永続企業実現のため、スマート工場を目指す。デジタルによる自動化と見える化を進め効果を上げる 村山製作所(神奈川県)

目次

  1. 「当社にかかわるすべての人を幸せにしたい」
  2. 20台のプレス加工機で500種の部品を製造
  3. 安全にかかわる重要部品のため品質チェックは念入りに行う
  4. 永続企業実現のため、スマート工場を目指す。その一歩として各部署の在庫状況の見える化を実現。在庫不足解消へ
  5. 在庫管理システム改善で管理工数が1/3になった。エラーチェックのため監視カメラ他も導入予定。情報の蓄積により活用の段階へ
  6. 常時200枚程度の図面データを保管し、タブレット端末から検索可能に。拡大もできるので作業効率が大幅に上昇
  7. 従業員の働き方改革を進め、エコアクション21認証や事業継続力強化計画を行い、ホームページでの発信も強化する
中小企業応援サイト 編集部
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株式会社村山製作所の前身である有限会社岡村製作所は、日本経済が高度成長期に入って間もない1959年に設立された(1968年に村山製作所に社名変更)。その後、本格化するモータリゼーションの進展とともに自動車部品の需要も急増。村山製作所も業績を伸ばしたが経営者の高齢化で後継者がいなかったため、有限会社日誠型機が買収し親会社となった。2020年に両社が合併して新たに誕生したのが現在の村山製作所である。(TOP写真:11台の自動搬送機を2人で監視する)

「当社にかかわるすべての人を幸せにしたい」

永続企業実現のため、スマート工場を目指す。デジタルによる自動化と見える化を進め効果を上げる 村山製作所(神奈川県)
「当社にかかわるすべての人を幸せにして社会貢献したい」と話す日野原技社長

2017年に就任した日野原社長は、「創造」「技術」「誠実」を企業理念としている。常に新しい価値を創造し、常に技術力を強化し、ものづくりを誠実に行うことで、社会貢献していきたいという考えだ。日野原社長は「企業を経営している限りはお客様や従業員や協力会社のすべての人たちが幸せになってほしい。つまり、(豊臣秀吉の家臣の)石田三成が旗頭に掲げていた『大一大万大吉(だいいち・だいまん・だいきち)』です」という。1人が万民のために、万民は1人のために尽くせば、天下の人々は幸せになれるという石田三成の信条を経営の軸に据えながら、次世代のプレス加工企業を目指して工場の自動化や業務改革を積極的に進めている。

20台のプレス加工機で500種の部品を製造

永続企業実現のため、スマート工場を目指す。デジタルによる自動化と見える化を進め効果を上げる 村山製作所(神奈川県)
安全にかかわる重要な自動車部品が次々に成形されていく=200トンプレス加工機

売上の9割を占める主力事業は自動車用部品製造で、エンジンまわりやブレーキ部品、チャイルドシート用部品など自動車の安全を支える重要部品が多い。当初は日産自動車関係が中心だったが、プレス加工機や溶接機など設備投資も積極的に進め、現在はホンダ、トヨタ自動車、いすゞと幅広いメーカーの部品製造が全体の4割に達している。

安全にかかわる重要部品のため品質チェックは念入りに行う

出来上がった部品は検査室で全品検査を行っている。安全にかかわる部品が大多数を占めるだけに、1点1点念入りに加工の不備や形状の変化などを目と指で念入りに検査している。積載時の重量や接触によって発生する不良品はこの段階で除去される。

永続企業実現のため、スマート工場を目指す。デジタルによる自動化と見える化を進め効果を上げる 村山製作所(神奈川県)
安全にかかわる重要部品だけに、全品検査を行い不良品を徹底的に除去する
永続企業実現のため、スマート工場を目指す。デジタルによる自動化と見える化を進め効果を上げる 村山製作所(神奈川県)
画像検査装置でわずかな形状の違いをチェックする

相澤靖常務取締役は「製造しているのは手のひらサイズの小型部品が多いが、レアメタルのプレス加工も多く、部品点数は300~500種にのぼる」と説明する。プレス加工機だけで200トンから5トンまで20機設置されているが、電気自動車対応の部品受注も増加傾向で、さらに大型の400トンプレス加工機導入も検討しているという。

永続企業実現のため、スマート工場を目指す。その一歩として各部署の在庫状況の見える化を実現。在庫不足解消へ

永続企業実現のため、スマート工場を目指す。デジタルによる自動化と見える化を進め効果を上げる 村山製作所(神奈川県)
在庫管理を見直し手書き台帳を廃止。一元管理が可能になり作業工数は3分の1程度に短縮できた

日野原社長が将来の目標に掲げているのが「プレス加工や金型製作以外でも、ものづくりで困ったことがあれば何でも頼られる存在になること。ものづくりをリードする“老舗”として100年、200年と続く経営をしていく」ことだ。そのために自動搬送機やロボットを駆使して無人化した「スマート工場」の実現を目指している。その第一歩が在庫管理の見直しだ。従来、在庫管理はエクセルで作成した紙の台帳に記入してからエクセルに再度入力していたが、2度手間に加えてミスが発生していた。一元的な帳簿管理ができていなかったため、300種以上のアイテムを扱いながら在庫不足や在庫超過が起きやすい状態が続いていた。

2021年に、エクセルで作成したデータをそのまま使えるシステムを導入(アドオンシステム)。タブレット端末などで入力しやすいようにWeb画面の電子帳票に変換するシステムだ。在庫データを台帳に手書きする必要がなくなり、現場のタブレット端末で入力したデータを事務所のサーバーで一括管理できるようになった。プレス機や自動搬送機など工場の各部署にタブレット端末が設置されていて、現場で作業終了後に入力を行い、サーバーに保管される仕組みだ。事務所で各部署の在庫状況が一元管理可能となり、在庫の過不足が解消された。

在庫管理システム改善で管理工数が1/3になった。エラーチェックのため監視カメラ他も導入予定。情報の蓄積により活用の段階へ

永続企業実現のため、スマート工場を目指す。デジタルによる自動化と見える化を進め効果を上げる 村山製作所(神奈川県)
作業現場に設置されたタブレット端末で毎日作業終了時に在庫状況を入力する

必要な在庫データの集計や分析が容易にできるようになり、作業の効率化とペーパーレス化を実現した。「工数的には3分の1程度に効率化できたしミスもなくなったので、導入効果は非常に大きい」(相澤常務)と満足そうだ。

相澤常務はさらに在庫管理システムをカスタマイズし、材料をプレス機に自動的に挿入する「ショット管理」機能を付加した。例えば「100」と入力すれば、100枚の材料をプレス加工機に自動的に挿入する。

またエラーチェックのため、監視カメラ機能も連動させる予定だ。エラーが出たときに不具合の箇所がすぐわかるように、振動センサーや熱感知センサーと組み合わせて迅速なエラー対応機能を備える計画だ。在庫管理情報から始まり製造工程や検査工程まで一元的な情報活用によって、スマート工場が少しずつ実現に向かいつつある。

常時200枚程度の図面データを保管し、タブレット端末から検索可能に。拡大もできるので作業効率が大幅に上昇

かつては紙の図面を受け取って金型やプレス加工を行っていたが、「見積の締切がどんどん早まっており、受注獲得のためには作図時間の短縮と図面データの活用が欠かせなくなっている」(相澤常務)。常時200枚程度の図面データを保管しタブレット端末から検索可能。必要に応じて拡大もできるため使い勝手は格段に向上したという。

従業員の働き方改革を進め、エコアクション21認証や事業継続力強化計画を行い、ホームページでの発信も強化する

日野原社長が目指す「スマート工場」は工場の無人化を図る一方、従業員は在宅で生産管理や設計などを行う自由な勤務形態とし、ゆくゆくは同社を従業員の持ち株会社に移行する構想だ。環境負荷を抑えるエコアクション21認証や事業継続力強化計画、子育て支援の行動計画策定と就業環境改善に向けて取り組みを進めている。「具体化するにはまだ時間がかかるが、プレス工場には見えないおしゃれなカフェも作りたい」(日野原社長)と笑う。

同社のホームページには企業理念や事業概要・沿革などのほか各種認定、保有設備も写真入りで詳細に記載されている。「最近、大手企業からの仕事の依頼がホームページ経由で来るケースが増えた」(同)こともあり、ホームページのさらなる充実も課題だ。ホームページによる情報提供はいまやビジネスチャンスを左右する重要ツールとなっている。

永続企業実現のため、スマート工場を目指す。デジタルによる自動化と見える化を進め効果を上げる 村山製作所(神奈川県)
本社の周辺は住宅街となり、広い敷地を確保できる郊外への移転を検討している

織田信長亡き後、羽柴秀吉と柴田勝家の間で天下取りの後継争い(「賤ヶ岳の戦い」)が起きたが、その際に智将で知られた石田三成は柴田側の詳細な状況や地形、気候などあらゆる情報を収集して分析。戦を有利に運び秀吉軍勝利の立役者となった。情報を制する者が勝負を制したわけだ。デジタル化を通じて手に入れた情報の徹底活用によって、村山製作所は「大一大万大吉」を手繰り寄せようとしている。

企業概要

会社名株式会社村山製作所
本社神奈川県横浜市磯子区岡村5丁目20番17号
HPhttps://murayama-ss.co.jp
電話045-751-3563
設立1959年11月
従業員数21人
事業内容自動車用部品製造、プレス加工、金型製作