選ばれる会社になる ブランディング経営
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(本記事は、川﨑 英樹氏の著書『選ばれる会社になる ブランディング経営』=あさ出版、2022年9月20日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

真のブランディングに近道はない

「品質」がブランディングの基盤である

一般的にブランディングと言うと、キャッチコピーやデザイン、写真に凝ることなどを最初に思いつくと思います。たまたま客は目に付くコピーや写真があれば、「美味しそう」とか「いい商品・サービスがありそうだから、行ってみよう」と足を運びます。けれども、そこでキャッチと実像の辻褄が合わないとリピーターにはなってくれません。「極上の接客」と書いてあったのに、「何? この接客」と思ったら、二度と来店してはくれないでしょう。すると当然、売上が下がっていきます。最悪の場合、「客離れ」という恐ろしい事態を招きかねません。だからこそ、商品の品質がまず大事になってくるのです。

品質とは、モノに限りません。

たとえばセレクトショップの品質は何かというと、商品の品質、接客の品質、お店作りの品質、見せ方の品質、などすべての商品、サービスです。商品の配置や、お店のスタッフの立ち姿勢ーーこれだって立派な商品なのです。とてもかわいい洋服をかわいくて上品な店員さんが着ていたら、好感度が増します。スタッフの接客態度そのものが、ブランディングになるのです。

ブランディングとは、キャッチコピーやデザインだけではありません。それはただの「見せ方」に過ぎないのです。

一番大事なのは、商品の品質(クオリティ)です。

見せ方や訴え方で集客を図るのではなく、品質そのものを高めていくことがブランディングの本質です。高品質の商品が、企業価値を高めてくれるのです。

キャッチコピーだけでは、お客様はファンになってくれません。

インターネットの時代。たまたま客は来るかもしれませんが、品質が伴っていないと、逆に悪く書かれてしまうことがあります。

高品質のオリジナル商品・サービスを創り上げていくことこそが、ブランディングの王道なのです。

にもかかわらず、ブランディングというものを「実像以上に良く見せるためのテクニック」といった風に間違って捉えている方がとても多い。そうした見せかけのブランディングは、真に企業価値を高めることにならないばかりか、デメリットの方が大きいのです。

顧客化のためには「想い」を込めた商品・サービスを提供すること

真のブランディングとは、商品やサービスの品質を磨きあげ・高めることであり、自分たちの「想い」を込めた商品を提供することです。

真のブランディングへの取り組みは、長い道のりが必要です。すぐに成果が上がるというものではない。

もしも企業の売上が下がっていて、先行きが見えなくなっているのなら、見せかけのブランディングで集客をするのではなく、品質から見直さなければいけないのです。

まずは自分たちだけの、誇りと想いを詰め込んだ商品・サービスを1つでも開発することです。

もちろん、大変な労力を要します。

大変ですが、取り組んだら、「高品質、高価格、高付加価値」が実現することは間違いありません。

実は、中小企業が継続的に好業績を叩き出し続けるためには、ブランディングに取り組むしかないと言っても過言ではありません。

自分たちのオリジナリティを磨きあげ、商品に高付加価値を付けていく。

あなたの会社だけの武器を生かした「商品・サービス」の開発と創造ーーそれこそが今、中小企業が取り組むべきブランディング戦略なのです。

中小企業のブランディング戦略ポジショニング

ブランディング経営に取り組むに当たっては、まずは自社がどのような経営戦略のポジションにあるのか、現状を把握しておく必要があります。「中小企業のブランディング戦略ポジショニング」の図をごらんください。ここでは、大きく分けて、4つの戦略ポジショニングに中小企業を分類しています。

『選ばれる会社になる ブランディング経営』より
(画像=『選ばれる会社になる ブランディング経営』より)
  1. ブランディング戦略……品質が高く、価格も高く設定している
  2. 意気地なし戦略……品質は高いのに、価格を低く設定している
  3. 砂上の楼閣戦略……品質が低いのに、価格を高く設定している
  4. 没落・衰退戦略……品質が低く、価格も低く設定している

本書で提唱しているブランディング経営は、高い品質のオリジナル商品、サービスを創出し、高価格でお客様に提供する1の「ブランディング戦略」のことです。

ところが、誠実に良い品質の商品を作っているけれども、業績が上がらないという中小企業が陥りがちなのが、品質は高くても価格が低いという2の「意気地なし戦略」です。ここでやるべきことは、思い切って高価格の値付けをすることです。

またネットなどで写真やキャッチコピーは華やかに見せている商品でも、いざ取り寄せたらクオリティが伴っていないケースもありますが、これは3の「砂上の楼閣戦略」です。初見のお客様は商品を買ってくれるかもしれませんが、商品の品質が伴っていなければリピーターになってくれることはありません。当然、継続的な売上は望めません。

商品、サービスの品質が低く、価格も低ければ、当然、その企業は衰退していきます。4の「没落・衰退戦略」です。

自社が今、どのポジションにあるか客観的に把握した上で、1の「ブランディング戦略」を目指していきましょう。

選ばれる会社になる ブランディング経営
川﨑 英樹
中小企業診断士 (株)エイチ・コンサルティング 代表
1970年生まれ。佐賀県佐賀市在住。
法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科修了。MBA(経営学修士)。
2015年(株)エイチ・コンサルティングを設立。
小さくてもキラリと光る中小企業に光を当てるべく、常に現場に赴いて取材し、躍進のためのコンサルティングサービスを提供。人の優れた知恵(叡智)を導き、人幸福の企業経営を支援するという理念をコンサルティング指針としている。
趣味は、空手(和道流)、シーカヤック、小説執筆、読書など多数。
メルマガ「赤ひげ診断士のアウトロートーク」連載中。

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