2月17日、新興・途上国の債務問題に関する円卓会議がオンラインで開催される。会議は国際通貨基金(IMF)、世界銀行、G20の議長国インドの3者が共同議長となり、“持続不可能な債務” の解消に向けて協議がなされる。会議にはG7、中国など主要な債権国とザンビア、エチオピア、ガーナなどの債務国、国際金融協会(IIF)、国際資本市場協会(ICMA)や民間金融機関などが参加する。
会議開催のきっかけはザンビアの債務問題だ。ザンビアは銅価格の高騰を背景に対外借入によるインフラ投資を加速、とりわけ2015年に大統領に就任したルング氏が対中債務を膨張させた。結果、2020年にはユーロ債の利払いに行き詰まり、実質的なデフォルト状態に陥る。経済が混乱する中で行われた2021年の大統領選挙でルング氏は敗北、野党指導者ヒチレマ氏が勝利する。新政権は中国資本を頼った国家プロジェクトを凍結するともとに債権国に対して債務再編の要請を行う。2021年末時点での対外債務は170-200億ドル、うち対中債務は60億ドル、焦点は対中債務の処理だ。
この構図はまさに中国による “債務の罠” の典型である。中国の対外融資は融資条件が不透明で、また、公的セクターと民間セクターの線引きが曖昧であると言われる。債務問題に対しても当事国同士による交渉を優先させてきた。しかし、今回のザンビア問題では中国も国際金融の枠組みの中での協議に同意しており、その意味で前進だ。今後、引き続き顕在化してくるだろう同様の問題に対処するための先行事例となることに期待したい。
コロナ禍による観光収入の減少、ウクライナ問題に伴う食糧や資源の高騰、加えて、欧米当局の金融引締めによる通貨安が新興国の外貨流出と対外債務の返済負担を増大させる。IMFによると2021年末時点の中低所得国の対外債務は9兆3千ドルに達する。今、多額の債務を抱えたこれらの国家財政が危機に瀕しつつある。そもそも政情が安定しない中低所得国にあって格差と貧困の拡大は新たな紛争の火種となる。これ以上の分断はごめんだ。債権国は覇権的な思惑を捨て、債務国の自立再建に向けての債務整理と実効性の高い協調支援を実現いただきたい。
今週の“ひらめき”視点 2.12 – 2.16
代表取締役社長 水越 孝