(本記事は、太田 差惠子氏の著書『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第3版』=翔泳社、2022年11月08日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
【高額介護サービス費支給制度/高額医療・高額介護合算療養費制度】
高額な介護費の自己負担も減らせる?
「限度額」を超えると払い戻しがある
医療費同様、介護保険での費用にも「軽減策」が設けられています。
居宅サービスや施設サービスを利用して、1か月間に支払った自己負担額が上限額を超えるときは、その上限額を超えた分について支給されます。1人分では上限額を超えない場合でも、世帯(例えば両親)の利用者負担の合計が上限額を超えた場合には、按分した額が各々に支給されます。
高額介護サービス費の支給を受けるには、初回のみ申請手続きが必要です。該当する場合は、申請書が送られてきます。2回目以降は、該当すれば自動的に指定口座に振り込まれます。
対象となる利用者負担額とは、保険対象である介護サービス費の自己負担額(1割または2割、3割)です。食費・居住費などの利用料は含まれません。また、住宅改修費・福祉用具購入費も含まれません。
「医療費」と「介護費」は合算できる
さらに、1年間に医療と介護の利用者負担額の合計が上限額を超えた場合に、申請により超えた分が支給される「高額医療・高額介護合算療養費制度」も用意されています。計算期間は、毎年8月から翌年7月までの12か月間で、両親が同一世帯で、同じ医療保険に加入している場合は、両親分を合算できます。
国民健康保険、後期高齢者医療制度に加入している親で支給対象の可能性がある場合には、医療保険者から案内が届きます。ただし、対象期間中に、医療保険の変更があった場合は案内が届かないので、加入の医療保険者に確認する必要があります。
【リバースモーゲージ/不動産担保型生活資金】
「親の自宅」を「担保」に介護費用をまかなう?
「リバースモーゲージ」とは
「自宅」を活用してお金を生み出す制度があります。「家はあるが、月々の年金だけでは介護費用をまかなえない」という場合に役立つ可能性があります。
老後資金などのために自宅(マイホーム)を担保にして銀行や公的機関からお金を借り入れ、死亡した時点で自宅を売却して一括返済する仕組みで、「リバースモーゲージ」と呼ばれています。親自身が住み慣れた家で暮らしながら、生活資金を借り入れることができます。ただし、長生きした場合に、融資額が融資限度額に達してしまうなどのリスクも考えられます。
もともと1981年ごろ、東京都武蔵野市で開始された事業ですが、貸付金を全額回収できない事例なども発生。低所得者向けには国も同様の制度を実施しているなどの理由で、2015年に終了しています。一方、最近では都市銀行、地方銀行などでリバースモーゲージを実施しているところが増えています。金融機関ごとに内容は異なるので、検討する場合は、詳細をしっかり確認することが必要です。
「不動産担保型生活資金」の窓口は社会福祉協議会
国が実施している同様の制度は「不動産担保型生活資金」といいます。所得の少ない高齢者向けで、地域の社会福祉協議会が窓口となっています。
銀行のリバースモーゲージ同様、想定した以上に長生きした場合に、お金を借りることができなくなり、しかも利息は払わなければいけないなどリスクはあります。また、子どもが同居している場合は、制度の対象外で、マンションも含まれません。
●太田差惠子のワークライフバランス http://www.ota-saeko.com/
●NPO法人パオッコ〜離れて暮らす親のケアを考える会〜 http://paokko.org/
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