サービス産業を儲かる産業へ!老舗食堂が提供する最先端のデータ経営ツール

伊勢神宮の参道に店を構え、100年以上の歴史を持つ「ゑびや大食堂」。この老舗食堂がデータの力で生まれ変わった。6年で売上は1億円から4.8億円に。従業員の待遇も改善し、生産性も向上。その原動力となった店舗データ分析のノウハウを、ITサービスとして販売しているのがEBILABだ。代表取締役社長の小田島春樹氏に同社のサービスの概要や実現したいビジョンを伺った。

小田島 春樹(株式会社EBILAB代表取締役社長・ファウンダー)
小田島 春樹(株式会社EBILAB代表取締役社長・ファウンダー)
1985年、北海道生まれ。10代の頃から自身で輸入業やECビジネスを手掛けており、大学ではマーケティングと会計学を専攻。大学卒業後、大手通信企業にて組織人事や新規事業・営業企画を担当。2012年、妻の実家が営む「有限会社ゑびや」に入社し、店長、専務を経て、現在は有限会社ゑびやと株式会社EBILABの代表取締役社長を務める。2016年、地域の課題解決を研究テーマに三重大学地域イノベーション学研究科の博士課程へ進学。2018年、同大学院における研究テーマの社会実装を行なう為、サービス業向けデータ解析サービスプロダクトを手掛ける株式会社EBILABを設立。2019年、三重大学地域イノベーション学研究科の博士課程を単位取得退学、引続き論文を執筆中。

老舗企業に飛び込んで変革を宣言

――EBILAB設立の経緯について教えてください。

小田島 私はもともと大手通信会社で人事や営業企画を担当していました。一方で、いつかは自分でビジネスをしたいと考えていました。ある時、妻の実家が営む「ゑびや」の経営が順調ではないと聞いて、起業ではなく老舗企業を立て直すのも面白いと考え、会社を継ぐことにしました。

そして「ゑびや」の経営をデータ解析の力で改革できたので、そのノウハウをクラウドサービスとして提供し、サービス業の経営を支援しようと考え、2018年にEBILABを設立しました。

サービス産業を儲かる産業へ!老舗食堂が提供する最先端のデータ経営ツール
(画像=株式会社EBILAB提供)

――どのように「ゑびや」の改革を進めていったのでしょうか。

小田島 私が継いだ当時は食堂だけでなく土産物販売や旅館などに手を広げていたので、これを整理し、まずは食堂のみに事業を絞りました。そして実際に食堂の仕事に携わってみると、とにかく大変。毎日の売上を確保するだけで手一杯で、心の自転車操業をずっと続けているような気分になりました。

お客様の入りもかなり寂しい状況でした。隣の人気店の行列がうちの店の入り口を塞いでいるくらいなのに、うちの店にはお客様が入らない。そんな状況に対して従業員が危機感を持っていないことも気になりました。

経営はもちろん商品・サービスも変えていかなければならないと実感。そこで私は従業員に、「これからゑびやを変える。変化を楽しめない人とは一緒に仕事ができない」と宣言しました。残念ながら、実際に多くの従業員が変化を嫌って辞めてしまいましたね。

店舗内のあらゆる数字を集めて見える化

――改革にあたって具体的に取り組んだことは?

小田島 自分たちの現状のどこに問題があるのかを明確にするために、データが必要と考えました。手書きの帳簿をデータ化したり、POSを導入したりして、あらゆる数字をデータとして管理することから始めました。

そして、集めたデータを使って来客数の予測を始めました。昨年同日の売上、天気予報、ウェブ広告の出稿状況、ホームページのアクセス数などの要素を組み合わせて、Excelや機械学習、RPAなどを使って自動で客数の予測を出してくれる仕組みを作ったのです。すると80%以上の精度で予測が当たって、食材の発注量を決める際に活用できるようになりました。

また、カメラとAI画像解析ツールを使って、店前の通行量と来店者数の関係や、来店者の属性を把握できるようにしました。このようにあらゆる情報を見える化していったところ、売上や来客予測を高い精度で的中させられるようになり、ウェブ広告などの各種施策の効果測定も容易にできるようになりました。その結果、経営状態を徐々に改善していくことができました。

――数字的にはどのくらいの効果があったのでしょうか。

小田島 2012年から2018年までの推移でいえば、売上は1億円から4.8億円に拡大し、経常利益は200万円から2,000万円になりました。この期間、従業員は42名から44名に2名増えただけ。1人あたりの年間売上は396万円から1,073万円に拡大。生産性は大幅に上がりました。アルバイトの時給も2、3割アップさせて、社員旅行も行けるようになりました。

飲食店が自分たちのために作ったデータ分析ツール

――そういったノウハウを製品化するためにEBILABを設立したのですね。

小田島 そうです。2018年、飲食・小売店特化型店舗分析ツール「TOUCH POINT BI」の販売を始めました。POSデータ分析、来客予測 AI、通行量調査などの機能を含む、飲食、小売店に特化した店舗分析サービスです。

――サービスの特徴は?

小田島 多様なデータを取り込んで一元管理できるところです。複数ベンダーのPOSデータや、画像解析AIから取り込んだ通行量のデータ、アンケート結果、ウェブ広告など、さまざまなデータを集約することができ、グラフなどを使ってわかりやすく表示します。店舗で働く従業員が迷うことなく操作できるように、画面デザインや操作性にもこだわりました。

これを使うことにより、店舗の状況がリアルタイムでわかるようになります。例えば、来客予測的中率は95%を超えているので、翌日の食材発注量や事前準備をロスなく行えるようになります。売上データ分析、商品のABC分析、顧客属性の把握、広告の効果測定なども可能になり、データ経営による収益アップが可能になります。

サービス産業を儲かる産業へ!老舗食堂が提供する最先端のデータ経営ツール
(画像=株式会社EBILAB提供)

――具体的な活用シーンを教えてください。

小田島 ゑびやでの使用例をご紹介します。ある時、有名な写真家さんに写真を撮ってもらい、有名なデザイナーにデザインしてもらい、メニューや店頭ディスプレイを刷新しました。またそれに合わせて料理の価格も3%ほど値上げしました。その効果はどうだったか。刷新の翌日、通行客数に占める入店率は50%ほど減り、客数も20%ほど落ちてしまいました。

もしデータを取っていなかったら、店舗経営者はこう思うでしょう。「高い費用を払って有名な写真家・デザイナーに作らせたんだから、しばらくこのままいこう」と。そして、半年くらいは続けるのではないでしょうか。その間も客数は戻ってきません。でもデータがあれば、「店舗前の通行量に変化はないのに、入店率が下がっている」事実がすぐにわかり、すぐにメニューを元に戻すという判断ができます。

店内の座席配置についても同様です。座席別の利用状況が細かく分かれば、「この座敷席はピーク時にしか使われていないから、廃止してテーブル席にしよう」「空いたスペースにはお土産物を置いて販売しよう」といった改善や効果測定を細かく行えて、売上を最大化していくことができます。

外食産業をハッピーな産業へと変革する

――このような店舗分析ツールは他にはないものなのでしょうか。

小田島 あるかもしれませんが、同じような機能を持たせようとしたら、非常に高額になるはずです。その点「TOUCH POINT BI」は、初期費用30万円、毎月の利用料は19,800円からと低額です。また、既存のBIツールはITの会社が作った製品です。「TOUCH POINT BI」は、飲食・小売店を経営している会社が作った、飲食・小売り業態の実態に即したツールといえます。その点がほかにはない特徴です。

――現在までの導入実績は

小田島 飲食店・小売店を中心に、大規模商業施設や行政も含めて約200社に導入されています。「リアルタイムで売上状況に合わせた販促施策を実施できる」「廃棄ロスと販売機会ロスの削減ができた」などの感想をいただいています。

――事業を通じて実現したいことは何でしょうか?

小田島 サービス業を変えていきたいという思いがあります。サービス業、特に外食業の課題は賃金の安さにあります。長時間労働で賃金が低いから、人手不足が慢性化して、ますます苦しくなっています。その原因は収益性の低さにあります。なぜ収益性が低いかというと、感覚に頼りすぎた経営をしているからです。

多くのサービス業がデータを使った経営に取り組むようになれば、収益力が上がり、儲かる体質になれます。そして従業員の給料が上がって、楽しくゆとりを持って働ける産業になることができるはず。そんなハッピーな状況をつくれるよう、ツールの提供などいろいろな側面からサポートしていきたいですね。

<会社情報>
社名:株式会社EBILAB
代表取締役社長:小田島春樹
設立:2018年6月4日
所在地:〒516-0024 三重県伊勢市宇治今在家町13
事業内容:飲食店向けクラウドサービスの開発・販売・サポート
TEL:0596-63-6364
URL:https://ebilab.jp

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