EC業界において、フルフィルメントで対応することによってさまざまなメリットがあります。
ただし、必ずしもメリットばかりではなく、実際にはデメリットもあるのです。本記事では、フルフィルメントの業務内容やメリット、デメリット、検討すべきタイミングなどを紹介します。
目次
フルフィルメントとは?
フルフィルメントという用語について解説すると、英語では「実行」や「業務遂行」などの意味があります。EC業界におけるフルフィルメントとは、一般的には以下のバックヤード業務の一連のプロセスを指します。
●受注
●梱包
●発送
●受け渡し
●代金回収
●顧客のアフターサポート
単純に、お客様に商品を届けて代金回収するまでがフルフィルメントの範囲になるわけではありません。商品が届いた後の以下の対応についても、フルフィルメントに含まれるのが特徴です。
●苦情処理
●問い合わせ対応
●返品・交換対応
●代金の督促
さらに、受注を受ける前のプロセスとなる、商品の撮影や採寸、原稿作成などのささげ業務や、顧客分析などといった周辺業務まで含まれる場合が多いです。
3PLとの違い
フルフィルメントと似た用語として、3PLがあります。3PLは「Third Party Logistics」の略称です。3PLとは、一般的には荷主に対して物流に関する改善を提案して、包括して物流業務を受託したうえで遂行することを指します。
基本的には、荷主と運送業者は利益相反の関係にありますが、それを解決するために、ノウハウを有した第三者が荷主の立場に立ちロジスティクスの企画や設計、運営をおこなう事業のことです。3PLには、以下の要素が必要とされています。
●物流オペレーション能力
●物流システム設計・提案能力
●ハードウェア
●ソフトウェア
●ヒューマンウェア
フルフィルメントと3PLの違いとして、3PLの場合は物流に関わる内容だけに限られるのに対して、フルフィルメントの場合は物流に加えて、アフターフォローや受注前のプロセスを含める違いがあります。
フルフィルメントサービス提供会社によっては「流通のみ」の場合もある
一般的にはフルフィルメントサービスとは、入庫・検品や保管、流通加工、梱包、出荷などの物流業務だけでなく、決済処理やカスタマーサポートといったECに必要となる業務の一部もしくは全行程を代行してくれるサービスです。
ただし「フルフィルメントサービス」という用語は業者によってバラツキがあります。事業者によっては、物流部分だけを担当しているケースもあるので注意です。さらに、フルフィルメントサービスを提供している事業者の場合、倉庫業を運用代行業者がやっているサービスなど、さまざまなパターンが存在します。
依頼前に対応範囲を確認するようにしましょう。
フルフィルメントの主な業務内容は7つ
一般的にフルフィルメントとは、物流だけでなくカスタマーサポートや開発段階まで範囲となります。具体的には、以下の業務が含まれるケースが多いです。
●入荷管理
●在庫管理
●受注管理
●ピッキング・流通加工
●梱包・発送業務
●決済業務
●返品処理・顧客対応
各業務について、詳しく解説します。
1.入荷管理
入荷管理とは、納入元から倉庫に届いた商品の内容の正誤性を管理する仕事です。品番・数量が正しいかの確認方法として、以下のような方法がとられています。
●受け取り日のスケジューリング
●ダッシュボードにおける一元管理
●バーコード管理
以上のような対応が必要となる理由としては、入庫時の数量が予定数量よりも少ない場合、在庫切れを防止するためです。
また、入荷時の数量が多い場合も過剰在庫となり、特に食品系の商品を取り扱っている場合は賞味期限切れなどが発生して無駄な費用が発生するため、入庫管理はとても重要な業務となります。
2.在庫管理
在庫管理とは、納入元に対する「発注量」「発注タイミング」を決めるために必要な業務です。「現在、倉庫内にどれだけの商品があるのか」を管理するタスクとなります。
正しく在庫管理がおこなわれていない場合、購入者に商品を届けられずに機会損失する可能性があります。反対に、過剰に在庫が余る場合、維持費がかかり利益率が低くなります。
フルフィルメントを利用することで、確実に在庫管理ができます。
3.受注管理
受注管理とは、商品の注文対応、決済確認、在庫確認、倉庫への出荷指示の業務を指します。顧客と商品をつなぐ重要な役割となるため、ミスが許されません。
納品内容の違いは顧客満足度にも大きく影響するため、受注管理をアウトソーシングする企業が増えています。
4.ピッキング・流通加工
ピッキングとは、受注を受けた際に倉庫などにある在庫のなかから、注文を受けた商品などを探す作業のことです。基本的には、注文書やリスト、伝票などを手元に置いて、必要な商品を探すという作業をおこないます。また流通加工とはラベルや値札貼り、組み立て、箱詰め作業のことです。
ピッキング作業に関しては、近年ツール導入により受注管理との自動化が進んでいます。これによりミスをぐんと減らせます。こうしたツールはfutureshopで連携が可能です。詳しくは以下のページをご確認ください。
参考:futureshop「連携サービス一覧」
なお、ピッキング・流通加工の後に出荷する商品の内容などが間違いないかの検品作業をおこないます。
5.梱包・発送業務
検品作業において、出荷する商品などの内容に間違いがない場合、最終的な梱包作業をおこないます。緩衝材などを使用して顧客の元へ安全に配送することを目的に、適切な梱包が必要となります。
梱包作業では、商品だけでなくチラシやクーポン、サンプルなどを同封する場合が多いです。また、納品書や払込書の差し込み、送り状の貼付も梱包作業の範疇となります。こうした特別な処理が発生する場合は外注費用が高くなる傾向があります。
また梱包作業では「品質」が重要です。顧客は商品が届く際に最もテンションが高まります。もし箱が汚れていたり破損していたりすると、印象がよくありません。梱包作業次第で企業の信頼性・リピート率が大きく影響するのです。
次に発送業務では、梱包された商品を発送方面別に仕分けして、配送業者に引き渡す作業が必要です。また、顧客まで確実に届いたかどうかを確認することも重要な業務です。
6.決済業務
商品を引き渡す際に、代引きの場合は決済業務をおこないます。キャッシュレス決済が当たり前になりつつある昨今、代引きを利用する機会は大きく減っていますが、送り先が信用できないという理由によって、代引きを利用する方は少なからず存在します。
代引きにおいて、料金の受け取り自体は各宅配業者が請け負うことになります。
7.返品処理・顧客対応
フルフィルメントの範囲において、返品・交換が必要になる場合は、いったん物流倉庫に品を戻したうえで、再配送が必要です。
こうした場合のカスタマーサポートは依頼元の企業が担当することが多いです。しかし配達自体はフルフィルメントの事業者が担当します。
フルフィルメントサービスを導入する3つのメリット
フルフィルメントサービスを導入する場合、以下3つのメリットがあります。
●スタートダッシュを切りやすい
●業務の安定化と効率化を図れる
●顧客満足度の向上を期待できる
各メリットの詳細は、以下のとおりです。
1.スタートダッシュを切りやすい
ECサイト運営の初期段階では、特に受注管理・出荷対応を自社で対応するのは困難です。スタッフのリソースがなく、ノウハウもないためです。
その点、ノウハウ豊かなフルフィルメントの事業者に物流関係の業務を依頼することで、スタートダッシュを切りやすいのはメリットです。リソースを確保するまでは、フルフィルメントサービスの利用を検討しましょう。
ただし、初期段階では特に外注コストを考えましょう。
ピッキングや流通加工、配送は顧客に近い工程なので高いクオリティを要求したいのは確かです。しかしハイクオリティな対応を要求するほど、コストは高まります。
段ボールなども自社のロゴ入れたいものですが、ブランドロゴを入れると追加費用が必要です。また、マーケティング観点において重要な商品撮影も、モデルを入れると高くなります。
自社で「できること」と「できないこと」を洗い出したうえで、ブランディングと外注コストとのバランスを考えましょう。
2.業務の安定化と効率化を図れる
フルフィルメントサービスを使用して、受注・梱包などの業務を委託することで、自社リソースはECサイト運営をはじめとして、他の業務に集中できるようになります。これにより業務フローが安定します。
またフルフィルメントサービスの事業者は、効率性高く業務を推進するためのノウハウを持っています。よって、物流に関して滞りなく顧客に対して届けられるようになります。
3.顧客満足度の向上を期待できる
フルフィルメントサービスの利用により、業務の品質が高まるため、顧客満足度を高められます。
入荷管理や在庫管理において、慣れていない人間が作業するとミスする可能性が高まります。その結果、在庫管理・配送にミスが出ると、顧客満足度が下がります。
そのうえ、空いた社内リソースでカスタマーサポートなどに時間を割けるため、顧客満足度が高まります。
フルフィルメントサービスを導入する3つのデメリット
フルフィルメントサービスを導入する場合、メリットだけでなくデメリットもあります。特に、以下のデメリットがあることを考慮しなければなりません
●手数料が発生する
●社内にノウハウが蓄積されない
●顧客との接点が少なくなる
各デメリットについて、詳しく解説します。
1.手数料が発生する
フルフィルメントサービスには、当然、利用料が発生します。依頼の前に「利益」を意識しましょう。外注コストと売り上げのバランスを考えつつ、依頼する範囲を決める必要があります。
フルフィルメントサービスの利用料は事業者によってさまざまですので、費用対効果を考えつつ、自社ECの状況に合ったサービスを利用しましょう。
2.社内にノウハウが蓄積されない
フルフィルメントサービスを利用して、作業をアウトソーシングすると、自社にはノウハウが蓄積されません。
ECサービスを立ち上げた直後は、特にノウハウがない状況です。リソースを補いつつ、できることは自社で実施しながらノウハウを貯めることも考えましょう。自社にノウハウがないままだと、長く外注業者に依存することになります。
3.顧客との接点が少なくなる
顧客対応時に直接やり取りすることで、ニーズを吸い上げられます。
その点、フルフィルメントサービスを利用すると、自社と顧客とのオフラインでの接点がなくなります。これにより、貴重なデータが得られなくなるおそれがあります。
フルフィルメントサービスによっては、顧客ニーズを分析して報告してもらえるサービスもありますので、必要な場合は積極的に利用しましょう。
フルフィルメントサービスの導入を検討すべきタイミングは4つ
フルフィルメントサービスは、特に以下のタイミングで導入を検討することをおすすめします。
●ECサイト・通販事業を開始した
●出荷業務が複雑になりミスが多発している
●コア業務に手が回らなくなっている
●顧客満足度が低下し始めている
各タイミングについて、詳しく解説します。
1.ECサイト・通販事業を開始した
ECサイトや通販事業を始める場合、物流に関するノウハウがないことが多いです。在庫管理・発送・顧客対応などのやり方が分からない状態ではじめると、顧客の信用を失う可能性があります。
そのため、ECサイトや通販事業を始めたばかりのタイミングではフルフィルメントサービスの利用を検討するのがおすすめです。
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2.出荷業務が複雑になりミスが多発している
ECサイトにおいて規模拡大して取り扱う商品が多くなると、在庫管理・出荷業務が複雑になりがちです。また各種キャンペーンが増えることで、業務内容が複雑化してしまう場合が多いです。
フルフィルメントサービスの事業者はこうした複雑な業務に対してノウハウがあります。また物流システムを導入していることが多く、ヒューマンエラーを防止できます。
3.コア業務に手が回らなくなっている
小規模EC事業者の場合は、特に1人の社員がさまざまな業務を兼務することがあります。しかし、できればプロフェッショナルな人材は社内のコア業務に集中してほしいものです。
そこで物流などの単純作業はフルフィルメントサービスに任せることをおすすめします。すると、EC運営者が本来注力すべき商品企画や販売促進、マーケティング業務に集中できます。
4.顧客満足度が低下し始めている
大きなトラブルが発生していなくても、顧客満足度が下がるケースがあります。特に、苦情に対して真摯に対応していない場合、口コミとして広まって顧客離れが進んでしまう場合も多いです。
そこで、顧客満足度を高めるために、フルフィルメントサービスを利用するのがおすすめです。
フルフィルメントサービスを選ぶ際のポイントは5つ
フルフィルメントサービスは、さまざまな業者が提供しています。そのなかで、自社にとって最適なフルフィルメントサービスを選ぶために、以下のポイントを重視してください。
●まず自社でどのリソースが不足しているかを整理する
●サービス・サポートの範囲
●商品の保管環境
●料金体系
●自社のシステムやECサイトとの連携可否
1.まず自社でどのリソースが不足しているかを整理する
フルフィルメントサービスを利用する場合、はじめに「自社がどの部分でリソースが不足しているのか」を整理しましょう。これが最も重要です。複数の問題点がある場合、優先順位を付けることでより最適な業者を選定しやすくなります。
2.サービス・サポートの範囲
フルフィルメントサービスの場合、サービス内容・範囲は提供している業者によって千差万別です。事前に整理した不足リソースを軸として、サービス内容や範囲などを確認してください。
また「サービスの強み」が事業者によってさまざまです。1社だけを選定するのではなく、複数のフルフィルメントサービスを比較したうえで、自社にとって最適なサービスを決定してください。
3.商品の保管環境
フルフィルメントサービスでは、物流センター・倉庫を利用するケースも多いです。「自社倉庫」か「提携した倉庫」か、など利用場所にも違いがあります。
依頼前に保管環境の確認をしっかりとおこなってください。清潔な状態が維持されているか、温湿度は適切かという点は、特にチェックしたいポイントです。
たとえば、食品を取り扱う場合は温湿度が適切でない場合、食の安全に関わるトラブルが発生するリスクがあります。
4.料金体系
フルフィルメントサービスを利用するうえで、利用料金は重要です。トータル費用だけでなく、オプション費用も確認しましょう。また、初期費用と同時にランニングコストも考えて最適なサービスを選定してください。
料金については、事前に「自社で出したい利益額」「売り上げ目標」を定義したうえで確認しましょう。どれくらいのコストを支払えるかが曖昧なままだと経営状況に不利益が発生します。
5.自社のシステムやECサイトとの連携可否
もし、自社にすでに物流に関するシステムを導入している場合は、フルフィルメントサービスが提供しているシステムとの連携可否を確認しましょう。
また、ECサイトから直接連携するうえでも、ECサイトとの連携可否もしっかりとチェックしてください。futureshopでは、さまざまなツール・システムと連携可能です。詳しくは以下のページをご確認ください。
参考:futureshop「連携サービス一覧」
フルフィルメントでよくある3つの質問
ここでは、フルフィルメントにおけるよくある質問を紹介します。
質問①Amazonのフルフィルメントサービスとは?
オンラインショッピングモールのAmazonはフルフィルメントサービスを提供しています。Amazonに出品した商品をAmazonのフルフィルメントセンターに納品すれば、以下の業務をAmazonが代行してくれます。
●受注
●梱包
●発送
●カスタマーサービス
●返品対応
Amazonのフルフィルメントサービスを利用することにより、出品した商品がAmazonプライム対象となり、より注目を集めやすいなどのメリットがあります。
質問②フルフィルメントサービスを行う主な企業とは?
フルフィルメントサービスは、多くの企業が提供しています。主な企業だけでも、以下が挙げられます。
サービス | 特徴 |
楽天スーパーロジスティクス 参考:https://logistics.rakuten.co.jp/ |
納品の遅延が発生しやすい場合も楽天の自社倉庫から配送されるメリットがある |
Fulfillment by ZOZO 参考:https://fbz.zozo.com/ |
物流センターのZOZOBASEを使用して在庫を一元管理できるため在庫ロスを減らせる |
ヤマト運輸株式会社のフルフィルメントサービス 参考:https://business.kuronekoyamato.co.jp/service/lineup/fulfillment/index.html |
初期費用0円で定額制で開始できるフルフィルメントサービス |
株式会社千趣会のフルフィルメントサービス 参考:https://www.senshukai.co.jp/btob/service/fulfillment/ |
60年の通販ノウハウがあり、実績のあるフルフィルメントサービス業者 |
質問③フルフィルメントサービスプロバイダーとは何?
フルフィルメントサービスプロバイダーとは、フルフィルメントサービスの事業者のことです。商業活動の過程における業務のうち、少なくとも2つを提供する法人を指します。
2つ以上あればよいため、すべての業務を負う必要はありません。例えばマーケティングから発送までを実施する事業者もいれば、梱包・発送のみにフォーカスしたサービスもあります。
まとめ
フルフィルメントは、自社リソースの不足を補うために、ぜひ利用したいサービスです。また、業務効率化・顧客満足度向上の観点でもメリットがあります。
フルフィルメントサービスを利用する際には、事前に「自社の人材状況」「売り上げと利益の目標値」を決めておきましょう。そのうえで必要なサービスを取り入れることをおすすめします。
futureshopは、発送・出荷・倉庫連携など、フルフィルメントサービスで使われるシステムと連携できます。また「どの領域をアウトソーシングすればいいか分からない」というお悩みにも対応できます。ぜひお気軽にご相談・導入を検討してみてください。⇒futureshop