(本記事は、スコット・ベドベリ氏(著)、スティーヴン・フェニケル氏(著)、 関野 吉記氏(監修)、 土屋 京子氏(翻訳)の『ザ・ブランド・マーケティング 「なぜみんなあのブランドが好きなのか」をロジカルする』=実業之日本社、2022年12月19日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
強いブランドを育てる8ヵ条
本書では、このあと、いくつかの原則を軸に話を進めていきたいと思う。わたしは幸いにも、小さな企業が時を経て業界をリードする世界的ブランドへと育っていく過程に立ち合うことができ、これらの原則を実際に試してみることができた。その過程で学んだことを、いくつか紹介しよう。
- ブランドのDNAを定義し保護する
- ブランドを賢く拡張して企業を育てる
- 顧客とのあいだに商品やサービスを超越した情緒的きずなを築く
- 時代を超えて価値の変わらぬものの擁護者となる
- 企業の大きさをマイナスでなくプラスに活かす
- 企業が持つ大きな力をよい目的に役立てる
- 自社のブランド価値を組織全体に浸透させる
- ブランドのよき育ての親になる
これらは、わたしにとってはずっと常識のようなものだった。広告代理店に勤めているあいだに、こうした原則を尊重する企業や無視する企業を身近に見せてもらう機会に恵まれた。ナイキとスターバックスでは、これらの原則が実践され、すばらしい結果を生む現場を見てきた。その後、ハイテク企業がこれらの原則を踏まえてぐんぐん業績を伸ばすのをこの目で見たし、コカ・コーラのように歴史と信頼のあるブランドが抜本的改革を成しとげるのも見た。名の知れた経済評論家たちがナイキやスターバックスを研究し、こんなやり方は無謀だし長続きするはずがないのだが……と困惑していたのは、わずか数年前のことだ。さぞ途方に暮れたことだろう。われわれのやり方は、彼らのルールとは違っていたのだから。ナイキは、当初ウォール街からあまり好意的に見られていなかった。他社のようにウォール街のご機嫌を取らなかったからだ。われわれは、もっぱら消費者に目を向けていた。アナリストが住む世界ではなく、消費者が住む世界に目を向けていたのだ。おもしろいことに、結果的に「無謀で長続きしなかった」のは、むしろ旧ブランド社会のマーケティングやブランド開発活動のほうだった。このパラダイム・シフトこそ、本書の核心だ。
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