(本記事は、中條 一夫氏の著書『できるビジネスマンは日本酒を飲む ―外国人の心をつかむ最強ツール「SAKE」活用術』=時事通信社、2020年10月28日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
日本人も間違える「日本酒」と「清酒」と「サケ」の違い
「日本酒というお酒は海外ではサケと呼ばれています」
多くの日本人はこの文を読んでも違和感を感じないと思いますが、しかし、これを外国語に訳しなさいと言われたら戸惑う人も多いと思います。
日本酒のことを英語では「サケ」と言います。韓国語でも最近はハングルで「サケ」と読み書きします。中国語では「清酒」または「日本清酒」と言います。
外国人に日本酒の説明をする前に、まず日本語の「酒」「清酒」「日本酒」「サケ」の違いを確認しておきましょう。
「酒」は「アルコール飲料」だがその代表例は日本酒だったり焼酎だったりする
私の故郷の北九州市内でラーメン屋のメニューに「ビール」と並んで「酒」と書いてあったら日本酒ですが、鹿児島市内のラーメン屋で「酒」を頼んだら芋焼酎のお湯割りが出てきました。さすが鹿児島、アルコール飲料のデフォルトは芋焼酎。
「清酒」は「濁酒」との対比で使われる
大昔は「酒」と言えば米を発酵させた粥状のものでしたが、それを濾して澄んだ液体を飲むようになると、前者を「濁酒」、後者を「清酒」と呼び分けるようになりました。
「清酒」は「洋酒」との対比で「日本酒」とも呼ばれるようになる
明治時代に西洋のさまざまな酒が輸入されるようになると、これらを総称して「洋酒」と呼ぶようになり、洋酒に対して従来の清酒を「日本酒」と呼び分けるようになりました。この時点では「日本酒」は「清酒」と同じ意味です。酒税法では「清酒」が正式名称です。
「日本酒」は「日本産清酒」の意味に限定して使われるようになる
近年、海外各地で清酒が造られるようになり、海外の米で日本の酒蔵が清酒を造る例もでてきました。そこで「日本酒」の意味を明確化することとなり、二〇一五年、日本産の米を使い日本国内で造った清酒のみを「日本酒」と表示するというルールができました。
これは製品表示のルールなので、たとえば「イギリスに日本酒の酒蔵が造られました」というニュースを報じたメディアが処罰されるわけではありませんが、用語の使い方としては不正確ということになります。
「サケ」は外国人が「清酒」の意味で使うが「東洋の酒」と混同する人もいる
近年、世界各地に日本酒が輸出されて「サケ」と呼ばれるようになりました。わざわざ「ジャパニーズ・サケ」と呼ばれることは少なく単に「サケ」と呼ばれています。したがって「サケ」は「清酒」と理解すれば混乱は生じません。米国産の清酒が韓国に輸出されて韓国の居酒屋で飲まれていますが、韓国人はこれを「サケ」と呼んでいるので問題はなく、むしろ日本人駐在員がこれを「日本酒」と呼んでいるのが不正確という不思議な状況になっています。
ただし、日本酒が普及する以前に中国の白酒や韓国の焼酎がサケと称して売られていたこともあります。日本のプレゼンスの少ない国・地域ではまだ「東洋の酒」という意味で「サケ」という単語を使っている人もいるようなので注意が必要です。
「ライスワイン」は外国人が日本酒以外にもさまざまな意味で使うので要注意
なお「日本酒はワインに似ていますがコメからできています」という文脈で「ライスワイン」と表現することは決して間違いではありません。この場合の「ワイン」はブドウに限定されない広い意味のワインという意味です。ただし「コメを原料とするワイン」という意味では紹興酒も米マッコリもライスワインですし、みりんもライスワインと呼ばれることがあるので、これらと混同されないように注意が必要です。
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