日本郵船、商船三井、川崎汽船、海運大手3社が2022年3月期の決算見通しを上方修正した。各社の連結最終利益は日本郵船が前期比568%増、商船三井が600%増、川崎汽船が378%増、3社合計は前期比6倍、2兆800億円に達する。利益を押し上げたのは2017年に3社のコンテナ事業を統合した持分法適用会社「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス」社、同社は1.7兆円の最終利益を見込む。
要因はコンテナ輸送の運賃高騰である。中国は世界のコンテナ生産の9割を占めるが、米中対立と新型コロナ感染拡大を背景に2019年から2020年前半にかけてコンテナの生産量を激減させた。そうした中、世界に先駆けてコロナ禍から立ち直ったその中国が輸出入を急回復するとともに米欧の巣ごもり需要が拡大、アジア発欧米向けの輸出が急増した。加えて、コンテナ船を受入れる港湾、とりわけ、米国西海岸の港湾施設がロックダウンや感染者増による人手不足で機能不全に陥ったことがコンテナ輸送の逼迫に拍車をかけた。
そもそもの資源高に加えて、物流費の高騰とモノの流れの目詰まりはコロナ禍からの回復を目指す世界経済にとって足かせだ。日本の場合、これに円安が加わる。カップラーメンから高級輸入車まで影響は広範だ。
もちろん、無策であったわけではない。国土交通省は昨年4月、空コンテナの早期返却、臨時船の運航などコンテナの効率的利用と輸送スペースの確保を業界に働きかけた。荷主、海運、船主もそれぞれの立場で対策を講じてきた。しかし、コンテナのスポット運賃は依然として高止まりしており、世界的なコンテナ不足は当面続くものと思われる。
と、ここまで書いたところで、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始した、とのニュースが入ってきた。
「コンテナ不足問題に対する政府における取組」(令和3年4月23日)と題された国土交通省の文書には、海上輸送から陸送への対応策として“シベリア鉄道の利用”に言及した荷主企業があったと記されている。しかし、その選択肢はなくなった。ロシアへの経済制裁はこれまでと異なる次元で発令されるだろう。モノの流れそのものの前提が崩れる。中国の動向も不透明だ。もはや平時のサプライチェーンの問題ではない。新たな条件のもとで、新たな策を主体的かつ戦略的に準備する必要がある。とは言え、まずは軍事侵攻の中止、ウクライナの主権回復、市民生活の正常化を願う。
今週の“ひらめき”視点 2.20 – 2.24
代表取締役社長 水越 孝