赤字会社の9割を黒字化させた経営の基本
岩永 經世
1948 年長崎県生まれ。早稲田大学大学院商学研究科修了。 会計事務所をへて1984 年岩永經世税理士事務所開業、㈱IG プロジェクト設立。2007 年アイジータックス税理士法人、2014 年5 月、全国会計人等の共同出資による コンサルティングファーム、 ㈱日本BIG ネットワーク(通称:Ja-BIG)を設立する。 継続的なサポートを可能にするMAS 監査(未来会計による監査システム)をつくりあげ、 業種業態を問わず経営計画の策定をサポートする。著書に『社長、経営はぜんぶ「逆算」でやりましょう』(あさ出版)。株式会社日本BIG ネットワーク 代表取締役、 アイジータックス税理士法人 代表社員、 IG会計グループ代表。

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会計:量から質の時代。B/Sを重視する。

「B/Sと現場を見れば、赤字の原因がわかる」という言葉は澤田秀雄氏※の講演での話であるが、その通りである。

「B/S」とは、バランスシート(Balance sheet)の略称で、決算書の一つである。よく、「P/Lは何とか読めるが、B/Sはねぇ」と苦手意識をもっておられる経営者の方が多いようだ。

私たちは、その会社が儲かっているのかどうかを判断するときはP/L(損益計算書。profit and loss statement)をみる。そして、つぶれる心配がないかどうかは「B/S」をみて判断する。つまり、P/Lは一年間でどれだけ儲かったのか、損したのかを具体的な数字で示したものである。そして、「B/S」は一定時点における財産の状態を示したものであり、その会社がどのようにして資金を調達し、運用しているかがわかる。「B/Sをみれば、その会社の歴史がわかる」というが、全くその通りで「過去から積み上げてきた経営の結果」を表わしている。

たとえば、40年続いた会社の自己資本が2億円(資産5億 − 負債3億)だとしよう。

これを一年に換算すれば、500万円(2億 ÷40年)となる。つまり、この会社は、途中で増資をしていない限り、40年間ずっと利益を出し続け、毎年500万円の内部留保をしてきたことになる。

P・F・ドラッカーの次の言葉が思い出される。

「経営的な進化とは、リスクを負う能力の増大であると定義できる」

ここでいう「リスクを負う能力」とは、内部留保すなわち自己資本のことであると考えている。

つまり、リスクとは変化のことであり、その変化に適応できてこそ、経営的な進化がある。まさに、自己資本の充実とは、その会社の変化に対する適応力の大きさをいうのである。

IG会計グループの「未来会計を経営に活かそう!」という提案の主旨は、まさに、この意味においてである。リスク計算を徹底して行うと、経営力が高まり、次のような効果が生まれてくる。

① 会社を絶対に潰さない仕組み
② 企業価値を高めることができる仕組み

このために、まず重視すべきことは自己資本比率を高めることである。日本の企業は間接金融(銀行借入れ)に依存してきた歴史があるので、低いことで知られている。

これが20%以下であれば、いつ潰れてもおかしくないという人もいる。M&Aにおいても、「売れる会社、つまり魅力のある会社」とは自己資本の内容がいい会社である。

量から質の時代である。「B/S」重視の経営が求められる。

澤田秀雄
日本の実業家(1954 ~)。HISの創業者。

監査:MAS監査で「骨格」経営へ変身する。

少し長めの引用であるが……。

堅い皮膚で支えられている生物は、ある一定の大きさと複雑さ以上には成長できない。陸上生物は、それ以上成長するには「骨格」を必要とする。しかるに、皮膚が骨格に進化することはない。両者は発生源が異なる異質の器官である」( ダーシー・トンプソン※)

ピーター・F・ドラッカーが、組織の持続的な成長にはマネジメントがいかに重要であるかを説くために、氏の大著『マネジメント』の中でイギリスの生物学者の説を比喩的に引用したものである。実に、いい得て妙である。

いうまでもなく、堅い皮膚で構造を支えている昆虫とは、オーナー経営者がワンマンで経営する企業のことである。そして、「骨格」で支える脊椎動物とは、トップマネジメント・チームを擁する企業のことをいう。

多様性、混沌、そんな環境の中で、多くの中小企業が大変、苦しんでいる。明るい未来図が描けないという。いままでのやり方は通用しないのでは、と不安だという。ワンマンの神通力が失せたのだろうか、元気がない。

「いまは、不況。そのうち景気が戻ってくれば……」という景気循環論のパラダイムは捨てなければならない。もっとも危うい考えだ。環境のせいにしていては何も変わらない。むしろ、状態は悪化するだけである。

「激変の21世紀は、中小企業の時代。なぜならば、変化に柔軟かつスピーディに対応できる創造性に富んだ経済主体としての存在こそが中小企業の特徴だからである」ともてはやされて10年たつ。なぜか、減少の一途。

なぜ、多くの中小企業がその特徴を活かせないで衰退しているのだろうか?

解は、皮膚と「骨格」の違いにある。組織の構造を皮膚から「骨格」へ転換できずにいるのだ。つまり、特徴を活かすためには、マネジメントの組織化が必要なのである。

今年も、IG会計グループの新年度がスタートした。今年の基本方針は、「エグゼクティブになろう!」である。

メンバーの一人ひとりにエグゼクティブとしての自覚を持って、思考し、行動してもらおうという方針だ。エグゼクティブとはマネジメント思考ができる人材という意味である。

マネジメントとは計画と実践の統合であり、組織のなすべき成果へ責任を負うということである。

IG会計グループの主力商品である「MAS監査※」は、皮膚で支える経営から「骨格」で支える経営へと組織をイノベーションすることが目的である。

組織の衆知を集める、「骨格」経営へ変身してみませんか!

ダーシー・トンプソン
スコットランドの生物学者(1860 年~ 1948 年)。
著作“On Growth and Form” の著者として知られる。

MAS監査
企業に未来会計のサービスを提供するためのビジネスモデル。