医者が教える 心と体が本当に整う サウナ習慣
(画像=maroke/stock.adobe.com)

(本記事は、小林 弘幸氏の著書『医者が教える 心と体が本当に整う サウナ習慣』=Gakken、2023年3月23日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

サウナブームが起きている2つの理由

この日本に空前のサウナブームが訪れるなんて、誰が予想できたことでしょう。

実は私自身も、5年ほど前にサウナの魅力に憑りつかれるまでは、「こんなに熱くて苦しいものが、健康にいいわけがない」そう思い込んでいたのです。

そもそも日本人にとってのサウナとは、比較的年齢の高い男性を中心としてニーズを集めているものでした。

それも純粋にサウナを楽しむだけではなく、ときには冷たいビールをよりおいしく飲むための脱水の手段であったり、二日酔いを解消するためにアルコールを抜く荒療治だったりと、サウナは医学的見地ではとても推奨できない誤った使われ方もされてきたのです。

しかし、いまのサウナブーム下では、まったく違う様相を呈しています。

長年サウナに親しんできた中高年男性だけでなく、男女を問わず、多くの若い人たちが、いわゆる「ととのい」を求めて、サウナにやってきます。

この現象は、とてもよろこばしいことだと思います。

なぜいま、サウナブームが起きているのでしょうか?

その理由のひとつは、気軽にサウナを楽しめる環境が整ってきた・・・・・・ということがあるでしょう。

旧来のサウナ施設や健康ランド、カプセルホテル、銭湯などだけでなく、スーパー銭湯やホテル、スポーツジムなど、いまは身近な各所にサウナが併設されています。

また、貸し切りにできるサウナ施設やサウナメインのスパ、アウトドアでも楽しめるテントサウナなど、新たなバリエーションも増えています。

もうひとつの理由は、 現代人が強く求めているから......ということにほかなりません。

それはもちろん、2019年末から流行した新型コロナウイルス感染症の存在も無縁ではないでしょう。

数年にわたりコロナ禍に置かれたことによって、ストレスを感じることがより多くなり、私たちの心と体が「気持ちいい」という感覚を求めているのです。

後述しますが、私たちが「気持ちいい」と感じることには、自律神経の働きや腸から脳への指令伝達などが深く関与しているのです。

サウナには免疫力を向上させる効果も期待できるため、感染症対策のために私たちの体がサウナを求めている・・・・というのはやや飛躍し過ぎかもしれませんが、近い将来そのようなエビデンスが発表されるという推測も、夢物語ではないかもしれません。

サウナがさびついた自律神経のスイッチを動かす!

自律神経とは私たちの意識とは無関係に働き続ける神経のことで、主に血管に沿って全身に張りめぐらされ、脳と各臓器とをつないでいます。

この自律神経が正常に働くからこそ、私たちは生きていける…… いわば「生命維持装置」となる神経です。

たとえば、私たちの意識が及ばない睡眠中であっても、心臓は止まることなく鼓動し続けていますし、その他すべての臓器も働き続けています。

24時間365日、私たちがあれこれ意識しなくても、自律神経が黙々と働き続けてくれるおかげで生命活動は維持されるのです。

この自律神経のバランスが崩れると、当然私たちの体にさまざまな不調が現れます。

いろいろな要因によって乱れがちな自律神経ですが、そのバランスを整えるために、サウナは大変有効なのです。

高温のサウナで体を温め、すぐに水風呂や水シャワー、外気浴によって体を冷やす......この急激な温度差によって、自律神経に適度な刺激を与えることができます。

このとき、血管は一度ギュッと収縮してからすぐに拡張されるため、肉体疲労やさまざまなストレスによって滞りがちな血流がスーッと流れ出します。

複数回、サウナに入ることで、体を「温める→冷やす」がくり返されるため、血液の流れがスムーズになり、多くの不調が改善されて体の調子がよくなる………これが「ととのう」と呼ばれる現象の正体なのです。

私たちの体調は、血流の良し悪しによって大きく左右されます。その血液の流れをココントロールしているものこそが自律神経です。肉体疲労や日々のストレスによって自律神経がさびついてしまった状態では、体の不調は改善されないまま蓄積し、思わぬ大病に陥るリスクが増大してしまいます。

せっかくのサウナブームの到来です。

ぜひ、みなさんもお近くのサウナを上手に活用して、自律神経のさびを落とし、血流がアップするスイッチをONにしましょう。

医者が教える 心と体が本当に整う サウナ習慣
小林 弘幸
1960年、埼玉県生まれ。順天堂大学医学部教授。1992年、順天堂大学大学院医学研究科博士課程修了後、ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科を経て、順天堂大学小児外科学講師・助教授を歴任。
日本スポーツ協会公認のスポーツドクターでもあり、自律神経のバランスを意識的にコントロールすることで、心身のパワーを最大限発揮できることを提案。数多くのトップアスリートのコンディショニング、パフォーマンスの向上指導にかかわっている。自律神経研究の第一人者であり、書籍も多数刊行している。

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