エドガー・プランズ
(画像=エドガー・プランズ)

ドット絵で描かれた人物像「CryptoPunks」。この画像 1点が、オークションで約27億円(2022年2月当時、8,000ETH (= 約2,370万ドル))で落札されるというのは、一般的な感覚ではなかなか理解しがたいのではないだろうか。

8,000ETHで販売された≪CryptoPunk#5822≫
SNSの「アイコン」などとして使用できるこうしたNFTは「プロフィール画像(PFP)」と呼ばれ、2つと同じものがないことが保証されたシリーズとして構成されてる。しかし、なぜこれほどまでに人気なのか?

そこには、投資目的ではない、コレクター・アーティスト双方に魅力的な意外な理由が隠れているようだ。その理由を探ってみよう。

▍現実の属性に縛られず、「実績」に注目される世界

SNSのアイコンを自身の写真にした場合、現実的には性別や年齢、国籍といった属性に縛られてしまう。しかし、もしそれがNFTのプロフィール画像だったらどうだろうか?

コレクターの黒人女性・Melanie McClaindは、PFPの魅力は「コミュニティがすべて」だという。彼女のアイコンであるBored Ape Yacht Clubの猿の画像は、そのコミュニティの「アーリーアダプター」としての地位を示し、ネットの世界では彼女を誰も“黒人女性 ”という属性では捉えられないという。ネット上ではしばしば “bro” (brotherの略 = 親しい男友達への呼びかけ)と呼ばれることまであるという。

Melanie McClaindのInstagramより

現実のコミュニティでは、生まれ持った自身の属性を切り離して過ごすことは難しいが、PFPを用いることで、まるで仮面舞踏会のように、現実の属性には縛られず「実績」だけで世界の注目を浴びることができるのだ。

▍従来のアート界の「権力構造」を覆す可能性も

アートをコレクションしていく際、これまではギャラリストとコレクターの間では圧倒的にギャラリストの持つ情報が多く、コレクターは弱い立場だった。ところが、NFTはこうした権力構造を覆す可能性もある。

OpenSeaで上位1%に入るコレクターの男性がNFTの収集をはじめたモチベーションは「従来のアート界を否定すること」だったという。現在、彼は複数のプロジェクトのNFTを収集し、総額は約100万ドルにのぼる。

「社会的・経済的資本が限られている人にとって、従来のアート界の枠組みのなかで強力なアートコレクションをつくりあげるのはかなり難しいことだ。NFTは、よりオープンで公平な場を提供している。」と、彼は言う。

将来有望なPFPプロジェクトにいち早く参入できれば、価値ある作品を安価に購入し、一般人でも素晴らしいアートコレクションを築くことができるというのは、夢のある話だ。また、従来のアート界のように、コレクター側がギャラリストによって「審査」される必要も無い。作品の重要な情報はコレクター側がすべてブロックチェーン上で確認することができ、自分で判断して購入していくことができるのだ。

こうした「従来のアート界の権力構造からの脱却」というメリットは、現在も「白人男性」が圧倒的優位であるアーティストの側にもあるようだ。

NFTに参入したエチオピアの女性アーティストは、「エチオピアでは、アーティストの作品はなかなか評価されません。写真家がウェディングやポートレートのスタジオ以外で生計を立てられるなんて、ほとんどのエチオピア人には信じられないことです。」という。

エチオピアの女性アーティスト・Yatredaによる作品
(画像=エチオピアの女性アーティスト・Yatredaによる作品)

画像出典:https://foundation.app/

しかし、「伝統的にある “手作りの1点モノ” に対する評価を、ブロックチェーンの真正性や出所の考え方と組み合わせれば、これを解決することができるのです。」と主張する。

「私たちは今、本当に、世界の他の誰とも同じようにチャンスがあると感じることができます。NFTが私たちにもたらしてくれたことです。」

▍「若い世代の価値観」に合った表現への評価

スペインのNFTアーティスト・エドガー・プランズは、若いコレクターにとっては、従来のアートよりも、NFTのほうが彼らの文化に続いているものだと捉えている。

「 “伝統的なコレクター” は、本や美術館の展示品を好みますよね。でも、デザイン、テクノロジー、金融などの分野で働く人々にとっては、「フォートナイト」や「コール オブ デューティ」にのようなオンラインゲームのほうが身近な存在なんですよ。」

「そういった文化圏では、将来的には、価値あるPFPを持つことがステータスになっていくんだと思います。」

物理的な作品でもNFTでも人気のアーティスト エドガー・プランズ
(画像=物理的な作品でもNFTでも人気のアーティスト エドガー・プランズ)

画像出典:https://curio-w.jp/

彼は、物理的な作品でも数千万円レベルの値段をつけるほどの画家だが、NFTは物理的な作品よりも、より若い・より多様な鑑賞者に自分の作品を届ける方法として捉えているという。「この種のアートは、もっと世界に開かれたものになると思いますよ。」と彼は言う。

こうして見てみると、NFTは、アート界に限らず、なかなか崩すことの出来なかった古い体制、価値観、権力構造などを刷新できる可能性が感じられる。

投機とも捉えられがちなNFTだが、NFTに関わるアーティストとコレクター双方は、意外な価値を見いだしているようだ。

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文:ANDART編集部

参考)

Why NFT Profile Pics Appeal to Collectors and Artists Alike (Artsy)

This CryptoPunks NFT was sold for 8,000 ETH ($23 million) (CRYPTOSLITE)