日清オイリオグループ・三枝理人取締役常務執行役員食品事業本部長
(画像=日清オイリオグループ・三枝理人取締役常務執行役員食品事業本部長)

――2021年度を振り返って

当社は「もっとお客さまの近くへ」を基本方針に、24年度までの中期経営計画をスタートさせている。初年度21年度は新型コロナの感染拡大と長期化、歴史的な油脂原料の高騰と長期化により、非常に厳しい1年となった。

油脂原料の高騰を主要因としたコストアップに対しては、計4回の価格改定を発表した。取引先様各社の理解を得ながら、新たな価格での市場形成に取り組むと共に、付加価値型商品の拡大や商品価値の向上、新しい市場創造やユーザーの課題解決をこれまで以上に積極的に進めた。このことで、市場や取引先様から、一定の評価と、次年度に向けた期待を獲得できたと感じている。

――価格改定の進捗は

4月のkg当り20円、6月の30円、8月の50円の改定はほぼご理解頂き、販売価格や市場売価に反映されている。11月からの30円改定については多少時間がかかり年をまたぐ形になったが、概ね実勢化が出来た。

日経の一斗缶相場は20年10~12月の4,100円から、直近の22年3月は6,000円と115円/kg上昇している。家庭用の一例では、「日清キャノーラ油1000g」が日経POSデータで価格改定前と比べ3月時点で110円/kg上昇しており、着実に新たな価格ステージで市場が形成されている。

油脂原料の高騰は、汎用油の原料となる大豆や菜種に留まらず、世界的に旺盛な食用油需要を背景に、原料主要産地の天候不順による減産などによる需給ひっ迫、物流費やユーティリティーコストなど諸経費の高止まりなどコスト上昇は更に深刻なものとなっている。これを受け、22年度についても、4月から汎用油をkg当り40円、7月からは汎用油を除くオリーブオイルやごま油など食用油全般について5~30%の価格改定を発表した。コスト環境を丁寧に説明し、取引先様の更なるご理解を仰いでいく。

〈食用油の価値向上と継続的な市場の拡大を実現、「味つけオイル」の新カテゴリー創造〉
――家庭用の状況と2022年度の取り組みは

当社は21年度、価格改定による適正価格での新たな価格ステージの形成と並行し、「かけるオイル」の定着や「味つけオイル」の市場育成による付加価値型商品群の拡販に取り組んだ。また、「日清ヘルシーオフ」や「日清キャノーラ油ナチュメイド」、「日清こめ油」の販売強化を通じたクッキングオイルの構造変革にも取り組み、全てのカテゴリーで市場の伸び率を上回った。

22年度の家庭用の取り組みについては、21年度に引き続き、生活者の食用油に対する「健康」と「おいしさ」という2つの期待を、マインド変化や食生活の変化と結びつけ、「かけるオイルの進化」と「クッキングオイルの構造改革」により、食用油の価値向上と継続的な市場の拡大を実現する。

まず「かけるオイルの進化」では、4つの取り組みを進めていく。1つ目は、ごま油市場の再拡大を図ることだ。昨年進めた大容量化と、今年2月に発売した機能性表示食品「日清ヘルシーごま香油セサミンプラス」の上市などによる新たな価値創造に取り組む。

2つ目は、「味つけオイル」の新カテゴリー創造だ。食用油売り場でのコーナー化や、ラーメン売場などでの関連販売の実施など、店頭施策の強化に注力していく。また、テレビCMなどマスメディアを起用した認知拡大や、SNSを活用した自分ゴト化の働きかけ、イベントなどサンプリング強化による体験機会の創出などで生活者との接点を増やし、認知拡大と購買トライアルの喚起を図っていく。

3つ目として、朝食シーンでのメニュー提案や売場提案によるアマニ油、えごま油、MCTオイルの定着促進に取り組んでいく。4つ目に、販売好調の「日清MCTオイル」について、機能性表示食品へのリニューアルを契機としたテレビCMやSNSを連動させた取り組みにより、「日清MCTドレッシング」を含めた販売強化を図る。

次に、「クッキングオイルの構造改革」についてだが、「日清ヘルシーオフ」や「日清キャノーラ油ナチュメイド」、「日清こめ油」や健康オイルなどの販売強化によるキャノーラ油への偏重解消と、新たな価格ステージによる市場形成、販売量の回復を伴う食用油金額市場の拡大への貢献を目指していく。

――環境対応の取り組みは

環境目標2030を掲げ、商品周りでもすでに再生PETやバイオポリなど環境対応素材の導入を進めている。さらに、22年度中には主力商品への環境素材の導入を、その先では、フードロスや物流課題への対応として、賞味期限の延長や年月表示化を視野に入れている。

〈大豆油糧日報2022年5月11日付〉