(本記事は、太田 差惠子氏の著書『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第3版』=翔泳社、2022年11月08日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
【入院費用】
親の「入院費用」はどれくらいかかる?
75歳以上の親の医療費は1割、2割、3割
親が入院した場合、費用はどれくらいかかるのか不安になります。必要となるのは、医療費の自己負担額、食事代(1日3食)、差額ベッド代(希望して個室などに入った場合)、おむつ代や先進医療など保険適用外の費用、そして病院に通う家族の交通費などです。
医療費(外来・入院)の自己負担額は、親の年齢とその所得によって違いがあります。70歳未満の親は3割負担。70〜74歳の親は2割または3割。75歳以上の親は1割〜3割となります。月をまたいだ入院の場合は、月末締めで翌月に、退院時の精算は退院日の前日くらいに、概算の請求書が病室に届けられることが一般的です。事前に請求書の提示がない場合は、こちらから聞いてみるといいでしょう。
80歳の親が大部屋に2週間入院した場合
詳細は「高額療養費制度」(P148)の項で説明しますが、医療費は所得によって「自己負担限度額」が定められており、青天井ではありません。ここでは例えば父親(80歳・一般所得者)が2週間入院したケースを考えてみましょう。左のような形で料金が発生することになります。
意外にかかるのが交通費などの雑費です。交通の便が悪かったり遠方だったりすると、たびたびタクシー利用になることも。それほど遠方でなくても、仕事帰りに寄ろうとすると、「面会時間に間に合わないから」とやはりタクシー利用となりがちです。
また、なかには「おむつ代」が1日1500円などという病院もあり、かなりの出費になることもあるようです。
【特別療養環境室料(差額ベッド代)】
大部屋が満室の場合も「差額ベッド代」が必要?
「病院都合」なら払わなくてよい
親が入院となった場合に、本人や家族の希望で個室に入るのであればいいのですが、大部屋の空きがないとか、治療上の都合などにより個室となってしまうこともあります。このようなケースで、いわゆる「差額ベッド代」は必要となるのでしょうか。
差額ベッド代の正式名称は「特別療養環境室料」といいます。基本的には1〜4人の部屋に入院したときにかかる費用で、健康保険は適用されず、患者に請求されます。
厚生労働省の通達によると、差額ベッド代がかかるのは次のようなケースに限定されています。
- 同意書にサインをした場合
- 患者自らが希望した場合
つまり、もし差額ベッド代の説明を受けておらず、同意書の提示もなかったのなら、支払う必要はないということになります。
注意すべきは同意書にサインを求められたとき
では、同意書にサインするように求められたときには、どうすればいいでしょう。
経済的な事情があるのならば、「支払える余裕がない」とか「大部屋を希望します」とはっきり伝えましょう。大部屋が満床の場合は、入院を断られるかもしれません。それが困る場合は、証拠として同意書にその旨を書き添える(「空きが出たら大部屋希望」と書く)と、当面の料金はかかっても、空きが出た時点で大部屋に移動させてくれるでしょう。
差額ベッド代は大きな金額となるので、トラブルに発展することもあります。行政の窓口に連絡すれば、内容によっては病院を指導してくれます。
●太田差惠子のワークライフバランス http://www.ota-saeko.com/
●NPO法人パオッコ〜離れて暮らす親のケアを考える会〜 http://paokko.org/
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