日本には世界に名だたるお菓子メーカーが、いくつもある。例えば、キャンディーの売上高の世界ランキングでは、トップ20に日本企業が4社入っているのだが、日常生活では企業規模を意識しないのかもしれない。実際どれほどの規模感なのか、国内外のお菓子メーカーを比較しながら見ていこう。
世界4位に明治ホールディングス
世界のお菓子に関する情報を提供しているウェブサイト「CANDY INDUSTRY」によると、キャンディーを製造している製菓会社の売上高ランキング(2021年版)で、日本企業では4位に「明治」、9位に「江崎グリコ」、16位に「森永製菓」、18位に「ブルボン」が入っている。
同ランキングによると、世界首位は米国の「マースリグレー」で売上高は200億ドル(約2兆7,000億円)。2位にはイタリアの「フェレロ」で売上高135億ドル(約1兆8,000億円)、3位には米国の「モンデリーズ」が売上高114億ドル(約1兆5,000億円)でランクインした。
4位の明治の売上高は100億ドル(1兆3,000億円)で、売上高が2倍の首位の企業とは大差があるものの、2、3位の企業とは近接していると言えそうだ。
ただし、このランキングでの売上高は、お菓子の売上以外も含まれている点には注意を要する。明治ホールディングスの2022年3月期の連結売上高1兆130億円のうち、食品部門は8,260億円。どこまでを「お菓子」と捉えるかは難しいが、これには「おいしい牛乳」「ブルガリアヨーグルト」「エッセル スーパーカップ」など、加工食品や発酵食品、栄養食品も含まれる。
9位の江崎グリコは2021年12月期の連結売上高が3,385億円。「ポッキー」「プリッツ」「ビスコ」などを製造しており、他には「セブンティーンアイス」の自動販売機なども展開している。こちらも単純に、菓子の売上だけなら1,000億円台後半になるとも考えられる。
地方発の企業もシェアを獲得
矢野経済研究所が2021年5月に発表したリポートによると、日本国内の流通菓子市場規模は、2021年度が2兆149億円と予測されていた。
これは少数の大企業がシェアを独占している形ではない。お菓子市場の特徴のひとつに、寡占化が進んでおらず、多数のメーカーの力が拮抗している点がある。
前述のキャンディーを製造している製菓会社だけでなく、国内のお菓子メーカー全体で最もシェアが高いのは「ポテトチップス」「じゃがりこ」などのロングセラー商品を持つカルビーだ。ただ、同社ですら2022年3月期の売上高は2,454億円。続く明治ホールディングス、江崎グリコも1,000億円台だ。
さらに、売上高1,000億円前後には米菓の亀田製菓、自社で小売店を展開するシャトレーゼが位置する。亀田製菓は新潟市、シャトレーゼは甲府市に本社を置いており、地方発の企業がシェアを獲得している点も日本の特色と言えそうである。
ちなみに近年、国内市場の規模は横ばい基調で推移している。同研究所のデータによると、5年前の2016年度から2021年度の予測値まで、市場規模は2兆円~2兆600億円という狭い範囲の中にあった。
控えめに言えば「横ばい」だが、よりネガティブに捉えれば「頭打ち」の状況にあると言える。しかも、今後は国内人口の減少に伴い、長期的に市場が縮小していく可能性がある。
国内市場の「頭打ち」で海外に活路
そんな中、お菓子メーカー各社が注目するのが海外市場だ。三井住友銀行が2019年3月に作成したリポートによると、各社は徐々に海外事業を拡大している傾向にある。明治ホールディングスは2018年3月期に9.9%だった海外事業の売上高比率を、2027年3月期には20%以上に高める目標を掲げていた。
三井住友銀行のリポートによると、海外市場へ進出するにあたり、日本国内で売れている商品を、そのまま海外に持っていって販売する戦略が見られる。これは商品自体への自信の表れであるとともに、これまで国内で培ったマーケティング戦略を現地で生かしたいという狙いもあるように見える。
このように日本でヒットした商品を海外で販売する事業に加え、M&A(企業の合併・買収)により、海外事業の拡大を図る動きもある。亀田製菓は2013年、米国の大手オーガニックライスクラッカーの製造業者を傘下に収めた。亀田製菓の看板商品は「柿の種」で、海外展開にあたっては、こうした米菓とともに有機栽培の原料を使った製品の供給体制を整えることで、健康志向の高まりに対応する。
世界で存在感を発揮する日本のお菓子メーカー。主な企業でも海外売上高比率は1割程度と低く、まだまだ伸びしろは大きい。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)