(本記事は、丸山 勇一氏の著書『なぜ、この会社に人が集まるのか』=あさ出版、2022年7月12日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
軽自動車に絞って自動車販売を展開する理由
丸山自動車が売上を伸ばしている理由の一つとして、車検のみならず、自動車関連のサービスを総合的に手がけていることがあるとお話しました。
お客様との長いお付き合いの中で入口となるケースが多いのは、自動車販売です。私たちの店舗で自動車を買うと同時に損害保険に入り、車検の時期が来たらまたそこで接点ができるわけです。
最初の接点になる自動車販売を拡大すれば、それだけ車検で利用してくださるお客様も増える。その意味では非常に重要な事業です。
ただ、丸山自動車の自動車販売は軽自動車の新車・未使用車に絞っています。
あえて間口を広げないのは、大手販売チェーンと真正面から競い合うことを避けるためです。大手は全国に店舗があり、新車や未使用車を大量に安く仕入れることが可能です。残念ながら地方の中小企業が価格競争で勝つことは難しい。
そこで高級車や普通車は大手に任せることにして、自分たちは軽自動車に特化することにしました。軽自動車の未使用車専門店「ポケットカーズ」を2009年にオープン。現在は県内で3店舗を展開しています。
実は新潟県は、自動車の保有台数の約50%が軽自動車です。道が狭くて入り組んでいる都市部のほうが、軽自動車率が高い印象があるかもしれません。
しかし、都市部は鉄道などの公共交通機関が発達しており、自動車はファミリー用に一世帯一台あれば十分と考える人が少なくない。
一方、地方は自動車がないと移動が難しく、一人ひとりが自分の足として自動車を持っています。世帯単位で見ると、一台目はセダンやミニバンでも、二台目以降は奥さんや娘さん用に軽自動車を買ったりします。
また、新潟県は日本有数の米どころです。農家のお客様も多く、軽トラックがよく売れます。車種を絞っても、市場は案外大きい。車種を絞ると、自動車に詳しくない新卒の社員にも集中的に教育ができます。軽自動車専門店に来店されるお客様は当然、軽自動車目当てです。他の車種も含めて広く浅く知識がある必要はなく、狭く深く知っているほうが喜ばれます。ゆえに価格で競争しなくても大手販売店とも渡り合えたのです。