人生を変えるサウナ術
本田 直之(ほんだ・なおゆき)
レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役。日米ベンチャー企業への投資育成事業を行う。食やサウナのイベントプロデュースも手がけている。フィンランド政府観光局認定サウナアンバサダー
松尾 大(まつお・だい)
サウナー専門ブランド・TTNE株式会社代表。フィットネスクラブや福祉施設等、複数の会社を経営する傍ら、世界各地のサウナを渡り歩き、現在、サウナに関する執筆、TV、ラジオ、CM、イベント、デザイン性豊かなサウナ室のプロデュース等に関わり、サウナの素晴らしさを伝える為の活動をしている。フィンランド政府観光局認定サウナアンバサダー

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(本記事は、本田直之・松尾大の著書『人生を変えるサウナ術』KADOKAWAの中から一部を抜粋・編集しています)

サウナが会社の福利厚生に

サウナ,働き方
(画像=Jeanette Dietl/Shutterstock)

先述のNEW STANDARD株式会社代表取締役社長・久志氏は、サウナが社員のQOL向上につながると考え、自社の福利厚生にも「サウナ補助制度」を取り入れた。社員がサウナに入浴する際にその費用の一部を会社が負担するというもので、利用率もかなり高いという。

この制度を取り入れて良かったことは、仕事が大変そうな社員や疲れている社員がいたときに、お互いに「サウナ行ってきたら?」と言い合えるようになったことだという。久志社長が社員からそう言われることもあり、サウナが「オフィシャルな逃げ場」として機能しているのだ。

職場で苦しみやストレスを抱え込んで、心や体を病んでしまったり「働きたくても続けられない」状況に追い込まれてしまう人は増えている。周りの人が「あの人大丈夫かな?」と心配に感じても、何と声をかけていいのかわからず結局見て見ぬふり、というケースも多いだろう。

しかし、「サウナ行ってきたら?」という言葉であれば、声をかける方もだいぶ気楽だ。

そもそも他者が抱える個人的な悩みに対して、一緒に解決方法を考えてあげるというのは難しい、というか不可能に近い。しかし、代わりにサウナへお互いに導いてあげることはできる。

「サウナは様々な悩みを解決してくれる」ということを、社員の全員がわかっているのだ。

今後日本のサウナーが増え、サウナー経営者も増えていけば、あなたの会社のオフィスにサウナができる日も来るかもしれない。

創造力を高める仕事空間・コワーキングサウナ

サウナ,働き方
(画像=Robert Kneschke/Shutterstock)

前項で「会社のオフィスにサウナができる日が来るかも」と書いたが、実は働く場所としてサウナを活用するという取り組みは既に始まっている。

コクヨ株式会社のサウナ部長・川田直樹氏の提案によって実現した、スカイスパYOKOHAMAのコワーキングサウナ・KOOWORKだ。

5歳の頃から両親に連れられて空手の試合の振り返りの場としてサウナに通うというサウナ英才教育を受け、サウナのリフレッシュ効果を活用した勉強法で30代で一級建築士に合格するなど、サウナエリートの道を歩み続けてきた川田氏は、40歳のときに上司として部下とのコミュニケーション空間の可能性を感じサウナを活用すべくコクヨ社内にサウナ部を発足し、企業サウナブームの礎を築いた。

そして2018年には建築士としての知識を活かし、新たな仕事空間としての「コワーキングサウナ」をサウナ仲間と共に企画設計・提案し、これを実現。

フィンランドにもコワーキングサウナはないので、恐らく世界初の取り組みだ。

コワーキングサウナの仕事における可能性について、川田氏はこう語る。

「私は、ビジネスは大きく創造型と課題解決型に分かれると思いますが、これからのAI時代では、ITが課題解決の方にどんどん対応していく。そうすると、人間に求められるのは創造型の仕事です。
そして、その創造型の成果を生み出せる場所の1つが、コワーキングサウナだと思っています。
本来サウナの魅力は自然と人間が一体化している、〝寄り添っている〞空間であり、コワーキングサウナを設計する際にもそのことを意識しました。自然と人間が寄り添うことでリラックスした空間を作り、思考が整理されそこで生まれる対話がアイデアにつながると考えています」

また、実際にこのコワーキングサウナをオープンした反響は予想以上に大きく、利用者からは「心身のリフレッシュで仕事にも良い影響が出た」「新しいアイデアが生まれた」「普段の3倍仕事がはかどった」など、多数の嬉しい声が寄せられたという。

昨今の働き方改革によって、自分の好きな場所で好きな時間に働けるといった自由な働き方もだいぶ浸透してきた。またサウナが企業価値として、健康経営にもつながる可能性を感じている。

テレワークが可能な会社にお勤めの方は、ぜひ仕事空間としてのサウナも一度試してみてほしい。

企業を横断する「月曜はサウナ部」

サウナ,働き方
(画像=Med Photo Studio/Shutterstock)

また、2019年4月には、先述の川田氏を代表とする有志企業7社の社員を中心に「JAPAN SAUNA-BU ALLIANCE」が発足し、「月曜はサウナ部」というプロジェクトが発表された。

これは一週間の出勤日初日となり、多くのビジネスパーソンが憂鬱さを感じている月曜日に、早めに退勤しサウナに行くことで、楽しく健康的な働き方を実現しようという、企業横断型の取り組みである。

部員を5人以上集めて社内に「サウナ部」を結成・登録し、対象のサウナ施設へ月曜日に行くと、1人1本サウナ公式飲料とも言われる「ポカリスエット イオン ウォーター」がもらえるというしくみだ。

今のサウナブームを受けて企業内のサウナ部は増えているというが、これまでは企業間のサウナ部を有機的に結びつけるようなしくみはなかった。

しかし、この「JAPAN SAUNA-BU ALLIANCE」によって、様々な企業のサウナ部同士がつながり、サウナを通じた新しい企業連携の可能性が出始めた。「サウナが好き」から始まるオープンイノベーション。

サウナは自然と人をつなげるだけでなく、「人と人」もつなげてくれる。

今まさに、サウナが日本のビジネスシーンを活性化しているのである。

「月曜はサウナ部」HP:https://saunatime.jp/saunabu/

(提供:ZUU online