2日、三井ホームは木造マンションブランド「MOCXION(モクシオン)」の立ち上げを発表した。コンセプトは“サステナブル”、構造材に木を用いることで建設時のCO2の大幅削減をはかるとともに高い断熱性、耐震性、耐火性、遮音性を実現する。
政府による「2050年カーボンニュートラル」宣言を受けて各産業界の脱炭素化が加速する。とりわけ、CO2排出量が全産業の1/3に達する建築関連業界では、住宅建築時の排出量がRC造の約半分と試算される木材の利用促進が期待される。
一方、今年に入って住宅用木材価格の急騰が続く。新型コロナウイルスを早期に克服した中国と米国の需要回復、加えて、コロナ禍による世界的な物流の停滞が木材流通の不安定化を招いている。需給ひっ迫とロジスティクス機能の低下が世界的な木材不足と価格高騰の原因だ。こうした中、国産木材の利用促進が改めて課題として浮上する。
日本は国土の7割を森林が占める一方、木材資源の7割を輸入に依存する。結果、植林地の荒廃が進む。危機感は行政サイドも共有しており、2019年7月には全国知事会が「国産木材需要拡大宣言」を発表、公共建築物の整備や備品等の購入に際して率先して国産木材の利用に努める。政府も先月15日、「2030年には建築向けの国産木材の使用量を4割増やす」ことなどを目標とする「森林・林業基本計画」を閣議決定している。
木材の輸入依存の背景には戦後の復興需要から今日に至るまでの構造問題があると言え、林業を再び「儲かるビジネス」として再生させるためには生産から加工、販売に至る流通システムにおけるイノベーションが不可欠である。人材の確保、育成も喫緊の課題であり、長期的な需給予測にもとづく生産計画と短中期的な需要変動に対応できる在庫管理システムも必須であろう。それでも国際市場との競合を鑑みると産業再生は容易ではない。
林業の復興はまさに地方創生と同義である。したがって、林業を単なる建設資材の供給ビジネスとして捉えるのではなく、地域社会全体の経済システムに組み入れることで新たな価値の体系を構想すべきであろう。住宅やマンションの建設需要だけではない。木質バイオマスによるエネルギー資源としての価値はもちろん、地球環境、生物多様性、水源涵養、景観、レクリエーション、土砂災害防止といった多面的な機能の経済価値を見落としてはならない。森林は循環型経済を構成する中核資源であり、その視点から林業を再定義することで、持続可能な産業としての未来が開けるはずだ。
今週の“ひらめき”視点 7.4 – 7.8
代表取締役社長 水越 孝