ピンチはチャンス! 非常時でも動じない「強い会社」の作り方
(画像=MonsterZtudio/stock.adobe.com)

(本記事は、小山 昇氏の著書『会社を絶対潰さない 組織の強化書』=KADOKAWA、2023年1月20日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

不測の事態こそ、事業構造を変えるチャンス

従来どおりの業務ができないのなら、別のやり方を模索する

新型コロナウイルス感染症の蔓延などの不測の事態に陥ったとき、経営者はおおむね、「2つ」のタイプに分かれます。

①「企業努力だけではどうにもならない」と、悲観的にとらえるタイプ
②「今こそ会社を変えるチャンス」と、前向きにとらえるタイプ

私は、②のタイプです。厳しい経営環境でも手をこまねいていたり、状況が好転するまでじっと待つことはありません。私が「ピンチはチャンス」と考えているのは、

「ピンチでなければ、できないこと」
「会社の業績が良いときは、手をつけられないこと」

があるからです。

ピンチは、今までのやり方、今までの考え方を捨てるチャンスです。

「さぁ困った、どうしよう」と嘆いたところで、事態が好転することはない。今までのやり方・考え方が通用しないなら、新しいビジネスモデルをつくるしかありません。

【ピンチでなければできないことの一例】

● 大規模な人事異動/組織変更

ピンチでは、社内の空気がよどみ、活気がなくなります。そこで私は、緊急事態宣言の発令期間中に、会社はじまって以来の大規模な人事異動を行いました(正社員280名中、200名が異動)。

変化とは、人を変えることです。とくに、長(リーダー)が変わると、組織は変わります。逆に、人を変えなければ、組織は変わりません。また、大規模な人事異動をすると、社員は真剣になる。「うちの会社は大丈夫だ」「自分は大丈夫だ」という気の緩ゆるみもなくなります。

当然、一時的に現場は混乱します。しかし、組織を活性化させるためには、人事異動や組織変更で会社を変化させる必要があります。

● 経費削減

仕事のやり方を変えることで、経費を削減することが可能です。

非常時は「売上を伸ばして利益を出す」のが難しいため、「今の売上のままで、利益を上げるには、どうすべきか」の視点で経営を見直します。

コロナ禍は「人との接触」が制限されました。そこでわが社は、「アナログ(対面)」で行っていた業務を「デジタル(オンライン)」に切り替えました。対面によるセミナーを減らして、オンラインセミナーに変更した結果、会場代、懇親会代、資料代(印刷費用)、社員の残業代を削減できました。

ITツールの導入にはお金がかかります。ですが、削減できる経費と導入コストを比較してみれば、「IT化を進めたほうが得」だとわかります。武蔵野では、導入コストや通信費よりも「減った残業代」のほうが大きくなって、生産性が上がりました。

経費削減の注意点は、「粗利益を出すための改善策とセットで考える」ことです。

経費を減らせば損益分岐点が下がるため、一時的には持ちこたえることができます。

ですが、同時に「稼ぎ(粗利益)を増やす」ための策を講じなければ、早晩、会社は潰れてしまう。経費を減らすだけでは、根本的な解決策にはなりません。

粗利益を出すための基本的な考え方は、

「業績のいい部署、売上が落ちていないサービス、商品に戦力を投入する」

ことです。業績の悪い(儲かっていない)部署の人を減らし、業績のいい部署に異動させます。このとき、新しい人材(業績の悪い部署から異動してきた人材)には「既存のお客様のフォロー(守りのポジション)」を担当させます。まだ実績がないため、新規開拓は荷が重いからです。

そして、以前からいる人材(実績のある人材)には、新規開拓(攻めのポジション)に専念させます。

こうすると、業績の悪い部署の損益分岐点を下げると同時に、業績のいい部署の顧客数と粗利益をさらに伸ばすことが可能です。

● 事業承継(相続対策)

非常時は、事業承継のチャンスです。会社の成長期は、自社株の1株当たりの株価(評価額)が上がります。株価が上がれば、株式を承継する後継者に資金負担(譲渡の資金、相続税、贈与税)を強いることになります。

一方、会社の業績が悪くて赤字のときは、自社株式の株価が低いため、後継者の資金負担を軽くできます。

会社を絶対潰さない 組織の強化書
(画像=『会社を絶対潰さない 組織の強化書』より)

業績がいいときは「社員教育」にお金を使う

業績がいいときにすべきなのは、

「未来にお金を投資する」

です。具体的には、

「社員教育にお金を使って、不測の事態にも対応できる人材を増やす」です。人材育成は時間を要するものが多く、すぐには成果が出ないため、業績がいいときほど教育に投資をして、「社員教育の量」を増やしておくことが大切です。

社員教育は、本来は無形固定資産です。しかし、計るモノサシがないから、全額「経費」になる。利益が出ている会社が社員教育をすると、節税にもなります。

ピンチは、考え方次第でチャンスに変わります。今がどん底でも、打つ手は無限にあります。私はこれまで幾多の非常事態に見舞われ、その都度、めいっぱい頭を使い、汗をかいて乗り越えてきました。

その結果、わかったことがあります。それは、

「試練、逆境、失敗、困難、ピンチに耐えた経験は、将来、大きな財産に変わる」

ことです。

やまない雨も、明けない夜もない。だから苦しくても前を向く。歯を食いしばって全力を出し切る。努力して、努力して、努力して、努力する。

組織は非常事態をバネにして、大きく成長する。

今の悩みや苦しみも、いつかは過去のものになります。その苦しみが組織を強くします。

会社を絶対潰さない 組織の強化書
小山 昇
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。東京経済大学卒。1976年日本サービスマーチャンダイザー(現・武蔵野)に入社、1989年より現職。「落ちこぼれ集団」を毎年増収増益の優良企業に育てる。2000年、2010年日本経営品質賞受賞。2001年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開。主な著書に『経営計画は1冊の手帳にまとめなさい』『99%の社長が知らない 会社の数字の使い方』『99%の社長が知らない 会社の数字の使い方』(いずれもKADOKAWA)などがある。

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