世界のごまの需給バランスは大枠では均衡を保っているように見える。しかし、2つの要因でマーケットはおかしな動きをしている。
一番大きな要因は、白ごま主産地の一つであるエチオピアの内戦激化だ。2020年11月から始まった内戦が長期化し、2021年11月2日、政府は全土に国家非常事態宣言を出した。内戦の影響は北部だけでなく、都市部、全土に及んでいる。エチオピアリスクから、スーダン産を購買する動きがあった矢先、スーダンでもクーデターが発生し、リスクが高まった。相場は3日間隔で100ドル上下動するなど、安定性が見られない。オファーがきても、数日の猶予もなく即日決定を求められる状況。この高値はしばらく続きそうだ。
もう一つの要因が、インドの残留農薬問題(エチレンオキシド)の影響だ。EU(欧州連合)がインドからアフリカへシフトし、アフリカから皮むきごまを買うようになった。皮むきごまは付加価値がつく。これもアフリカ産の価格が下がらない要因だ。この現象は中米(メキシコ、グアテマラ)でも起きており、数量が不足している。通常のナチュラルごまのオファーが出にくくなっており、中米も価格が上がってきている。
2021年は、高騰している他の穀物への転作もかなりあったが、ごまをうまく作付けしてくれた。もしも転作が続いていたら、パニックの様相を呈していただろう。
日本の加工ごまメーカーの原料在庫事情は各社により異なるが、ほとんどのメーカーは、これから高い原料を買わなければならないだろう。さらに為替の円安も大打撃だ。メーカーは今後、製品価格の値上げを検討せざるをえないだろう。
ごまの最大の輸入国である中国は2021年、白ごまを大減産している。生産量は例年25万t〜30万tだが、新穀は15万tに届かないと見られている。11月8日時点の港湾在庫は20万tとしっかり持っているが、月7万tを使用することから、3カ月分に相当する。2022年2月の旧正月に向けて、アフリカ産を輸入しないと中国も間に合わない。2020年の中国の輸入量は100万tと過去最高を記録した。2021年も100万t以上となる可能性は高い。
相場は、アフリカ産は昨年1,300ドル〜1,400ドル、2021年は1,800ドル弱へ上昇、中米は2020年1,600ドル、2021年は2,400ドルに達した上に、皮むきごまが2,980ドルまで上昇しており、3,000ドルの可能性もある。
アフリカ産に関しては、産地に選別機を導入し、搾油ごまから食品レベルを得ることができれば、価格の上昇も落ち着くと考えている。しかしコロナの影響で機器を導入できないため、時間はかかる。
国内の市場開拓に向けての取り組みでは、「ごまの日(11月5日)」をSNSでインフルエンサーに拡散してもらい、一定の効果があった。今後も地道に取り組み、ごまの認知度アップに貢献したい。
〈大豆油糧日報2021年12月8日付〉