(本記事は、著者・ニール・パスリチャ、翻訳・長澤 あかね氏の著書『9ルール~自分を変える「黄金の法則」』=大和書房、2022年11月12日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
「質より量」で見えてくるもの
時には本当に、「質より量」が物を言う。
素晴らしい腕を持つ結婚式のカメラマンに、つい尋ねてしまったことはないだろうか? 「どうしたらそんなふうに完璧な瞬間をとらえられるの?」と。僕はある。すると、彼らは一様に同じことを言う。「みなさんよりはるかにたくさん撮っているだけです。3時間の結婚式に1000枚撮るんだから。10秒に1枚撮っているんです。もちろん、いい写真は50枚。それを見つけるために、残りの950枚を捨てるんですよ!」
「ジ・オニオン」の元編集者、トッド・ハンソンの話は、すでにしたと思う。彼は何と言った? そう、「10年間無償でやりなさい」。
セス・ゴーディンも、ポッドキャスト「ザ・ティム・フェリス・ショー」でインタビューされたとき、よく似たアドバイスをしていた。
「私がした失敗の数は、たいていの人よりとてつもなく多いけれど、それをとても誇りに思っています。成功より失敗を誇りに思うのは、失敗はいつも唱えているこんな言葉に基づいているからです。『これは寛大な行動か? これは人とつながる行動か? これはみんなをよい方向に変える行動か? やってみる価値はあるか?』。こうした基準を満たしていれば、自分自身をおだててやらせていいことにしているので、結局やらざるを得なくなるんですよ」
セスは、自己啓発系の人気ポッドキャスト「Good Life Project(よい人生のプロジェクト)」でジョナサン・フィールズにインタビューされたときも、「私はヒュッと一瞬で消えるものが好きなんですよ」と話している。ヒュッと消えるものって? やってみたけどうまくいかなかったアイデアーーそれはヒュッと消えたもの。そして消えたら、また別のことに挑戦する。
では、この本が失敗に終わったら、僕はどうするだろう? そう……ヒュッと消えた場合は。
次のことに移るだろう。
誤解しないでほしい。もちろん、僕はこの本を成功させたい。インタビューでこの本や、この本に書いた考え方について語りたいし、ここでの会話によって人生が救われたとか、意義のある変化を遂げた、進化した、という人たちに出会いたい。それが僕の望みであり、願いだ。
でも、それを決めるのは僕じゃない。
僕にできるのは、結婚式のカメラマンのように、より多くの写真を撮ることだけ。今やっていることや、次にやることが何であれ、それに取り組むことだけだ。そして、大事なのはそこだ。
次の本、次の講演、次のプロジェクト、次のどんなことでもやって、前に進み続けなくてはならない。この本がヒットしようが、ヒュッと消えようが。
そしてあなたも、前に進み続ける必要がある。「理想の自分(オ ーサム)」に到達することについて、僕が何を知っているのかって? 一つ挙げるなら、成功者を「成功の産物」として見るのをやめるべきだ、ということ。成功を重ねてきた人物として見てはいけない。僕らが目にしているものが実は何なのか、あなたはもうわかっているはずだから。彼らはただ、失敗しながら突き進むのに長けている人たちだ。
失敗しながらでも前に進むことが、真の成功だ。
レジリエンスを身につけることが、真の成功なのだ。
失敗することも負けることも、挑戦をいとわない人たちにとっては、プロセスの一部でしかない。成功者はみんな、失敗の沼を泳いでいる。失敗に耐え、失敗にあえぎ、数々の失敗にまみれ、髪の毛にも爪の中にも失敗がこびりついている。
では、何を目指せばいい? 子どもの頃、父が『The Complete Major League Baseball Statistics(未邦訳:大リーグ野球の各種記録完全版)』という緑色の表紙の擦り切れたペーパーバックを買ってくれた。僕はそれを大切にし、長年自分の部屋に置いていた。何度も何度もめくって読んだ。
パラパラと記録を見ていくうちに、面白いことに気づき始めた。
かの有名投手サイ・ヤングは、史上最多の勝ち星を挙げている(511勝)。
そしてサイ・ヤングは、史上最多の黒星を喫している(316敗)。
同じく有名投手のノーラン・ライアンは、最多奪三振記録を持っている(5714個)。
そしてノーラン・ライアンは、最多与フォアボール記録も持っている(2795個)。
誰より多く勝った男が、なぜ誰より多く負けているのだろう? 誰より多く三振を奪った男が、なぜ誰より多くフォアボールを与えたのだろう? 単純な話だ。
誰より対戦したからだ。
誰よりも負けながら、誰よりも挑戦したからだ。
大事なのは、何本ホームランを打つかではない。
何回バッターボックスに立つかだ。
打席に立つ回数が増えれば、勝ち星も積み上がっていく。
もっと勝つために、もっと負けよう。
傷つくから強くなれる
ジムに出かけ、どんどん重いウェイトを持ち上げていけば、あの燃えるような感覚を味わえる。うなり、汗をかき、筋肉を存分に刺激しよう。限界まで使うのだ。
そうしたら、顕微鏡レベルで何が起こるだろうか? 筋肉の断裂が起こる。細胞組織に小さな小さな裂傷ができる。この現象は「ズタズタ」という言葉に新しい意味を与える。
何が言いたいのかって? たしかに、小さな断裂、小さな裂傷、微小な外傷……と聞けば、危険な感じがするだろう。だが、休養を取れば、組織は修復され、最終的に筋肉がさらに大きく強くなるのだ。
そしてこれは、筋肉だけの話じゃない。僕らの心も同じだ。
小さな裂傷。小さな断裂。小さな失敗。それらが最終的に、さらに強いあなたをつくるのだ。
もっと勝つために、もっと負けよう。
訳書に『メンタルが強い人がやめた13の習慣』 (講談社)、『マルチ・ポテンシャライト好きなことを次々と仕事にして、一生食っていく方法』 (PHP研究所)などがある。
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