黒糖焼酎官能評価 石灰添加量が酒質に与える影響
(画像=黒糖焼酎官能評価 石灰添加量が酒質に与える影響)

鹿児島大学農学部焼酎・発酵学教育研究センターは、2006年に鹿児島県と鹿児島県酒造組合、酒造業者から5億円の寄付があり、それを元手に5年間限定の講座として開設した後、大学から功績が認められ正式な組織として発足した。

同センターは「焼酎学」を通じて地域社会の振興・発展・活性化につなげることを目的としており、鹿児島が誇る本格焼酎をはじめとする発酵食品文化を継続的に発展させ、これからの本格焼酎・発酵科学を担う人材の育成を担う。

実際に2020年までの学部卒業生は86人中29人が焼酎メーカーに就職している。 部門は、山梨大学ワイン科学センター同様に4つの部門がある。

焼酎の個性的で独特な風味の検索と特定成分の生成機構の解明、麹や焼酎粕の機能性の検索とその機能性の解明、新しい蒸留機の開発などの研究を行う「焼酎製造学部門」、焼酎やさまざまな発酵食品の製造に用いられる酵母や麹菌などの機能を遺伝子・細胞レベルで解析し、有用な株の育種につなげる研究を行う「醸造微生物学部門」、焼酎・発酵学の基礎科学である生命科学・食品機能科学に加えて、関連科学としての原料農作物の栽培技術や生産科学、流通、さらには最新のバイオテクノロジー技術を駆使した発酵残渣の再資源化や処理、エネルギー利用技術の開発までの教育研究分野を担当する「発酵基礎科学部門」、部門のなかでは唯一の文系である「焼酎文化学部門」がある。 変わった取り組みでは東京・青ヶ島の青ヶ島酒造で調査研究をしているほか、枕崎市の名産品である鰹節を製造する際に用いられるカビの調査なども行っている。

〈黒糖の製法による黒糖焼酎の味わいの変化を特定〉
鹿児島大学は黒糖焼酎に用いられる黒糖の製糖時の条件の違いによる味わいや成分に違いがあることを発表した。 黒糖焼酎は芋焼酎や麦焼酎に比べると生産規模は小規模なものの、酒税法で奄美群島でのみ製造が認められているという、かなり地域性の強い特産品だ。

これまで麹の製造方法や麹と黒糖の配合比率、仕込み方法、蒸留方法、貯蔵方法に対する研究はあったものの、原料となる黒糖に焦点を当てた研究は無かった。 黒糖はサトウキビを搾汁し、弱酸性の搾汁液を中性に近づけるために石灰水を添加してから加熱・結晶化するが、その際の石灰添加量が酒質にどう影響を与えるかを調べた。

条件は石灰無添加(=N)、通常の製糖条件に近いpH7の黒糖(=7)、通常の製糖条件よりも石灰添加量が多いpH9の黒糖(=9)の3つで比較した。仕込みの条件は白麹を使用し、もろみの品温は30℃。発酵期間は計14日間で蒸留方法は常圧蒸溜とした。 まず原料となる黒糖の味わいは、Nが香ばしいキャラメルのような味わい、7が黒糖らしい味わい、9は青臭さや穀物様の味わいが特徴。焼酎に仕上げた際の特徴では(7を基準とし)、Nは果実様の香りが強く、9は弱くなった。反対に9は草のような香りが強く、Nではそのような香りが弱くなったという(図左)。

この結果については、黒糖の成分の違いがそのまま反映されたほか、もろみでのpHの違いが香気成分の違いを生み出したとしている(図右)。今後は黒糖のエイジングの条件も研究し、より多様な黒糖焼酎を生み出せるように努めるとしている。

〈酒類飲料日報2022年1月6日付〉