中小しょうゆメーカー、インド産醸造用大豆ミールの高騰と供給不安に課題(画像はイメージ)
(画像=中小しょうゆメーカー、インド産醸造用大豆ミールの高騰と供給不安に課題(画像はイメージ))

中小しょうゆメーカーの課題の1つは、インド産醸造用大豆ミールの高騰と供給不安だ。

春から夏にかけて大暴騰し、9〜10月はt当たり17〜18万円の高値を付け、「2カ月ほどブランクが空いて、11〜12月は全く入っていない」という声も輸入商社からは聞かれる。他国産で代替することも難しく、丸大豆での仕込みや、工場のメンテナンスなどで、しのいでいるもよう。とはいえ今後も、「安くなる材料はない」と先行きは不透明だ。

ほかの対応策としては、Non-GMOから安価なGMOの大豆ミールに戻し、販売量が増えたところもあるという。

国内で消費される醸造用大豆ミールの総量は約12万tで、5割がインド産、3割が米国産、2割が輸入大豆を使用した国内生産とされる。100%Non-GMOのインド産は、価格が手ごろでたん白分も高く、特に中小メーカーに重宝されてきた。安価な時はt当たり5〜7万ほどで落ち着いていたという。

互明商事によると、インド産の大豆ミールは、2021年の4〜5月ではt当たり7〜8万円だったが、2カ月ほどで11〜12万円に高騰した。さらにインドのブローカーが価格を釣り上げたこともあり、「インド国内の定期も最高値になった」と振り返る。

9〜10月は17〜18万円となり、購入したとしても販売できないため、2カ月ほどブランクが空いたという。「11〜12月はインド産の大豆ミールは、ほとんど国内の倉庫に入っていない」と説明する。11月半ばからは出港しているが、検査などを経て現物を出せるのは1月辺りからだという。

高騰の原因は、インドの堅調な植物油需要に応じて、大豆搾油が急激に増えたことが挙げられる。さらにはコンテナ不足に加え、コロナの影響で港の作業は停滞し、船賃も上がっている。加えて円安も追い打ちをかけている。

〈対応策として丸大豆仕込みや工場メンテナンス、安定供給のためGMO(遺伝子組み換え)も選択肢に〉
中小事業者の経営が懸念される状況だ。インド産大豆ミールの価格は現状、13〜14万円ほどに下がってはいるが、それでも2020年の倍の価格となっており、「2割くらい上げられれば楽になる」と、コスト上昇の影響の大きさについて危惧している。

インド国内では10月から新穀が収穫されている。11〜12月には旧穀に新穀を混ぜて搾油されることで、「価格が下がるだろうと期待していたが、高止まりしている。12月7日現在でt当たり13万円だ。せめて10万円切らないと、業界にとっては厳しい」としている。

2021年産のインドの大豆新穀は約1,200万tと、不作ではないが、収穫時に雨が降った影響が未知数だという。「雨の影響で収穫量が減る可能性がある」とする。また、インド政府は鶏やエビなどの飼料用に米国大豆120万tを輸入しているが、これも異例のことだ。

今後については、「為替が円高になるか、雨の影響が大したことはないとはっきりすれば、弱材料として下がる可能性はある」と解説する。

中小しょうゆメーカー各社はインド産の醸造用大豆ミールが使えないことの対応策として、丸大豆を仕込む動きなどはあるという。現状のインド産醸造用大豆ミールの価格と比べても大差がなく、市場でも丸大豆志向から丸大豆を仕込んでいるところも多くなっている。

また、工場のメンテナンスや、1〜2カ月分のもろみはタンクに貯蔵しているので、搾って瓶詰めすることはできる。幸か不幸か、コロナの影響で業務用の出荷を落としていることもあり、伸ばし伸ばしの仕込みでもいいところはあるようだ。

「先延ばしや丸大豆仕込み、工場のメンテナンスなどでしのげば、1月以降はミールが入ってくる。高いままだが使わざるを得ない。安くなる材料がない」と解説する。

インド産以外の対応として注目されるのは、GMO(遺伝子組み換え)に戻るかどうかだ。実際、Non-GMOをやめてGMOの大豆ミールに戻したことで、販売量が増えたところもあるという。GMOは、より安価で、たん白面では若干弱いが、製造は日本となり、安定供給することもできる。インド産の高騰と不安定な供給が今後も続くのであれば、将来的に選択肢となってくる可能性はある。

〈食品産業新聞 2021年12月16日付より〉