(本記事は、花城 正也氏の著書『得する社長、損する社長 中小企業のための確定拠出年金』=クロスメディア・パブリッシング、2022年11月28日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
「我が社にぴったり」な設計を
4タイプから拠出方法を決める
企業型DCを導入する際は、まずはお金を拠出する方法を決めましょう。以下の4タイプから選択できます。
①選択制
②給与に上乗せ支給
③給与に上乗せ支給+選択制
④マッチング拠出
中小企業で採用されるのは、ほとんどの場合で①か③のどちらかですが、それぞれ詳しく見てみましょう。
●①選択制(図表12)
企業型DCに加入するか、しないかを従業員が選択できます。従業員自身が拠出し、掛金3000円から5万5000円の間で従業員が決定できます。
仮に、月給が30万円の従業員が毎月1万円を拠出する場合、給料30万円から1万円が掛金として差し引かれ、残りの29万円から社会保険料などが引かれた金額が口座に振り込まれることになります。
●②給与に上乗せ支給(図表13)
会社が掛金を拠出するタイプです。給料を変えずに、加入者の確定拠出年金口座に別途拠出します。
拠出額は① と同様、3000円から5万5000円の間で会社が決定します。企業年金連合会のアンケート調査によると、上乗せ支給の平均額は9000円前後といわれています。
このパターンの場合、仮に会社が1万円を拠出しても残りの枠4万5000円を従業員がプラスして拠出することはできません。
従業員からしてみれば本来使えるはずの枠が使えないといった状況になります。そのため、従業員も上乗せして拠出する場合には、次の「③給与に上乗せ支給+選択制」を採用しましょう。
●③給与に上乗せ支給+選択制(図表14)
①と②の併用ができる型です。②のように会社が1万円を拠出した場合、残りの枠4万5000円を上限に従業員が拠出できます。月額最大5万5000円の枠を使い切ることができる、利便性の高い型です。
さらに、従業員の理解が進み、拠出額が増えれば増えるほど、会社の社会保険料の負担も軽減されます。従業員の老後の資金を大きくする可能性も高まるため、福利厚生としての意味合いも強くなります。
●④マッチング拠出(図表15)
会社が拠出する掛金の範囲内で、従業員が自身の給料から拠出するタイプです。
例えば、③のように「会社が1万円を拠出する」と決めたら、従業員も同額の1万円までなら上乗せして積み立てることができます。
これを選択する主な理由としては、就業規則の修正がかかわってきます。後述しますが、企業型DCを導入する際、就業規則を一部修正しなければならないケースがあります。大企業の場合、まれに「就業規則を修正してまで企業型DCを導入できない」といったこともあります。そのような会社は、就業規則をそれほど修正する必要のない、マッチング拠出を選択します。
マッチング拠出では、掛金が社会保険料の算定対象となってしまうという点で注意が必要です。①②③のパターンでは掛金はいずれも給料と見なされないため、社会保険料の削減が期待できますが、マッチング拠出はいったん給料として受け取るという体裁になります。会社の年末調整によって住民税、所得税は控除の対象とはなりますが、社会保険料の支払い額は変わることがありません。
2010年西南学院大学大学院卒業後、新卒で福岡の地場大手税理士法人に入社。営業責任者及びグループ会社の取締役を経て2017年に株式会社アーリークロスとアーリークロス会計事務所を設立。中小企業の総務経理のDXを推進し5カ月で150件の新規顧客を獲得。2018年に税理士法人化を行い4年でグループ100名体制に。
2021年に中小企業の退職金問題を解決するために一般社団法人中小企業退職金制度支援協会を設立し代表理事に就任。企業型確定拠出年金の普及に努めている。
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