30日、総務省は2020年国勢調査の確定値を公表した。総人口は1億2614万6千人(前回2005年調査比0.7%減少)、世帯数は5570万5千世帯(同4.5%増)、外国人は過去最高の274万7137万人(同43.6%増)となった。人口が減少したのは39都道府県、市町村ベースでは全国1719市町村のうち82.5%がマイナスとなった。単身世帯は全世帯の38%、2115万1千世帯(同14.8%増)、その3割が高齢単身世帯(同13.3%増)である。生産年齢人口は7508万7865人、前回比226万6232人の減少(同3%減)、総人口に占める15歳未満の割合は世界でもっとも低く、65歳以上の割合は世界でもっとも高い。
この数字から読み取れる日本の将来像に齟齬はあるまい。ゆえに予見されるネガティブな事態を避けるための選択肢も明白である。人口規模を維持し経済大国として成長を目指すのか、縮小を受け入れ安定した中規模先進国としての道を探るのか、である。現時点における政策目標は “規模の維持” だ。とは言え、出生率が人口置換水準2.07を割り込んだのは1974年、昨年の同値が1.34であることを鑑みれば、あらゆる少子化対策が功を奏したとしても自然増に転じるのは私たちの世代ではない。とすれば、採るべき施策は単純だ。生産性の向上と外国人の受け入れである。
後者については、特定技能枠の拡大や在留期限の延長など前々政権から一貫して受け入れ拡大をはかってきた。とは言え、あくまでも「労働力不足への対応であって移民政策ではない」とのスタンスをとる。この中途半端さが外国人就労における労務問題や人権問題の根底にあると言えるが、いずれにせよ方針は定まっていない。徹底した議論と目の前の問題解決が急がれる。一方、生産性向上の必要性に異論はないだろう。取り組むべきは成長と効率化、つまり、脱炭素とDXだ。
19日、政府は財政支出55兆円、過去最大規模の経済対策を閣議決定した。しかし、いかにも総花的だ。COP26では世界の金融機関が脱炭素に向けて “今後30年間で100兆ドルの投融資” を表明した。米国は再生可能エネルギーのインフラ構築に7.4兆円、EVの充電スタンドに8600億円、EUも次世代エネルギー関連に5兆円規模の資金を投じる。翻って今回の補正予算ではEV化の推進に1375億円、再生可能エネルギーの導入加速に315億円、データセンターの地方拠点づくりとデジタル人材育成に85億円である。GoToトラベルへ1兆円、マイナポイントに2兆円であることと比較すると何とも小粒だ。果たしてこれで世界の競争フィールドで戦っていけるのか。各方面への目配りはもはや不要だ。産業構造の根本的な変革に向けての覚悟を “予算” として体現して欲しい。
今週の“ひらめき”視点 11.28 – 12.2
代表取締役社長 水越 孝