「やる気のない社員」のおかげで組織が強くなる理由
(画像=ShutterB/stock.adobe.com)

(本記事は、小山 昇氏の著書『会社を絶対潰さない 組織の強化書』=KADOKAWA、2023年1月20日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

「やる気のない社員」が組織を強くする

やる気がないからといって、ダメ社員ではない

1996年くらいまで、私は社員に「頑張れ、頑張れ、もっと頑張れ」とハッパをかけていました。すると社員は、「はい!」と返事はするものの、いっこうに頑張らない。「はい!」は、「聞こえています!」の意味で、「頑張ります!」の意味ではなかった(笑)。

この経験から、私は、

「頑張りたくない人に、『頑張れ』と声をかけても、意味がない」

ことに気がつきました。

お腹が空いていない人、お腹がいっぱいの人に「大盛りの焼肉」を差し出したところで、相手は喜ばない。それと同じです。

「出世したい」「もっと給料がほしい」といった成長意欲がある人には、相応の量の仕事と、責任を与える。けれど、「今の仕事でそこそこ結果を出せればいい」「最低限の給料がもらえればそれでいい」「出世には興味がない」という人には、無理をさせなくていい。

仕事に対する考え方は人それぞれですから、全員が全員、同じように頑張る必要はないわけです。

武蔵野にも、「やる気のある社員」と「居(い)る気の社員」がいます。居る気の社員とは、「余計な仕事はせず、最低限の給料をもらえれば満足する社員」のことです。

中小企業の社長の多くは、「居る気の社員は、ダメ社員」「居る気の社員は、お荷物社員」とネガティブなレッテルを貼りがちです。

ですが私は、居る気の社員に対して、寛大かつ楽観的な社長です。居る気の社員はウエルカムです。なぜなら、

「居る気の社員がいるから、やる気のある社員がさらに伸びていく」
「居る気の社員がいるから、組織が強くなる」

からです。

経営計画書の「人事評価に関する方針」にも、

「頑張った人、頑張らない人の給料・賞与に格差をつける」
「チャンスは平等に与え、学歴による差別はしない」

と明記しています。それを百も承知の上で、「居る気でいい」「頑張らなくてもいい」と決めたのであれば、その考えを私は尊重します。「居る気」だからといって、社員を辞めさせることはありません。

わが社の人事評価は、相対評価です。相対評価とは、グループに属する社員を比較して、評価結果に順位をつけるやり方です。

S(高評価)→A→B→C→D(低評価)の順番になっていて、居る気の社員は、基本的にC・D評価です。

居る気の社員を辞めさせてしまうと、ほかの社員がC・D評価に落ちることになります。するとやる気のある社員のモチベーションが下がりやすくなります。

「あの人(居る気の社員)がいるから自分はC・D評価にならなくて済んでいたのに、あの人がいなくなると、今度は自分がC・D評価をもらうかもしれない。それは嫌だ」と萎縮することもあります。

しかし、居る気の社員が常にいれば、やる気のある社員は「自分がビリになる可能性は低い」ため、安心して頑張れます(もちろん、居る気の社員がいてもやる気のある社員がD評価に落ちることもあります)。武蔵野にとって居る気の社員は、やる気のある社員のモチベーションを保つ上でも貴重な存在です。

それに、居る気の社員も、必要に迫られ、「やる気を出す」ことがあります。

「結婚する」「子どもができる」「子どもが進学をする」「家を買う」「定年が迫っている」といったライフイベントがあると、「今のままではまずい」と焦りはじめ、少しずつ頑張るようになります。

「本人がやる気になるのを待つ」
「やる気を出すまでは、無理に期待をしない」

これが居る気の社員との向き合い方です。

社員には、権利だけでなく「義務」がある

私は、居る気の社員を認めています。ですが、居る気の社員にも、「最低限の仕事」はしてもらいます。

最低限の仕事をするのは、「社員の義務」だからです。

社員には、会社で仕事をする上で、多くの「権利」が認められています。

「提供した労働力に対して賃金を受け取る権利」「休日や年次有給休暇を取得する権利」「残業代などの割増賃金を受け取る権利」「自由に退職する権利」などです。

一方、社員には、「義務」もあります。

「会社に対して労務を提供する義務」「労働契約で交わした内容の仕事をする義務」「会社の重要な情報を外部へ漏らさない義務」「会社の信用を失う行為をしない義務」「就業時間中は仕事に専念する義務」などです。

2000年度に「日本経営品質賞」を受賞する前の武蔵野は、社員が権利ばかり主張する会社で、義務がおろそかになっていました。

「こんなに頑張っているんだから、もっと賞与を払え」
「休みが少ないから、もっと休ませろ」

ですが、「ああしてほしい、こうしてほしい」と要求する割に、サボってばかり(笑)。社員だけでなく社長の私も「社員には義務がある」ことに気づいていなかったのですから、組織が弱いのも当然です。

社員には、権利だけでなく義務もある。そのことを理解した上でマネジメントをするようになって、武蔵野は強くなりました。

社員は、会社が決めたルールを守る。経営計画書に書かれた方針を守る。

「最大、最高」でなくてもいい。最小限度、最低限度でかまわないので、義務を果たす。そして、義務を果たした社員には、それにふさわしい権利を認める。

権利と義務の関係を社員に理解させることも、社長の役割のひとつです。

会社を絶対潰さない 組織の強化書
小山 昇
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。東京経済大学卒。1976年日本サービスマーチャンダイザー(現・武蔵野)に入社、1989年より現職。「落ちこぼれ集団」を毎年増収増益の優良企業に育てる。2000年、2010年日本経営品質賞受賞。2001年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開。主な著書に『経営計画は1冊の手帳にまとめなさい』『99%の社長が知らない 会社の数字の使い方』『99%の社長が知らない 会社の数字の使い方』(いずれもKADOKAWA)などがある。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます