人材分析が組織を強くする8つのメカニズム
(画像=Tierney/stock.adobe.com)

(本記事は、小山 昇氏の著書『会社を絶対潰さない 組織の強化書』=KADOKAWA、2023年1月20日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

社員の特性を把握することが強い組織づくりの第一歩

人材分析が組織を強くする理由

次に、エマジェネティックスⓇ(以下、EGと表記)を例に、「社員の特性を知ることの必要性」について説明します。

武蔵野は、EGの思考・行動特性、エナジャイザー、MARCO POLOといったツールを組み合わせることで、総合的な人材戦略を行っています。

ここでは、その中のEGの思考特性のみを取り上げて、人材分析の大切さをわかりやすく解説していきます。

EGを使うと何がわかるかというと、

「その人が、どのような思考特性をどれくらいの割合で持っているか」

を明らかにできます。また、行動特性も可視化できます。

人は誰でも、次の「4つの思考特性」を持っており、どの特性がどれくらいの割合を占めているかは、人によって異なります(詳細は155ページ)。

会社を絶対潰さない 組織の強化書
(画像=『会社を絶対潰さない 組織の強化書』より)

【4つの思考特性】

①分析型……数字やデータにもとづいて、論理的、合理的思考などによって理解を深めるタイプ。
②構造型……計画されたとおりに確実に実行する。予測できる未来を好むタイプ。
③社交型……人との関係性を重視し、人の気持ちを最優先するタイプ。
④コンセプト型……関心や興味がさまざまなことに向き、次々に変化するタイプ。

社員の特性を把握すること(人材分析)が、強い組織づくりの第一歩です。

【人材分析が組織を強くする8つの理由】

①社員の適性を伸ばす組織づくり(人事異動)が可能
②それぞれに向いた「仕事の進め方」がわかる
③新規事業の成功率が上がる
④ナンバーワン、ナンバーツーを動かしても、戦力が落ちない
⑤相互補完的な組織をつくることができる
⑥事業計画にふさわしい人材を採用できる
⑦コミュニケーションミスがなくなる
⑧内定離職率、新卒離職率が減る

①社員の適性を伸ばす組織づくり(人事異動)が可能

分析ツールを運用すれば、社員の適性(得意なこと、向いていること)を伸ばす組織づくり(人事異動)が可能になります。

「あの人は分析型(分析型の割合が顕著)なので、各種データの収集、管理、分析を任せよう」
「あの人は構造型なので、ルーティンワークを任せよう」
「あの人は社交型なので、営業を任せよう」
「あの人はコンセプト型なので、新事業のプランニングを任せよう」

といったように、社員の特性に合わせて仕事を割り振ることが可能です。

②それぞれに向いた「仕事の進め方」がわかる

社員の特性がわかれば、同じ仕事を任せるときも、「その社員にもっとも適したやり方」で仕事を進めることができます。

「新規顧客の獲得」であれば、

「分析型は、どこに、どのようなお客様がいるのか、市場を分析・予想する」
「構造型は、マニュアル・計画を正確につくる」
「社交型は、人と人のつながり(紹介や口コミ)から顧客の獲得を目指す」
「コンセプト型は、今までとは違う新しいアプローチを試す」

といったように、それぞれの型に向いたやり方で結果につなげることができます。

③新規事業の成功率が上がる

新規事業を立ち上げるのであれば、人や社会に対する関心が強い「社交型」と、新しいことに挑戦するのが好きな「コンセプト型」を中心にプロジェクトを立ち上げます。

そして、収益が見込めるようになったあとで、計画を着実に実行する「構造型」と、しくみづくりのできる「分析型」に少しずつ変えていくと、事業を安定化できます。

④ナンバーワン、ナンバーツーを動かしても、戦力が落ちない

その部署のナンバーワン、ナンバーツーをほかの部署に移しても、抜けたナンバーワン(ナンバーツー)と同じ特性(似た特性)を持つ人をあらたに配置すれば、穴を埋めることができます。結果を出している人と同じ特性を持つ人のほうが、結果を出しやすいからです。

反対に、「別の部署に行ったほうがその人の特性が生きる」という理由で人事異動をする場合は、抜けた人と「異なる特性」を持つ人材を投入すると、組織力が上がる可能性があります。

⑤相互補完的な組織をつくることができる

「社交的だけれど、分析が苦手な上司」には、「分析が得意な部下」をつけるなど、違う特性を持つ者同士を組み合わせれば、補完し合うことができます。

また、「分析型」「構造型」「社交型」「コンセプト型」のメンバーをそれぞれ集めて組織をつくれば、すべての特性を網羅できるので、相互補完的な関係を築くことが可能です。

そして、組織内に4つの思考特性がすべて揃っていると、幅広い角度からアプローチできます。

⑥事業計画にふさわしい人材を採用できる

「会社のIT化を進めるために『論理的な分析が得意な人材』を採用する」「営業に力を入れるために『社交的かつ行動的な人材』を採用する」など、事業計画にふさわしい人材を採用することも可能です。

⑦コミュニケーションミスがなくなる

自分の話が相手に理解してもらえないとしたら、その理由のひとつは、「相手が理解できるように伝えていないから」です。

特性が違う者同士は、コミュニケーションミスが起こりやすい。

そこでわが社は、社員のプロファイルを張り出し、「誰が、どのような特性なのか」をシェアしています。

「誰が、どのような特性か」がわかれば、

「あの人は論理的な思考をするから、数字を使って伝えたほうが理解してもらえる」
「あの人は段取りを重視するから、マニュアルを使って具体的に説明しよう」
「あの人は数字に苦手意識を持っているから、理詰めで説明するより心情的な要素を交えながら話をしてみよう」

といったように、相手に合わせたコミュニケーションが可能になります。

⑧内定離職率、新卒離職率が減る

採用の段階から分析ツールを活用して、「武蔵野の考え方を理解している人」「ほかの社員と価値観を合わせることができる人」を見極めているため、内定離職率、新卒離職率を減らすことができます。内定者が入社を迷ったり、新卒社員のモチベーションが下がったりしたときは、彼らと同じ思考特性を顕性としている社員にフォローさせます。同じ思考特性なら、「どのようにアドバイスをすれば気持ちが前向きになるか」がわかるからです。

会社を絶対潰さない 組織の強化書
(画像=『会社を絶対潰さない 組織の強化書』より)
会社を絶対潰さない 組織の強化書
小山 昇
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。東京経済大学卒。1976年日本サービスマーチャンダイザー(現・武蔵野)に入社、1989年より現職。「落ちこぼれ集団」を毎年増収増益の優良企業に育てる。2000年、2010年日本経営品質賞受賞。2001年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開。主な著書に『経営計画は1冊の手帳にまとめなさい』『99%の社長が知らない 会社の数字の使い方』『99%の社長が知らない 会社の数字の使い方』(いずれもKADOKAWA)などがある。

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