事業計画とは?目的やメリット、記載項目の考え方などを徹底解説!
(画像=mapo/stock.adobe.com)
風間 啓哉
風間 啓哉(かざま・けいや)
監査法人にて監査業務を経験後、上場会社オーナー及び富裕層向けのサービスを得意とする会計事務所にて、各種税務会計コンサル業務及びM&Aアドバイザリー業務等に従事。その後、事業会社㈱デジタルハーツ(現 ㈱デジタルハーツホールディングス:東証一部)へ参画。主に管理部門のマネジメント及び子会社マネジメントを中心に、ホールディングス化、M&Aなど幅広くグループ規模拡大に関与。同社取締役CFOを経て、会計事務所の本格的立ち上げに至る。公認会計士協会東京会中小企業支援対応委員、東京税理士会世田谷支部幹事、㈱デジタルハーツホールディングス監査役(非常勤)。

新規事業を立ち上げる際には、頭の中で考えた事業ドメインや新サービスを関係者に適切に伝えなければならない。そのために重要なのが事業計画だ。今回は事業計画の概要をはじめ、目的やメリット、記載項目の考え方などを解説していく。

目次

  1. 事業計画とは?
  2. 事業計画を作成する3つの目的
    1. 目的1.事業の明確化
    2. 目的2.事業のセルフチェック
    3. 目的3.信頼の獲得
  3. 事業計画を作成する3つのメリット
    1. メリット1.事業の特徴を客観視できる
    2. メリット2.思考を整理・可視化できる
    3. メリット3.ビジョンを共有できる
  4. 事業計画書の記載項目と内容の考え方
    1. 記載項目1.メンバープロフィール
    2. 記載項目2.ビジョン・理念
    3. 記載項目3.事業概要
    4. 記載項目4.事業コンセプト
    5. 記載項目5.市場分析
    6. 記載項目6.事業の優位性
    7. 記載項目7.数値計画
  5. 事業計画でおさえたい3つのポイント
    1. ポイント1.利用目的やターゲットを明確化
    2. ポイント2.市場分析の落とし穴
    3. ポイント3.想定されるQ&Aを準備
  6. 事業計画はできる限りシンプルにする

事業計画とは?

事業計画とは、事業の推進に不可欠な事項を関係者と共有するための計画をさす。

たとえば、サービスに関するアイデアや、ビジネスのフレームワーク、事業コンセプト、事業環境の分析、マーケティング方法、事業収支など、さまざまな事項を事業計画書にまとめる。

一般的に、投資家に出資を求める際や金融機関に融資を申請する際にも事業計画が必要となる。

事業計画を作成する3つの目的

事業計画を作成する目的を確認していこう。

目的1.事業の明確化

新会社の事業モデルやコンセプトなどは、元をたどれば頭で浮かんだ考えから生まれてくる。

頭の中にしかなかったイメージを文字や図表としてアウトプットしていくことで、現実的な事業モデルとして計画に落とし込んでいける。

目的2.事業のセルフチェック

自分で書いた文章を一晩おいてから見つめ直すと、文章の違和感や誤字脱字などに気づくことがある。

事業計画の立案はセルフチェック機能も発揮してくれる。事業計画書を作成するためには、自分の事業を客観視しなければならない。計画を立案していく中で想定外の課題も可視化できるかもしれない。

目的3.信頼の獲得

資金調達では、融資の際に金融機関から事業計画を求められる。

融資する銀行側からすると、新規事業がリスクにみあうリターンを得られるのか、会社の信用を判断しなければならない。創業者や事業家が信頼を勝ち取るには事業に説得力が必要である。

口頭での説明だけでは不十分だが、事業計画書があれば説得力が増すだろう。

事業計画を作成する3つのメリット

事業計画を作成するメリットを解説していく。

メリット1.事業の特徴を客観視できる

事業計画を作成するには、事業の特徴を客観的に把握する必要がある。新規事業の必要性を合理的かつ網羅的に明確化すれば、不足することや非効率な点などが見えてくる。

メリット2.思考を整理・可視化できる

事業計画は将来性を判断するために利用できる。事業計画を作成するプロセスにより、数年先の経営ビジョンを整理でき、事業期間や目標値を具体的に可視化していける。

メリット3.ビジョンを共有できる

事業計画の作成を通じて、会社やサービスの強みにあらためて気づくこともある。そのようなプロセスは、関係者の中でビジョンを共有するチャンスにもなる。

事業計画書の記載項目と内容の考え方

事業計画書の記載項目と内容の考え方をみていきたい。

記載項目1.メンバープロフィール

創業メンバーや新規事業メンバーの経歴等を簡潔にアピールする。事業の成功をイメージさせる内容が望ましい。

記載項目2.ビジョン・理念

どのような思いで新規事業を行うのか、関係者の共感を得られるメッセージを記載する。

社会貢献や成長性に触れた内容だと好感度が高くなる。主力メンバーの人となりが見えてくる内容であればさらに共感してもらいやすいだろう。

記載項目3.事業概要

対象マーケットや提供サービスなど、事業の全体がわかる概要を記載する。収益の根幹となる主力事業も説明する必要があるが、細かい事業内容に深入りすると全体像がぼやけてしまうので、バランスのよい内容にしなければならない。

複数のサービスが予定されていても、主力サービスをシンプルに示すほうが関係者の理解を深めやすい。

記載項目4.事業コンセプト

事業コンセプトは、事業アイデアを具体化した骨組みともいえる。関係者に事業イメージを伝えて共感を得られる内容にしたい。

記載項目5.市場分析

業界の市場規模や顧客の特性、競合の状況、法令・政策の動向など、事業を取り巻く外部環境を簡潔に記載する。

入手可能な各種データを用いて、市場規模の推移状況や、類似サービスを行う競合の業績などを分析して内容を考える。通常、文章だけでなく図表や円グラフなどが用いられることが多い。

記載項目6.事業の優位性

市場分析で明らかになった他社との競合状況をふまえて、自社の事業が持つ強みを記載していく。

競合がいる市場において、自社のビジネスにしか提供できないサービスや付加価値を関係者にアピールできる内容にしたい。

記載項目7.数値計画

数値計画は、損益計画と資金計画の2つに分けられる。損益計画は、将来5年間程度の予測損益を記載し、売上高や売上原価、販売費及び一般管理費などを明らかにしながら、主要勘定科目の推移まで明確にした内容が多い。

店舗型の事業であれば、店舗数の増加を明らかにした出店計画などを別途示したうえで、必要経費の計画値を損益計画に反映させていく。

資金計画は、損益計画ができれば概ね必要資金を算出できる。金融機関からの資金調達を考える場合、返済可能資金を説明する重要な記載項目になってくる。

事業計画でおさえたい3つのポイント

事業計画の立案にあたって主要なポイントを列挙する。

ポイント1.利用目的やターゲットを明確化

事業計画の利用目的やターゲットを想定しておくと、計画の中で強調すべき事項が明確になる。不必要な情報であふれた資料にならないように意識してほしい。

ポイント2.市場分析の落とし穴

市場分析で納得のいくデータを収集したとしても、提供サービスに需要がなければ収益はあがらない。そのため、サービスを受ける側の視点からビジネスを成立させるように、事業計画を練らなくてはならない。

ポイント3.想定されるQ&Aを準備

事業計画をベースとして外部者とコミュニケーションを交わす際に質問が来る。質問に対する回答を準備していくうちに、事業計画の課題に気づくこともある。できるだけ想定される質問に対して回答を準備しておきたい。

事業計画はできる限りシンプルにする

何十ページもある事業計画書を出されても、受け取る側のインプットできる情報は限られている。事業の説得力を増すためにも、伝える内容をできる限りシンプルにすることを意識したい。

文・風間啓哉(公認会計士・税理士)

無料会員登録はこちら