menu 山敷本部長
(画像=menu 山敷本部長)

〈食事を楽しんでもらうための施策を実施質の向上にも注力〉
2020年4月にフードデリバリーを開始し、1年ほどで全都道府県にサービスエリアを広げた「menu(メニュー)」。アニメなどとのコラボレーションや、特定の商品にクローズアップした企画を行うなど、他にはない独特な取り組みが目立つ。コミュニケーション本部長の山敷真氏に聞いた。

――デリバリー市場の現状はいかがでしょうか。

2020年4月の緊急事態宣言の発令から市場は広がっています。2021年の市場データはありませんが、2020年に市場規模は約2倍に伸びたというデータもあります。2021年も緊急事態宣言やまん延防止等措置の発令が続き、多くの飲食店は休業せざるを得ない状況でした。そのため、ユーザーにとっても選択肢が少なかったために利用が伸びたという側面もあります。ただ、緊急事態宣言の解除後に需要はそこまで極端には落ち込んでおらず、今後も普及は進むと考えています。

――取り組みの現状についてお聞かせください。

私たちは2020年4月からフードデリバリーを開始し、現在(取材は2021年10月中旬)は7万6,000店に加盟いただいています。2021年4月にはテレビCMを7都市で実施しました。立ち上げ当初は店舗さんや配達員さんの確保などを進め、現在は47都道府県で配送に対応できるようになりました。

認知を広げるための取り組みとして、「ONE PIECE(ワンピース)」や「アイドルマスター」など、漫画やゲーム、アニメとのコラボ企画を実施しました。特に「ワンピース」とのコラボは好評で、認知をかなり拡大でき、利用者数は堅調に伸びています。

他にも、楽しんでもらうための取り組みとして、注文をした方が引ける「ガチャ」を実施しています。大人でも楽しめる、「ハッピーセット」のような取り組みで、食事と一緒に楽しんでもらえる体験の一つだと考えています。料理をただ届けるだけではない、プラスの価値を提供出来たのではと思います。

また、7月には「冷やし麺」にクローズアップした特集も実施しました。オリジナルのメニューをいくつかの店舗さんに開発をお願いし、デリバリーで楽しめるラーメンを発信しました。これは売上や注文回数の向上につながりました。

11月からは1人前から注文できる鍋を集めた「ソロ鍋」特集も行っています。もつ鍋やしゃぶしゃぶといった「王道鍋」、すき焼きやふぐ鍋などプチ贅沢な「ごほうび鍋」、熊やカエルなどの未知なる味が試せる「わくわくレア鍋」、辛い物を食べて気分を変えたいときにぴったりの「気分爽快鍋」、ダイエット中でも気にせず楽しめる「ヘルシー鍋」の5つのカテゴリーを用意しています。また、1回の注文で2店舗の商品を届けられる「コンボ注文」も特徴的な取り組みと考えています。配送料は1回分なので、通常の注文よりお得感はあると思います。

1人前から注文できる鍋企画も実施(写真は、はかたもつ鍋和楽「博多もつ鍋味噌味」)
(画像=1人前から注文できる鍋企画も実施(写真は、はかたもつ鍋和楽「博多もつ鍋味噌味」))

――料理以外の配達で力を入れていることはありますか。

即日配送は今後伸長すると考えており、拡張を検討しています。現在はローソンとファミリーマートの商品配送を取り組んでいます。加盟店も今後は拡充し、ユーザーの求める価値を提供できるよう開発を進めていきます。

――配達員の方に向けた取り組みなどお聞きできればと思います。

我々は一定のサービス基準を設けて取り組んでいます。配達員の方は個人事業主なので、互いが気持ちよく働けるようガイドを設定しています。また、店舗との連携をよりスムーズにする機能の開発などを進めるとともに、配達員の方とオンライン上で直接交流し、要望聞いて開発計画に落とし込んでいます。交流は定期的に実施できればと思います。店舗様にはコンサル的なことも行っており、包材や容器の紹介に加え、デリバリーに最適なメニューのアドバイスも行っています。

――日本でフードデリバリーは今後も伸びそうでしょうか。

伸びると考えています。ただ、単純に伸びるとも思えないです。元々、日本では出前を「ハレの日」に利用することが多く、「Uber Eats」が日本でサービスを開始して、日常的使いのデリバリーというニーズが生まれたと思います。ただ、これ自体がまだ、日常に溶け込むには改善すべき点も多いと感じていて、そのためには体験価値を向上させることが重要と考えています。

究極的な話としては、ラインアップを料理だけでなく日用品や食料品など何でもそろう、ラストワンマイルの配送網を作ることが重要になると捉えています。

これまで翌日に届いていたモノを、即時届けられるようになれば、より体験価値は高まります。家で過ごす時間をよりハッピーにすることができれば幸せ度の向上につながります。そこにはテクノロジーによる効率化や、利用された方や配達員さんなどの声を活かした仕組みを作っていく必要があると思います。リアルな声を聴いて進めていきます。

海外に目を向けると、中国の都市部などはアメリカよりもデリバリーの浸透率は高いと言われています。日本ではコロナ以前の普及率は3%ほどと言われており、まだまだ伸びる余地はあります。日本はサービスに求める品質が高いものの、まだそこに応えきれていないと感じています。より高いクオリティ求めていかなくてはと思います。

〈冷食日報2021年11月11日付〉