コロナ禍が起きてすでに1年半以上が経っている。しかし「コロナ倒産」がいまなお相次いでおり、危険水域にいる企業も少なくない。債務超過で上場廃止となりそうな企業も増えてきた。コロナ禍に苦しんでいる民間企業の現状について調べてみた。
飲食業や建設業、宿泊業……コロナ禍で甚大なダメージ
民間調査会社の東京商工リサーチは、コロナ禍が原因で経営破綻した企業数などの統計を連日発表している。その最新の発表によれば、2021年9月6日午後4時時点のコロナ破綻(負債1,000万円以上)の件数は、累計で1,929件となっている。
東京商工リサーチによれば、コロナ破綻の件数は増加傾向にあり、2021年に入ってからは2月以降、3ヵ月連続で最多件数を更新し、その後も月ごとの件数は高いペースで推移しているという。
特に、コロナ禍の影響を大きく受けている業種は、飲食業、建設業、アパレル関連、宿泊業、飲食料品卸売業だ。飲食業は来店客の減少や休業要請が響き、建設業は工事計画の見直しなどで売上に影響が出ている。観光業はインバウンド需要が消失したことが大きい。
収束次期が不透明なコロナ禍、上場企業の経営破綻も続々!?
コロナ破綻の多くが非上場企業で起きているが、上場企業のコロナ破綻もゼロではない。アパレル大手のレナウンは2020年11月に東京地裁から破産開始の決定を受け、事実上の経営破綻となった。
レナウンのように経営破綻をするかは分からないが、債務超過となっている上場企業は実は少なくない。東京証券取引所を運営する日本取引所グループの公式サイトによれば、2021年8月末時点で債務超過に陥っている上場企業は、少なくとも15社ある。
15社全てにおいて債務超過の原因がコロナ禍によるものというわけではないが、ウェディング事業や婚活事業を手掛けるタメニー(マザーズ上場)、オイスターバーなどを手掛けるゼネラル・オイスター(同)、旅行業を手掛ける近鉄グループのKNT-CTホールディングス(東証一部上場)などはコロナ禍が原因だ。
コロナ禍が収束すれば自ずとこれらの企業の業績も回復していくとみられるが、困ったことに新型コロナウイルスの収束時期はまだ不透明である。ワクチン接種が進んでいるものの、ワクチンが効かない変異種や致死率が高い変異種が今後出現する可能性は小さくないからだ。
仮に、コロナ禍がまだ数年にわたって続くならば、債務超過による上場廃止だけではなく、経営破綻に陥る可能性も高くなっていく。そのため、コロナ禍が原因でいま債務超過となっている上場企業は、コロナ倒産の危険水域にいると言って差し支えないだろう。
オンキヨー、ANA、日本郵船……ほかにもある倒産危険度の高い企業
上記でピックアップした企業以外にも、倒産の危険水域にいる企業は少なくない。週刊ダイヤモンドが2021年8月に発表した「倒産危険度ランキング」によれば、1位はRVHで、そのほか有名企業ではオンキヨーやANA(全日本空輸)、日本郵政、東京電力などがワースト100位以内に入っている。
例えばRVHは、コロナ禍で採算が悪化した事業を売却しているが、最終損益が3年連続の赤字となっている。ANAは航空需要が大きく落ち込んでいることが響いている。コロナ禍が収束しない限り、業績が元通りになることは見込めないだろう。
そしてオンキヨーも倒産危険度ランキングでワースト100に入っている。
オンキヨーが上場廃止後にたどっている道
音響機器の名門企業であるオンキヨーは2021年8月、2期連続の債務超過によって上場廃止となった。その後、家庭向けAV事業をシャープに売却し、栄養管理サービスを展開する孫会社の売却、イヤホン・ヘッドホン事業の売却などを発表している。
オンキヨーは経営破綻とはなっていないものの、オンキヨーがたどっている道を倒産の危険水域にいる企業が今後たどる可能性は少なくない。すなわち、組織をスリム化して経営再建を目指すという道だ。
上場廃止になるとブランドに対する信頼性が大きく下がる。それにより、手元に残した事業の売上にも影響が出る可能性も高くなり、企業としては非常に厳しい状況に置かれる。
窮地を乗り切ろうと東奔西走する経営者たち
コロナ禍によって倒産の危険にさらされている企業に対し、厳しい声もある。このような事態に備えてキャッシュを用意しておくべきだった、などという声だ。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックは多くの企業にとって想定を超える危機である。
そのような状況で、経営者たちは何とかしてこの窮地を乗り切ろうと東奔西走している。まだしばらくは難しい舵取りが迫られるが、何とか踏ん張ってほしいと切に思う。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)