新しい仕組みとテクノロジー誰もがアートが身近な社会を目指す
(画像=株式会社ANDART提供/THE OWNER編集部)

2018年に創業した株式会社ANDARTは誰もが手軽にアート作品を複数人で保有できる共同保有プラットフォーム「ANDART」を運営している会社だ。

これまでにも、ピカソ、バンクシー、草間彌生など名だたるアーティストの作品オーナー権を1口1万円という、常識を覆す価格での購入を可能にしてきた。

取り扱う作品数や購入者は年々増加を続け、2021年9月からは会員権からアートの部分的な所有権(共同持分権)を購入できるようにするなど新しい取り組みから目が離せないANDARTの今後の戦略について、代表取締役社長CEOの松園詩織さんにお話を伺った。

アートを所有するという概念を根付かせたかった

起業を考えられたきっかけは何だったのでしょうか?

元々アート自体は好きでした。父が家でアートを飾っていたりですとか、一人で美術館や展覧会に足を運んだりといったことはよくしていました。

そのくらいのレベルでの一般的なアート愛好家だった私が、より一歩足を踏み込みたい、例えば業界の方ともうちょっと仲良くなってみるとか、クローズドなアート業界で一歩踏み込んだ情報を得たいと思った時に、自分の精神的にも、構造的にも高いハードルを感じていました。

さらに、アート購入ってお金があるだけでも実はなかなか難しいという問題もあります。そもそもアート自体が希少性が高く、数が限られたものだったりするので、お金さえあれば何でも手に入るというものでもありません。また人気で注目されているものであればあるほど、どんどん高額に値上がりしてしまって手に入れることが非常に難しい現実があります。

現在、アート作品の流通においては一部の富裕層の方を中心に小さな循環でめぐっているような状態だと感じます。 そこで、私は、美術館のようにいつでも作品を見に行ける、シェアリングという形で誰もがアートを所有できる新しいアートの所有概念はないだろうかと考えANDARTの創業に至りました。

御社のサービスの特徴はどんなところにあるのでしょうか?

ANDARTが販売しているのは作品の所有権と優待権であるオーナー権になります。まず物理的なものを小口化してそれをみんなでシェアするというところが根底の価値としてあります。

ANDARTがご提供する一番の価値は、今まで個人では持ちえなかったアートを気軽に購入できるという体験だと考えています。

ただ、所有権だけではなく、例えばデジタル証明書にオーナーとして名前が刻まれたり、定期的に作品を鑑賞するイベントですとか、あるいは権利自体を自由に売買ができるというところをオリジナルの付加価値として提供しています。

先ほど申し上げた通り、我々は、これまでにない新しいアートの所有概念を定義していきたいと考えています。

実はアート作品を所有されているコレクターの中には、高額な保管費用を支払って倉庫などに保管している方も多くいらっしゃるのが現状です。つまり、アート作品の楽しみ方や購入のモチベーションとして自宅など身近な環境におくことが全てではないと考えています。
であれば、一部の権利を保有し定期的にアートを見に行くという距離感での楽しみ方もあるのではないかと。

オーナー権が所有権になることで何が変わるのでしょうか?

ANDARTの共同保有は法律上でアート作品の所有権(共同持分権)をお渡しするというものです。2021年9月までは、作品の権利に関する決定や管理、リスクコントロール、売却の意思決定などは我々が行なう規約としていました。日本に先行事例もなく正直設計が難しかったのです。

それが、9月より各オーナーが作品の権利を所有するので、当該作品の売買などに関する意思決定を行っていただくオーナー総会を開催する予定です。我々は例えばマンションの管理団体というような建付けになりますので、オーナーの裁量が大きくなったイメージですね。

御社では、オーナーに対し作品の価格や作家に関するレポートを配布していますが、アートに対してこのようなレポートは今まで業界ではあったのでしょうか?

そうですね。海外では、オークションデータを取り扱うデータ会社が存在しています。ただ、冒頭でもあったように日本のアートマーケットはかなりクローズドな業界です。 例えば、アートギャラリーに行っても値段も書いてなくて絵がぽつんと飾ってあるなんてことも珍しくありませんでした。しかしインターネットが普及し価格などがオープンにならざるを得なくなり、透明性が少しずつ上がっている中で、今後もデータの需要は増えると思います。すでに存在しているものでも日本ではなかなかカルチャーとして芽生えていないものを我々が率先してやりたいという意思があります。

最近では、ANDARTで約1年前にオーナー権総額670万円で販売したバンクシーの《Jack and Jill (Police Kids)》は、7月のオークションで約2.1倍となる約1,456万円で落札されました。そういった情報も弊社からどんどん発信しています。
*出典:https://media.and-art.jp/artmarket/mainichi_auction_210731/#ANDART

日本ではあまりアートを所有するという文化が根付いていない気がします

日本はそもそも海外と比較すると国土が狭く、物理的にアートを飾るスペースがないという問題があります。また、税制、教育など制度的ないくつかの課題も相まってアートを所有する、購入するカルチャーが根付きにくい背景が複数あると思っています。

しかし鶏卵ではあるものの、根源的にはやはり一般の方々にアートを所有する、購入するカルチャーがないという課題が悪循環の元ではないかと仮説を立てています。もちろん、複数の要因が絡んではいますが、一番大きな問題は生活にアートが馴染んでいないということなのではないかと思います。そのためのゼロイチにANDARTも貢献したいです。

ビジネスを行ううえで大切にされていることは何ですか?

アートにはどうしても好みやトレンドなどバイアスは存在するのですが、私たちはどこまでいってもユーザーの視点に寄り添うため、マーケットに対しても、アートそのものに対してもなるべくフラットな視点でいるということが大事だなと思っています。旧態依然の価値観にとらわれないというか。アートに対して踏み込みづらいと思っている人たちに対してどういう表現をしたら壁を感じないかという、初心を忘れないことです。

起業家としては、アートマーケットを見た時に感じた疑問や違和感に対するエネルギーというか、疑問を忘れないようにしています。

今後の展開について教えてください。

我々は「テクノロジーでアートと社会を結び、拓く」をミッションに掲げています。排他的にならずに挑戦する、カルチャーを肯定的に受けいれて共有するという考え方を大切にしています。

それが顕著な形で世の中に伝わり、アートの所有や購入のカルチャーが広まるとシンプルにアートを買ってみたいという人が増えていくのではないかと。例えば、アートを買いたいという人が100万人いればすごいハッピーなことだなと思っています。