(本記事は、太田 差惠子氏の著書『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第3版』=翔泳社、2022年11月08日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
【介護資金】
介護の費用は、いくらかかる?
「いくらかかるか」ではなく「いくらかけるか」
介護費用はいくらかかるのか― 多くの人が知りたいことでしょう。すでに説明しているように、介護保険制度を使えば、1割または2割、3割負担でサービスを利用できます。しかし、それは支給限度額までの話。例えば、親が中程度の介護が必要(要介護3)になるとします。支給限度額は27万480円(P67)。1割負担なら2万7048円です。
では、「限度額いっぱい」で、どの程度のサービスを受けられるのでしょう。一例ですが、左図のように利用すると、およそ2万7000円で限度額内に収まります。これで十分と考えるか、不十分と考えるかは、本人や家族のライフスタイルや価値観によって変わってきます。
もし、朝、夜と週末を本人に頑張ってもらう、もしくは家族だけで介護するのが厳しいと考えてサービスを追加すると、増やした部分は10割負担となります。結局、介護の費用は「いくらかかるか」ではなく「いくらかけるか」。予算を決めて、それ以内に抑えるという考え方です。左図よりもサービス利用を減らせば、当然、自己負担額も減ります。
介護保険のサービス費用のほか、医療費やおむつ代もかかるでしょう。まず、資金計画を立て、どのような介護をするかを考えることが重要です。
平均額は「在宅」か「施設」かで異なる
個別に違うとわかっても、介護費用の平均額が気になる人もいるでしょう。在宅で月4・8万円、施設で月12万2000円という調査結果もあります。ただし、在宅でもっとも多いのは月1万〜2万5000円となっています。
【資金計画】
年金、貯蓄、借金…親のお金事情を確認!
介護費用は、原則、親のお金をあてる
介護という行為は子が担うことが多いですが、それはあくまで親の自立を応援するために行うこと。ですから、そこにかかる費用は、原則、親のお金をあてるようにしましょう。
親のお金をあてるには、そもそも親がどれくらいのお金を持っているかを知らなければなりません。
月々の年金額や預貯金の額は?ローンは残っていないか?有価証券や自宅以外の不動産はあるか?……など、知りたいことはいろいろあります。
実際、聞き出してみたら、かなりのローンが残っていることが判明して仰天した、という人もいました。主に、左のような内容は確認しておきたいところです。住民税が課税か非課税かも確認を。
親の資産を把握することが大切だとわかっていても、どのようにして聞き出すか、多くの子の悩みどころです。下手に聞こうとすると、「財産を狙っているのか」と親は気分を害します。
「お金の話」ができる親子関係
左ページ下段に、聞き出すことに成功した事例をあげました。ダイレクトに聞いてうまくいくケースがある一方、知人の体験を話しながら聞き出すのも一案です。いずれにしろ、子が自身を心配して聞いているということが伝われば、親は教えてくれるでしょう(強引に聞くと、法に触れるので注意!)。
お金の話ができるのは、普段から親子の対話ができていてこそだと思います。今後、終末期をどのように迎えたいかなど、デリケートな話題は増えていきます。対話を重ね、深いテーマについても話し合える関係でありたいものです。
●太田差惠子のワークライフバランス http://www.ota-saeko.com/
●NPO法人パオッコ〜離れて暮らす親のケアを考える会〜 http://paokko.org/
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