地方の自動車関連企業が健康経営を推進するきっかけとなった30代社員の死
(画像=oatawa/stock.adobe.com)

(本記事は、丸山 勇一氏の著書『なぜ、この会社に人が集まるのか』=あさ出版、2022年7月12日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

社員の死をきっかけに健康経営を推進

丸山自動車は2018年から、健康経営宣言をしています。会社が従業員の健康を守るために労働安全衛生法などの各種法令を遵守するのはあたりまえのこと。それ以上にもっと踏み込んで社員の健康の維持・増進に取り組む経営を「健康経営」と言い、国や自治体も推奨しています。

社員に健康でいてもらいたいという思いが強くなったのは、この年にある社員を亡くしたことがきっかけでした。彼は30代後半の整備士で、ヘビースーモーカーでした。たばこが直接の原因かどうかはわかりませんが、がんをわずらって、奥さんと小さなお子さんを遺して旅立ってしまいました。

以前から会社として禁煙の取り組みはしていました。しかし、葬儀で彼の遺影を抱える奥さんとお子さんを目の当たりにして、取り組みが十分でなかったこと、そして禁煙だけでなく、もっと包括的に社員の健康を守る施策が必要だと痛感しました。

そうした問題意識を持ちつつも具体的なアクションに移せずにいたころ、東京海上日動火災保険さんから、経産省が「健康経営優良法人認定制度」を創設したことを知り、認定取得をご提案いただきました。

いろいろ調べてみたところ、健康経営は善意から社員の健康を守ることだけが目的ではなく、経営にもメリットがあることがわかりました。

残業が多く、社員が健康を維持できないと、病欠で仕事が滞る(アブセンティーイズム)、出社しているものの心ここにあらずでパフォーマンスが上がらない(プレゼンティズム)という状態が生まれて生産性が低下します。

また、社員が病気になれば、たとえそれが仕事と直接の関係がなくても、「あそこの会社はブラックだ」と烙印を押されかねません。そのような評判が立てば、お客様や取引先、さらに就職希望の学生にも不安を与えてしまうでしょう。

国が旗振りをする健康経営の認定を取得すれば、社員を健康にするやり方がわかるだけでなく、会社の生産性を高めたり、「社員を大切にする会社」であることを証明することもできる。そう考えて、認定取得への挑戦を決めました。

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丸山 勇一
MARUYAMA GROUP 代表
株式会社丸山自動車代表取締役
新潟県燕市出身。父が1967年に創業した整備工場を引継ぎ、2012年より現職。年間27,000台という全国屈指の車検台数を誇り、新潟県No.1企業へと成長させる。他にも7つの事業に取り組む。392名いる社員の平均年齢は34歳で、入社3年以内の定着率93%。毎年学生の応募が殺到する超人気企業。また、健康経営に力を入れ、経済産業省「健康経営優良法人ホワイト500」に4年連続認定されている。

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