(本記事は、太田 差惠子氏の著書『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第3版』=翔泳社、2022年11月08日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
【見守りサービス】
独居の親を毎日見守るには?
毎日のサービス利用で見守り
親が一人暮らしの場合、「もし倒れて電話もできない状態になったら……」と心配なものです。
子が毎日電話してもいいのですが、親は心配をかけまいと元気に振る舞うことが多く、万全とはいえません。そこで、「月・水・金の20時」などと決めて、親から電話をかけてもらう人もいます。調子が悪くなると、曜日や時間の感覚が乏しくなり、異変を察知できるというのです。
一方、毎日、何らかのサービスを入れて見守る方法も考えられます。介護保険の支給限度額をオーバーしないよう、ホームヘルプサービスやデイサービスを利用しない日にだけ、食事の宅配サービスをとり入れるのも一案。手渡しにより安否確認を兼ねるサービスが多いからです(P85)。異変を察知したら、家族のところに通報してくれる事業者もあります。
ITを活用して見守る方法
コロナの影響で、離れて暮らす親との対面が難しい社会情勢を体験し、ITを活用した見守りが進歩しています。高齢の親でもスマホを持つ人は増えており、「親にLINEを教えた」「『既読』になるだけで安心できる」という声も聞きます。親にビデオチャットを教えて、動画での対面に成功した人や、「毎日、画面越しに朝食を一緒に食べる」という人も。
機器による「見守りサービス」も多種多様。認知症など心身機能の低下がみられる親でも、部屋にカメラを取り付けて日常の様子を見て確認することで、一人暮らしを継続できているケースもあります。
元気な親だと「カメラは見張られているようで嫌」と拒否感が強いかもしれません。かわいいロボットで見守る商品もあります。また、センサータイプもいろいろ。親がポットのお湯を使った時間や回数、ガスの使用量、冷蔵庫などの使用頻度を、子の携帯電話に通知するサービスなども、生活パターンに変化がないか確認できます。
毎日電話をかけてくれるサービスや緊急時の駆けつけサービスもあります。P86で紹介した緊急通報サービスなどもあわせて内容を吟味し、親子のライフスタイルに合わせて選択したいものです。
「お世話」だけが介護じゃない
あらためて、「介護」とはどんな行為でしょう。
入浴介助、トイレ介助、食事介助などのお世話、身体介助をイメージする人が多いと思います。けれども、筆者は、もっと広い意味で「介護」を捉えて本書を執筆しています。例えば、次のようなことも「介護」だと思うのです。
①別居の場合、ときどき親元に通って行き(もしくは電話をして)、様子を確認する
②どんなサービスを利用すればいいか、本人やケアマネジャーと相談する
③通院に同行して、医師から病状を聞く
④どんな施設を利用すればいいかを調べて見学する
⑤どれだけサービスを使えるか、親の経済状況を確認する
もちろん、直接お世話することも大切な介護です。けれども、家族だけで担うことは困難だと言えるでしょう。そこで、「どんな支援が必要かを確認」し、適切なサービスを入れます。家族の力だけでは支えられない部分にプロの力を借りるのです。決して、親を看ることを放棄するわけではありません。親を看ているからこそ、よりマッチしたサービスを入れることが可能になるのです。
「介護=お世話」との考えを、「介護=お世話、マネジメント」という発想に更新してみませんか?(ただし、親の多くは「サービスなんて使わない」と拒否反応を示します。利用を促すことも、「マネジメント」と考えて、P112などを参考に工夫を!)
●太田差惠子のワークライフバランス http://www.ota-saeko.com/
●NPO法人パオッコ〜離れて暮らす親のケアを考える会〜 http://paokko.org/
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