2022年4月22日、クリスティーズオークション「Prints & Multiples」がニューヨークで開催された。
19世紀から現代までの幅広いアーティストが揃った今回のオークション。パブロ・ピカソ、エドヴァルド・ムンク、アンディ・ウォーホル、ロイ・リキテンスタイン、ゲルハルト・リヒターなど、数々の巨匠の版画が出品された。
中でも、アンディ・ウォーホル作品が落札価格TOP4を独占。マーケットでの安定した人気を見せた。
この記事では、落札価格TOP5の作品とANDART関連アーティストの落札情報を紹介。落札価格は手数料込み、1USD=128.47円(2022年4月22日終値)で計算。
4)ロイ・リキテンスタイン《Reverie, from 11 Pop Artists, Volume II 》(1965)
落札価格:約2,590万円($201,600)
4位には同列で2作品がランクイン。ひとつはウォーホルとともにポップアートを牽引したロイ・リキテンスタインの一作だ。コミックを切り抜いて拡大したリキテンスタインの作風は非常に完成度が高く、これを見たウォーホルがコミックをモチーフにすることを断念したといわれるほど。
本作のもとになっているのは、アメリカの人気漫画家アーサー・ペディが描いたヒロインで、リキテンスタインはネックレスの角度などを巧みに調整して仕上げている。吹き出しの文字は、1927年にホーギー・カーマイケルが発表し、後にナット・コール・キングがカバーしたジャズナンバー『スターダスト』の一節で、「私の空想にはあのメロディがつきまとう」の意。(予想落札価格:約1,542万〜2,312万円 / $120,000 – 180,000)
4)アンディ・ウォーホル《Bighorn Ram, from Endangered Species》(1983)
落札価格:約2,590万円($201,600)
環境保護活動家でもあったアートディーラーのフェルドマン夫妻の依頼で制作された「絶滅危惧種」シリーズのひとつ。 本作に描かれたビッグホーン(オオツノヒツジ)は、ロッキー山脈を中心とするアメリカの山岳地帯に生息している。メスにも短い角があるが、このように弧を描くような太い角はオス特有のもの。
絶妙なカラーリングと手描きの輪郭線でデザインされた本シリーズは、特に2021年からオークションでの人気が高まっており、最近ではアムールトラ(Siberian Tiger)を描いた作品が4月19〜21日開催のフィリップスオークション落札価格第4位にランクインしている。(予想落札価格:約642万〜899万円 / $50,000 – 70,000)
3)アンディ・ウォーホル《Truck》(1985) 落札価格:約3,076万円($239,400)
本作はトラックを描いた色違いのプリント4点セット。少数のアーティストプルーフと15枚の宣伝用を除き、各色60枚限定で制作された。ウォーホルの拠点はニューヨークだったが、描かれているトラックは「MAN F8 19.361」という当時ドイツで普及していたモデル。これは、制作を依頼したのがドイツ連邦道路運送協会(BDF)であったため、ウォーホルにヨーロッパの車両の写真が提供されたからだと考えられる。
1980年代、ウォーホルの手腕にはすでに定評があったものの、まだ賛否両論があった。BDFが先鋭的なアーティストを起用したことは大胆な決断だったといえる。プロジェクトの実現には、ウォーホルと懇意にしていたドイツのディーラー、ヘルマン・ビュンシェの貢献も大きい。(予想落札価格:約1,028万〜1,542万円 / $80,000 – 120,000)
2)アンディ・ウォーホル《Superman, from Myths》(1981)
落札価格:約3,561万円($277,200)
「神話」シリーズはドラキュラやサンタクロース、ミッキーマウスなどで構成された10点セットで、本作はそのうちの1点。世界的に知られたアメコミのヒーロー、スーパーマンが飛び立つ様子が描かれている。8歳の頃、免疫疾患で数カ月間自宅療養していたウォーホルは、気弱な青年がヒーローになるというストーリーに希望を抱いていたという。
今回、エディションもののスーパーマンとしては、ウォーホル史上最高の落札価格を記録した。なお、キャンヴァスにアクリル絵の具で描かれた一点物のスーパーマンは、2015年にサザビーズで18億円超え(1,436万ドル)で落札されている。(予想落札価格:約2,569万〜3,854万円 / $200,000 – 300,000)
1)アンディ・ウォーホル《Queen Elizabeth II of the United Kingdom, from Reigning Queens》(1985)
落札価格:約5,180万円($403,200)
1位に輝いたのは、「統治する女王」シリーズのひとつ、エリザベス2世のアーティストプルーフ。本シリーズでは、ほかにデンマークのマルグレーテ2世、オランダのベアトリクス女王、スワジランドのヌトムビ・トワラ女王が、それぞれ気品あふれる構図と配色で描かれている。
エリザベス2世は、在位25周年(1977年)の「シルバージュビリー」で撮影された写真をもとに描かれた。2022年5月には、在位70周年を記念し、本作と同じ構図の肖像画がサザビーズの特別展で一般公開される。(予想落札価格:約1,927万〜2,569万円 / $150,000 – 200,000)
【ANDART取り扱いアーティスト落札情報】
アンディ・ウォーホル《Campbell’s Soup I (Pepper Pot)》(1968)
落札価格:約777万円($60,480)
ウォーホルの代名詞ともいえるキャンベル・スープ。トマトやビーフなどさまざまな種類の缶があるが、今回出品されたのはANDARTで取り扱っているのと同じ「Pepper Pot」。インディアンに由来するスパイスを効かせたシチューだ。
今回、予想を大きく超える価格での落札となり、ANDARTでの当初の販売総額である600万円をも上回った。(予想落札価格:約193万〜257万円 / $15,000 – 20,000)
デイヴィッド・ホックニー《Pool Made with Paper and Blue Ink for Book, from Paper Pools》(1980)
落札価格:約971万円($75,600)
ホックニーの代表的なモチーフ、スイミングプールを描いた一作。カリフォルニアの光に魅了されたホックニーは、刻々と姿を変える水面を繰り返し描いており、その探究心は印象派クロード・モネに通じるものがある。
2021年12月のボナムスオークションでも900万円を超える落札価格を記録した本作は、今回も予想落札価格を上回る好成績を残した。ANDARTでも同エディションの作品のオーナー権を販売中。(予想落札価格:約514万〜771万円 / $40,000 – 60,000)
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文:ANDART編集部