面上で、費用対効果をチェックできます。
このデータを分析することで「どの広告で大きな成果を上げているか」や「成果が発生していないのか」を把握することが可能です。その結果、効果につなげるための改善策を論理的に考えられます。より効率よく売上アップにつながる施策を検討できます。
5.商品に直結する(動線がひきやすい)
WEB広告の場合、広告から商品まで導くための動線が引きやすいメリットがあります。例えばアパレルの場合、商品の写真をプロモーションすることで、ユーザーは即時的にクリックして、商品ページを閲覧できます。
途中離脱を防ぐ効果があり、より売上に繋げるチャンスが広がるのです。
自社の商材に適したWEB広告を選ぶ際のポイントは3つ
自社で取り扱う商材に適したWEB広告を選ぶ際には、以下3つのポイントを意識する必要があります。
●広告にかける予算
●商品やサービスのターゲット
●出稿する目的
各ポイントについて、詳しく解説します。
1.広告にかける予算
WEB広告の場合、種類によって広告費の使い方が変化するのが一般的です。以下の広告については、主に顕在層をターゲットとする関係上、費用対効果は高くなります。
●リスティング広告
●リマーケティング広告
●SNS広告
ほかにも、発生した成果に応じて報酬が発生するアフィリエイト広告や、基本的に広告コストが不要なメールマガジンもコストをおさえて運用できます。
逆に、潜在層に対してアプローチする場合や、ブランドの認知向上などに使用されるディスプレイ広告は、使い方によって多くの費用がかかるものです。
はじめに「広告にかける予算」を明確にしましょう。そのうえで利用すべきWEB広告を決めることが重要です。
2.商品やサービスのターゲット
提供する商品やサービスのターゲットとなるユーザーを事前に明確にしましょう。そのうえで最適な広告配信先を選ぶのがおすすめです。
ターゲットとしては「年齢・性別・職業」といったデモグラフィックデータはもちろん「顕在層と潜在層」も意識しましょう。顕在層とは「すでに商品やサービスを認知していて自分の購買ニーズを意識している層」です。一方で、「商品やサービスを知らずに自分のニーズに気づいていない層」を潜在層と呼びます。
例えば顕在層をターゲットとする場合は、リスティング広告を提供するのがベターです。逆に、潜在層向けとしては、認知拡大を目的としたディスプレイ広告等を採用するとニーズの顕在化を促せます。
以上のように、訴求したいターゲットに対して、最適な広告を選定できるかが鍵となります。
3.出稿する目的
WEB広告を利用する目的としては「商品やサービスの販売個数を高めること」とするケースが多いです。しかし新しくECに参入した場合などは「商品の知名度アップ」や「ブランドイメージの強化」を目的とする場合もあります。
以上のように、出稿する目的を明確にすると、最適な広告手法を選びやすくなります。
ECサイトに活用すべき6つのWEB広告
ECサイトにおいて、ぜひ活用したいWEB広告として、特に以下6つの広告がおすすめです。
●Googleショッピング広告
●リスティング広告(検索連動型広告)
●アフィリエイト広告
●リターゲティング広告
●SNS広告
●メールマガジン広告
各広告の詳細は、以下のとおりです。
1.Googleショッピング広告
Googleショッピング広告は、EC事業者がはじめに取り組むべき広告です。Google検索結果に掲載される広告であり、特定の商品やサービスに対して、画像、価格、在庫状況などを掲載できます。
Google 広告のショッピングキャンペーンを使用して配信することになり、検索キャンペーンを配信中のアカウントでもテキスト広告とは別で掲載可能です。すでに検索している時点で興味がある潜在層に対してアプローチできるため、費用対効果の高い広告となります。
2.リスティング広告(検索連動型広告)
リスティング広告とは、検索連動型広告とも呼ばれている広告です。Google・Yahooなどの検索エンジンの検索結果画面に掲載される広告を指します。テキスト形式で表示される広告です。
ユーザーの検索によって出現するため、既に商品やサービスに興味がある潜在層に対してダイレクトにアプローチが可能です。SEOと比較しても、即効性と柔軟性が高いことで知られており、すぐに広告の効果を得たい場合におすすめです。
3.アフィリエイト広告
アフィリエイト広告とは、日本語では成果報酬型広告と呼ばれている広告の種類です。
通常の広告では、広告が表示された時点で広告費が発生するのが一般的です。ただし、アフィリエイト広告の場合は表示されるだけでは広告費が発生しません。また、バナーなどをクリックしても報酬が発生せず、広告をクリックしたユーザーがそのまま遷移先の商品を購入したり、資料請求をした時点で費用が発生します。
広告主からすると、コンバージョンが発生して初めて報酬を払うことになり、費用対効果が高い特徴があります。
4.リターゲティング広告
リターゲティング広告とは、自社ECサイトにアクセスしたユーザーに対して、サイトから離脱した後に追跡して広告を表示させる広告の種類です。
一般的に、サイトを訪問した後にコンバージョンが発生するのは10%未満です。9割近くの離脱したユーザーに対してアプローチできるようにリターゲティング広告が活用されています。
リターゲティング広告の最大のメリットは、コストパフォーマンスの高さが挙げられます。一般的に、リピーターはコンバージョン率が上がる傾向にあり、それを自然に促せるのが魅力です。
5.SNS広告
SNS広告とは、X(旧Twitter)やFacebook、Instagram、YouTubeなどのプラットフォームに対して配信する広告のことです。
Facebook、Instagramは同じ管理画面を利用します。
SNS広告の場合、ユーザーがSNSに登録した時点での情報や、その後の利用状況に応じて細やかなターゲティング設定が可能となります。
SNSは、既に生活に欠かせないツールとなっており、多くのユーザーが使用しています。そのSNSに広告を掲載すれば、多くの目に触れる機会が生まれる形です。SNS広告の場合、画像だけでなく動画広告も提供しやすいメリットがあります。
6.メールマガジン広告
メールマガジン広告とは、メールマガジンの発信者に対してメール記事内に広告の出稿を依頼して、購読者に対して広告を届ける方法です。自社のメールマガジンではなくメールマガジンの運営元が発行しているものに広告を掲載させる方法を指します。
すでに多くの購読者がいる運営母体を通じて、特定カテゴリなどの広告が表示されることになります。メールマガジン広告の場合、発信者がMA(マーケティングオートメーション)等のデータ取得機能を入れていれば、開封数・リンククリック数などのデータを取得できます。
ECサイトにおけるWEB広告で成果を上げる6つのポイント
ECサイトにおけるWEB広告で成果を上げるためには、以下のポイントを意識してください。
1.ECサイト自体の設計を考えてCVRを高める
まずは広告をスタートする前に「ECサイトのデザインがCVRを高められるように構築されているか」を確認してください。
事前にECサイトが機能していなければ、WEB広告によってECサイトに流入してもらえたとしても離脱してしまい、効果につながりません。
サイト設計・デザインをしっかりと考えて、流入したユーザーが購買しやすいUI・UXを構築することを事前に行いましょう。
2.成果指標を設定する
広告に対する、成果指標を設定して成果が上がっているのかを確認することが重要です。成果指標として特に重要とされているのが、注文1件を獲得するためにかかったコストを表すCPOです。
広告を開始する前の段階で、事前に上限のCPOを設定することで、想定の利益を下回る広告は停止するなどの判断ができます。
上限CPOは、LTVに粗利率をかけて算出します。
3.カスタマージャーニーに合わせた手法を選ぶ
カスタマージャーニーに合わせた手法を選ぶのも、WEB広告で成果を上げるために重要なことです。認知目的なのか、購買目的なのか、カスタマージャーニーのどの位置にいる顧客にアプローチするかを決めることから始めます。具体的には、以下のような形で最適なアプローチを取ってください。
ユーザー層 | 最適なアプローチ |
顕在層 | リスティング広告、リターゲティング広告、ショッピング広告 |
準顕在層 | リスティング広告、ディスプレイ広告、SNS広告、純広告、アフィリエイト広告 |
潜在層 | 動画広告、アプリ広告 |
低関心層 | 費用対効果を考えて除外 |
4.ABテストによる最適化を図る
WEB広告を掲載する場合、ABテストによってどの方法が最適なのかをチェックすることが重要です。ABテストでは、以下の3つをテストするのが一般的です。
●キャッチコピー
●写真
●デザイン
また、ABテストでは変数を1つだけに絞ることがポイントとなります。さらに、特定のターゲットに絞ったキャッチコピーにするとクリック率が上がります。
5.施策を組み合わせる
マーケティングの施策では、全体を俯瞰することが重要です。そのため、ユーザーが商品やサービスを利用するまでのカスタマージャーニーをイメージして、WEB広告で不足する部分は、ほかの施策で補う対応を図るのが効果的です。
広告はあくまで集客方法の1つです。そのうえで「リピーター獲得のためにメルマガを発信する」「ゆくゆく広告費を削減するためにコンテンツマーケティングを実行する」など、施策を組み合わせましょう。
6.広告クリエイティブに一貫性を持たせる
広告クリエイティブとECサイトの内容にズレがある場合、ユーザーの信頼度が下がります。ECサイトのトップページやカテゴリページ、商品ページなどの変遷先と、広告クリエイティブに一貫性があるかが重要です。
広告のクリック数を増やしたい目的で、過激なメッセージングをすると、ブランディング観点で逆効果になりますので注意しましょう。
7.損益分岐点をあらかじめ定義しておき我慢をする
ECを立ち上げてすぐの時期は赤字の期間が発生します。企業によっては「なぜ赤字なのにマーケティングをするのか」という議論になりがちです。その結果、我慢できずに撤退してしまう企業も多くあります。
しかしEC立ち上げ初期は、まだ売れ筋商品もなく、赤字になるのは当然です。商品ラインナップや顧客単価にもよりますが、立ち上げ後2年ほどは利益が出ないと考えるべきです。
しかし漫然と赤字を続けるわけにはいかないので、あらかじめ「いつ損益分岐点を迎えるのか」を明確にしておきましょう。ECで広告を出稿する際には、この計画をもとに出稿金額・費用対効果の目標を設定しましょう。
ECサイトの広告でよくある3つの質問
ここでは、ECサイトの広告でよくある3つの質問について紹介します。
質問1.ECサイトの広告における注意点は?
ECサイトの広告における注意点として、以下が挙げられます。
注意点 | 内容 |
テスト期間を十分にとってABテストなどをおこなう | 運用広告型は、成果の安定にテスト期間が必要。最適なバナーや配信設定が何か検証しながらデータを蓄積する。 |
既存顧客の育成も合わせておこなう | 既存顧客のLTVを高める施策を実施する。目標のCPOを維持したままの広告はいつかは頭打ちになる。 |
広告の成果を多角的に捉えて検証する | 広告の成果は、多角的に検証する必要がある。購入したきっかけが広告の場合、広告を評価しないと、機会損失になりかねない。 |
上記を意識して、余裕を持った対応が必要となります。
質問2.ECサイトとネットショップの違いは何?
ECサイトのほかにも、ネットショップやオンラインショップなどの名称があります。実は、両者には明確な違いはありません。
基本的には同じものを指しますが、誰の視点でサイトを呼ぶかによって名称が異なるのです。ECサイトの場合、サイト運営者側から見た場合の名称となります。
これは、Webサイトの種類を区別する名称として使用しているケースが多いです。一方で、ネットショップはユーザー側から見た名称となります。
質問3.ECサイトの広告分析にツールを利用するメリットは?
ECサイトの広告は、ただ掲載するだけでは思うような成果を上げられません。実際にどの程度売上に繋がったかなどのデータを分析して、軌道修正を図るなどの対応が必要です。
そこで、広告分析においてツールを利用する場合があります。代表的なツールとしてアクセス解析があり、アクセス解析ツールを使用すれば以下のようなメリットがあります。
●プロでなくても簡単に解析できる
●分析結果を活用できる
●業務効率化に繋がる
アクセス解析ツールは無料で利用できるものが多いので、誰でも気軽に試せます。
まとめ
ECサイトでより売上を伸ばしたい場合、WEB広告を活用するのがおすすめです。費用対効果が高い広告も多くあり、コストを最小限に抑えて高い効果を発揮できる場合があります。
自社でどの程度の予算を確保できるかを明確にして、予算に応じて最適なWEB広告を掲載して売上向上を目指してください。SaaS型ECサイト構築プラットフォームのfutureshopは、さまざまな集客プロモーションを展開しており、はじめてのWEB広告運用をサポートします。⇒futureshop