不二製油グループ本社は3月11日、「プロレア」の日本農芸化学会の「2022年度農芸化学技術賞」受賞決定を受け、オンライン説明会を開いた。「プロレア」は不二製油が開発した、高い酸化安定性を付与したDHA・EPA含有油脂素材。2017年から共同研究を行ってきた、国立大学法人島根大学の橋本道男客員教授も登場した。
同社は、高齢化社会における社会課題解決の一つとして、認知症予防に注目。2016年に、高度不飽和脂肪酸の酸化安定性を向上させる世界初の新技術「Fuji Stabilization Technology(以下、FST)」により、魚臭(酸化臭)を抑えた安定化DHA・EPA含有油脂の開発に成功したという。
木田晴康CTOは、「DHAは、サプリメントの摂取は進んでいるが、幅広い年齢層に食べ物、飲み物で摂ってもらうことが必要との強い思いがあった。既成概念にとらわれることなく研究した結果、画期的な技術で一般食品に使用できることが可能なレベルの酸化安定性を付与することに成功した。原料は、プラントベースフードを標榜する当社のポリシーとして、食糧枯渇や危害物質汚染のおそれの少ない藻類由来を採用し、よりサステナビリティに配慮した。技術の発表から時間が経ち、少しずつ採用案件が増えつつある」と話した。
木田CTOは、「安定化DHA・EPA事業は国内でスタートしたばかりだが、日本の高齢化社会の課題は、中国、韓国、欧米含め、多くの先進国で将来の課題になることは確実。賞を契機に日本での実績を拡大するとともに、海外への展開を視野に入れて進めていく」とした。
機能性油脂の開発については、「安定化DHA・EPAで培ったFST技術は、油脂に溶けにくい成分を微細に、安定的に分散できる技術でもある。多方面で利用の可能性を秘めている」と話した。
同社未来創造研究所の市瀬嵩志氏は、「プロレア」の研究成果を説明した。同社は高齢者の健康課題を解決し、ウェルビーイングを実現することを目指し、DHAの機能性を研究している。
島根大学、社会医療法人仁寿会加藤病院との共同研究(ヒト介入試験)により、酸化安定性に優れたDHA含有油脂(プロレア)を少量の297mg配合したDHA強化乳飲料を1日当たり200ml、12カ月間摂取することで、「加齢に伴う認知機能の低下を抑制することを明らかにした」として、2020年9月に論文を発表した。
このサブ解析結果をまとめ、2021年12月に発表。血清中骨破壊マーカーを減少させることにより、骨折リスクの軽減などにつながることが示唆されたとしている。この開発と応用展開に対して、「2022年度農芸化学技術賞」の受賞が決まった。
市瀬氏は、「DHAが高齢者のウェルビーイングの向上やフレイル予防にも貢献する食品成分として重要であり、優秀であると考えている」と述べた。
〈大豆油糧日報2022年3月15日付〉