レイオフとは、企業が業績低迷を改善するため、人件費の削減を目的に一時的に従業員を解雇する人事施策です。本記事では、レイオフと解雇・一時帰休の違いや、日本における解雇の種類などをくわしく解説しています。導入するメリットは何か、また働き手への影響についても触れています。
日本では解雇規制があるため、実施されるケースはほとんどありません。反面、外資系企業では積極的に採用されています。記事内でレイオフを網羅的に解説しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
レイオフとは?
レイオフとは、企業の業績が傾いた際、人件費の削減を目的として採用される人事施策です。従業員との雇用契約を一時的に解消し、経営を立て直すための手段として用いられます。
また、この施策は完全な契約解除とは異なり、一時的な解雇です。そのため、企業業績や状況が回復した場合には、雇用契約を再締結するケースも多いです。
ただし、一時的であっても雇用契約を解消するため、収入面で不安定な状況をもたらします。そして、再雇用が前提であっても、必ず再契約するわけではありません。
企業がレイオフを実施するメリット
企業がレイオフを行うと、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、メリットを2つ紹介します。
人件費の削減につながる
業績の低迷により利益が出ない状況では、給与の支払いは財務面で大きな負担です。そのため、企業は人件費を削減し、財務面の負担を減らすために、レイオフを実行するケースがあります。
たとえば、コロナウイルスの影響で売り上げが大幅に減少した米アパレルブランドのGapは、2022年に労働者500人をレイオフしました。
優秀な人材・技術の流出防止ができる
企業は、採用・教育・育成に大きなコストを費やしています。したがって、レイオフをした場合、人材育成のコストが無駄になるかもしれません。また、契約を解消した人材がライバル企業に転職すると、重要な情報や技術が流出する可能性があります。
しかし、レイオフは、人材の再雇用が前提となるため、一般的な解雇とは異なります。結論として、レイオフは、優秀な人材が他社に転職するリスクを軽減できます。
レイオフに従業員のメリットはあるのか?
レイオフは企業側だけではなく、従業員にもプラス要素があるのをご存じでしょうか。ここでは、従業員側のメリットを2つ紹介します。
新しいキャリアへのきっかけにつながる
レイオフ後は、一時的でも未所属の状態となるため、積極的な転職活動が可能です。平日仕事をしながらの転職活動では、先方との予定が合わず、希望する会社と面接ができない可能性もあります。
しかし、退職中であればいつでも面接できるため、希望する会社にアプローチできます。以上のように、よい会社に巡り合うチャンスが増える点は従業員側のメリットといえるでしょう。
特別手当が支給される
従業員側のメリットとして、特別手当が支給される場合があります。大手企業では、早期応募者に対して、プラスで一時金を上乗せするケースも少なくありません。支給額は、企業規模・勤続年数によって違いがあるため、事前確認が必要です。
たとえば、業績悪化によりレイオフを実施した米国大手企業のメタは、従業員に対して特別手当(退職金)として、基本給の4カ月分を支払いました。
以上のことから、レイオフの対象となると特別手当が支給されるケースが多いため、一定の補償が得られる点はメリットといえるでしょう。
日本の企業はレイオフを実施できる?
海外で多く採用されているレイオフですが、日本での実施状況はどうなっているのでしょうか。次項からくわしく解説していきます。
現状日本では厳しい解雇規制がありできない
現在の日本では、海外と違ってほとんど実施されていません。理由としては、解雇規制によって守られているためです。解雇規制とは、正規雇用された労働者を守る規制です。労働契約法第16条に以下の内容が規定されています。
“解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。”
引用元: E-GOV法令検索
条文にもあるとおり、この国では労働者を保護する目的で法律が定められています。したがって、たとえ業績が悪化しても簡単には解雇できません。以上の理由から、日本ではレイオフでなはく、在籍した状態で休業させる「一時休業」といった措置を選択するケースが多いです。 ただし、近年、解雇規制を緩和させる議論が繰り返されており、今後レイオフに類似した制度が導入される可能性は十分あります。
日本の外資系企業では実施が可能
日本企業によるレイオフは、解雇規制が厳しい観点から実施が難しいのが現状です。しかし、外資系企業は日本の企業に比べて、積極的に採用しています。
理由としては、日本の文化と違い、外資系企業は「企業に貢献できない者は排除する」といった文化を持っているからです。しかし、いくら外資系企業でも、日本では正当な理由なくレイオフを行うのは違法行為です。
あくまでも日本で事業を行う以上、法律に沿って対応する必要がある点は理解しておきましょう。
レイオフと解雇の違い
レイオフと類似した人事施策として解雇があります。ここでは、レイオフと解雇でどのような違いがあるのか、くわしく解説していきます。
日本における解雇の種類
解雇は、雇用側が一方的に労働契約を解消することをいいます。したがって、労働者が退職を承諾している場合は該当しません。また、解雇は「不当解雇」といった訴訟問題に発展するケースも多くあります。
企業側としては、こうした問題を避けるため、解雇通知書などの書面を使って丁寧に説明する必要があります。
種類 | 措置の方法 | 解雇予告 通知 | 退職金の有無 | 備考 |
普通解雇 | 労働者が雇用契約の内容に違反した際、行う措置 | 必要 | あり | 労働者に対し、指導や注意を行わないと不当解雇に問われる可能性がある |
懲戒解雇 | 労働者が極めて重大な規律違反などを行なった場合の制裁措置 | 必要 | 会社規定による | 横領・企業の信頼を失墜させる行為・ハラスメントなど |
整理解雇 | 業績悪化など企業の都合で雇用計画を解消する措置 | 必要 | 会社規定による | 整理解雇の実施には、整理解雇の4要件を満たす必要がある |
レイオフと一時帰休の違い
この2つの違いは、雇用関係があるか否かです。レイオフは、一時的にでも解雇が決定するため、雇用契約は終了します。一方、一時帰休は、雇用契約を継続したまま休業に入ります。
また、一時帰休は休業中、休業手当の支給が義務づけられていますが、レイオフには休業手当の支給はありません。
まとめ
本記事では、レイオフとは何か、実施するメリット、この国における実施状況について解説しました。レイオフは、業績低迷やコスト削減のために採用されますが、一時的な解雇といった理解が必要です。
現在は解雇規制が厳しいため、レイオフを実施することが難しいとされています。ただし、解雇規制の緩和により日本でもレイオフが導入される可能性があるため、今後の動向に注目が必要です。