矢野経済研究所
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原油相場の軟調が続く。世界の原油市場は2022年2月のロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて急騰、中東産、北海産、米国産原油は年初の約1.3倍、1バレル110ドル台へ跳ね上がった。しかし、夏場以降は下落に転じ、この3月には1バレル70ドル台、2021年秋口の水準まで低下した。国際エネルギー機関(IEA)は「下半期は需給がタイトになる」との見通しを発表しているが、ここへきて米国産原油の先物指標(WTI)は4週連続で下落、12日には1バレル70ドルを割り込んだ。

米国産原油急落の背景には連邦政府債務の上限問題も指摘できるが、相場低迷の直接的な要因は世界経済の先行き不透明感である。原油需要の牽引役である中国の4月の消費者物価指数は前年同月比+0.1%、生産者物価指数は前年同月比▲3.6%のマイナス、前者は2年2ヵ月ぶりの低水準、後者は7カ月連続の下落である。米中対立や構造改革の遅れが回復スピードを鈍らせる。一方の欧米経済も高インフレに伴う金融引締めの長期化、米地銀の破綻など、先行き不透明感が募る。また、コロナ禍にあって膨張した途上国の債務問題も深刻だ。

こうした中、日本でも4月の輸入物価指数は円ベースで前月比▲2.3%、前年同月比▲2.9%といずれもマイナスに転じた。円ベースで前年同月比▲9%となった石油・石炭・天然ガスの下落が主因である。ただ、これまでのコスト上昇を受けての価格転嫁が進展、4月の企業物価指数は前年同月比5.8%のプラスとなった。とは言え、伸び率は昨年12月以降4か月連続で縮小している。実質+1.6%となった1-3月期のGDPも輸出は前期比▲4.2%と6四半期ぶりのマイナスとなっており、世界景気の後退が懸念される。

16日、政府は電力大手7社から出されていた一般家庭向け規制料金の値上げ申請を了承した。一般家庭の電気代は6月1日から15.3%から39.7%値上げされることになる。電力販売におけるカルテルなど一連の不祥事や原油相場の情勢等を踏まえ値上げ幅は圧縮された。とは言え、実質的な地域寡占事業者による生活コストの値上げは直ちに家計を圧迫する。「激変緩和措置」の延長など消費マインドの政策的下支えは必須であろう。各社は一様に「経営改善に努力する」旨のコメントを発表しているが、と同時に、現行の10社体制、総括原価方式、送配電ネットワークの在り方など、電力供給体制の全体像についてあらためて問い直していただきたい。

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代表取締役社長 水越 孝