フードデリバリーが戦国時代に突入する中、この業界で老舗の出前館が今期の上半期決算を発表した。228億8,600万円の赤字を計上し、前年同期から赤字額が130億9,000万円も増えている。過去3期連続の赤字となった出前館の経営状況はどうなっているのか。
売上高は118.4%増ながら赤字額がふくらむ
出前館は2022年4月14日、2022年8月期第2四半期(2021年9月〜2022年2月)の連結業績を発表した、売上高は前年同期比118.4%増の227億3,700万円と伸びたが、営業利益、経常利益、最終損益は、いずれも以下のとおり前年同期から赤字額が大幅に増加している。
今期の通期業績に関しては、営業利益の見込み額のみ公表しており、500億~550億円の赤字に着地する見通しだという。この数字がこのまま今期実績となれば、営業利益は過去最高の赤字額を計上することになる。
出前館の決算の「良い数字」と「悪い数字」
出前館の今回の決算は、「良い数字」と「悪い数字」がはっきりと分かれる結果となった。良い数字は「売上高」、悪い数字は「損益」だ。
売上高が「良い数字」となった理由
前述のとおり、売上高は前年同期比118.4%増と大幅に伸びた。
アクティブユーザー数は前年同期と比べて80万人増の853万人で、大型キャンペーンなどが功を奏し、国内フードデリバリーアプリのDAU(デイリー・アクティブ・ユーザー数)ベースのマーケットシェアは48%まで拡大した。
2021年12月~2022年2月のアプリダウンロード数は、同じアプリカテゴリーの中で1位となり、第1四半期に続いてトップの座についた。
損益が「悪い数字」となった理由
出前館は、営業利益、経常利益、純利益いずれも赤字額が大幅に増加した。売上高が伸びたにもかかわらず赤字額が増えたのは、さらなる成長に向けて配達員を増やし、アプリのアップデートやシステム開発、広告宣伝の強化にも費用を投じたからだ。
そういう意味では、赤字がふくらんだことを一概にマイナスと捉えるべきではないかもしれない。攻めの姿勢を貫いた結果の赤字額の増加だからだ。これらの投資が将来どれだけのリターンをもたらすか、注目を集める。
赤字経営からの脱却なるか
ただし、いくら攻めの姿勢を貫いているとはいえ、赤字がいつまでも続くようでは、事業の継続に黄信号が灯る。以下は出前館の過去10年間の業績の推移で、前期まで3期連続で最終赤字となっている。しかも赤字額は増えている状況だ。
2022年8月期の下半期の事業方針は、ランチとディナー以外の需要を取りこむために、料理ジャンルの拡充を推進していくことや、フード以外の日用品などのデリバリーサービスを充実させるため、各商品カテゴリーのトップ企業との協業を強化していくことなどを挙げている。
ユーザー満足度を高めるために「配達品質を向上させるドライバーランク制度の導⼊」や「サーチ機能の進化・レコメンド強化」なども掲げており、それらの取り組みがしっかりと実を結んでいくかが、今後問われていくことになる。
なお、出前館の株価は年初来で32.24%安、過去1年で72.15%安、過去5年で見ても40.59%安と厳しい状況だ。投資家からの支持を取り戻し、株価が回復に向かっていくのかも注目していきたい。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)